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『コピペと捏造 ~どこまで許されるのか 表現世界の多様性を探る』時実象一著

東京工芸大学教授 大島 武=文

「ぼく自身のオリジナリティは、実はほんの数%」。音楽家の坂本龍一さんがテレビで語っていた。2016年のグラミー賞候補にも挙がるアーティストにしてなんと謙虚な物言いだろう。

だが感心すると同時に、意外とそういうものかもしれないとも思った。どのような創作もまったくの「無」から生まれるわけではなく、必ず過去の「誰かの」表現や考え方に影響を受けている。

もちろん、度がすぎて一線を越え、「パクリ」と言われては元も子もない。しかし、その線はどうやって引けばいいのだろう。本書は、このやっかいなテーマに対して、過去の事例を網羅的に紹介し、明快な解説を加えることで果敢に挑戦している。

古い事例は知らないものが多かった。「木曽路はすべて山の中である」から始まる島崎藤村の『夜明け前』。その一節は、江戸時代の紀行作家秋里籬島(あきさとりとう)の『木曽路名所図会』からの引き写しに見える。また、松尾芭蕉『奥の細道』の「月日は百代(はくたい)の過客(かかく)にして」も李白の詩から来ているという。藤村のケースは「剽窃(パクリ)」といえるが、芭蕉のほうは、原作が広く知れ渡っていることから「オマージュ」に近い、と解説されている。うーん、なかなか一筋縄ではいかないようだ。

コピペは情報化社会が生み出した鬼っ子である。「自由に使える読書感想文」というサイトには「ここまで来たか」と思った。立ち上げた人物は、「子どもたちに夏休みを有意義に過ごしてもらいたい。ムダという言い方は過激かもしれないが、読書感想文で悩むよりも今しかできないことを経験してもらいたい」と自説を展開したという。教育者としては賛同できないが、一理あると感じる人もゼロとは言えないだろう。

私は大学の「フォトメディア」という授業で英国の報道写真捏造事件を取り上げている。学生たちに「修正と捏造の間に線は引けるか」というテーマで議論させるのだが、なかなか白熱して面白い。発表に簡単なコメントをつけ、最後はいつも「すっきりしない終わり方でごめんね」と言い添えて結ぶ。先生が最後まで正解を示さないので学生たちは少し不満そうだ。

「シロクロつけるわけではありません!」。オビにそうあるように、本書のスタンスも決定的な基準を示すものではない。しかし不思議と読後のもやもや感はない。それぞれのケースは要点がはっきり示され、豊富な図版の助けもあって、自分なりに「これはアカンやろ」「こっちは許す」と判定できるからだ。

おりしもネット上の「まとめサイト」における安易な情報転用が問題になった。どこまで許され、どこからダメなのか。この見事なグラデーションの世界を本書で楽しんでみては如何だろうか。

『コピペと捏造』(樹村房)

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