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便利さ追及の馴れの果てに宅急便が急増 -通販通じスマホで注文する買い物は行きすぎではないか-

 安倍内閣はあまりにも企業寄りの政策を進め過ぎたためか、「働き方改革」と称しプレミアムフライデーを宣伝し始めた。その一方で、ヤマト運輸が宅配便個数の増大に音を上げて時間指定の宅配のうち、昼(12時から14時)と夜(19時から21時)の配達をやめるべく手を打ち始めた。ドライバーが休みを取るためと、夜の残業減らすためである。

<没落したスーパーの雄・ダイエー>

 かつてダイエーは、日本の高度経済成長に乗り繁栄を謳歌していた。中内功はのし上がってきた流通業界の雄だった。経団連の役員は鉄鋼業とか日本の屋台骨を支える産業界の社長・会長ばかりだったが、中内は流通業界から初めて幹部入りした。ところが、50年も経っていないのに今やダイエーは世の中から忘れ去られつつある。没落の原因として、借金をしながらもひたすら拡大を目指した経営方針も挙げられるが、日本人がスーパーの薄利多売の商品に群がらなくなったことが主因と思われる。

<通販企業が物流・買い物を変える>

 ここ数十年で物の流通は大きく変わった。日米構造協議の結果、大規模店舗規制法が緩められ、ダイエーの進出を後押しした。その結果、地方の商店街はシャッター通り化し、買い物客は郊外のショッピングセンターになびくことになった。そして今、また2000年代からアマゾン・楽天・ヤフー等通販サイト運営企業が急速に事業を拡大し、スマートフォンから簡単に注文できるようになった。こうして今再び流通業界に大きな変化が起きつつあり、駅前の大きなスーパーも郊外ショッピングセンターも売り上げが減り始めている。インターネット通販で注文し、家に必要なものが直接届けられるようになったからである。つまり、買い物に行かずに済むようになったのだ。

 それでも家電製品などは、実物をこの目で確かめないと不安な人もいる。しかしその場合でも駅前の大型家電店に行き、通販で目星をつけた物をじっくり見て店員の説明を聞いても買わずに家に戻り、パソコンから注文、翌日には届けられる。これが続くと、今隆盛を誇るヤマダ電機もK'Sデンキも消え去る運命にある。

<次々に消える個別の商店>

 生鮮食料品ぐらいは商店街でと思いきや、さにあらず、毎日の仕入れの伴う魚屋、八百屋が消え、辛うじて肉屋が残っているだけである。買い物客はとっくに皆スーパーに取られてしまったからだ。長持ちする商品などはこぞって量販店の独壇場になってしまった。また、本の世界でもアマゾンが幅を効かし、地方の小さな本屋がそれこそアッという間に消えていった。立ち読みして思わぬ掘出し物に巡り合い一気に読み終わるといった、古典的なこともできなくなった。これも皆パソコンを通じてすませるようになった。

 今、家電店も静かにきえつつある。パナソニック、日立、東芝、シャープ・・・とアメリカから日米構造協議で見事すぎる「系列」と批判されたメーカーごとの販売網も消えつつある。テレビが故障しても量販店は修理などは無関心で、故障したらもう買い替えなくてはならなくなった。故障したものを丁寧に修理し、改善に役立て、次の高性能な製品を生み出してきたのに、今はそのサイクルもなくなった。これは今後の日本の技術改革の大きなマイナス要因となると思われる。また、店を下支えする人柄のいい店員もどこにもいなくなった。毎度ありがとうございます、と言って届けてくれる顔馴染みの店員さんはもう天然記念物である。

<急成長を遂げる宅配業界>

 その代わり急激に増えているのは宅配である。1990年の9億個から2016年には38億693万個と4倍強に増えた。6年連続過去最高を更新し続け、伸び率も6.4%と8年振りの高水準だ。最近5年(2010~15年)でも2倍に増え、2015年のネット通販の市場規模は13兆7700億円と5年前と比べて1.8倍に増えた。6兆円を割り込んだ百貨店と大違いである。このため、昨年末はとうとう配達できない荷物も出たという。ただ問題があり、効率がいいようにみえるが、2割が再配送になっている。このためマンションの宅配ボックスの奪い合いが生じている。共働き世帯が買い物に行く余裕がないことから、通販に頼る確立は高くなる。共働き世帯は留守がちになるため、再配達が増えるという悪循環である。

 シャッター通りの代わりに忙しくなっているのは宅配便会社のドライバーである。消費者ニーズが変化し、荷物は小口化、多頻度化していった。このため人手不足で過重労働という悪循環が続くことになる。ドライバーの有効求人倍率は2.68倍と全産業平均の1.36倍の倍近くに達している。ところが若者は敬遠し、平均年齢は47歳に達している。そのためヤマト運輸はOB再雇用に踏み切らざるをえなくなった。

<悪化するドライバーの労働条件>

 音をあげたヤマト運輸の春闘では、労組が総荷受量の抑制を要求している。当然のことである。宅配業界で一世を風靡した風雲児・小倉昌男は「サービスが先、利益は後」とのたまっていた。この結果、過剰サービス合戦となり、時間指定や大手通販の無料配送が浸透していった。たく側にしても留守宅に行って再配達は二重手間であり、両方にメリットがあったが、残業増につながっていった。長時間労働が日常的になっており、労働基準監督署から注意を受けたところもある。このため、ヤマト運輸は、7万6000人の未払い残業代をすべて支払う方針を決めた。

 一方で消費者は宅配業界の顧客至上主義に乗じて要求をエスカレートしていった。こうして買い物を通販でするのが日常化し、歪みがますますひどくなっていった。資本主義が自由主義のスローガン「より速く」はこのあたりで考え直す必要がある。

<コミュニティが潰れ、CO2の排出が増えるばかり>

 我々はどこまでも便利さを追求してきたが、明らかに行き過ぎである。買い物に伴う会話がなくなると近所の付き合いも薄れ、街から潤いが消えていき、コミュニティが潰れていく。
「より速く」は葬り去らなければならないとしても私はかねてから物の輸送はなるべく少なくするのが環境に優しい生き方の基本であり、「地産地消」を提唱してきた。そうした観点からすると、何でもかんでも宅配便に頼るのはこれに大きく反し、配達に伴うCO2の排出もバカにならない。かくいう我が事務所も大半の文房具は通販で購入しているのが現実である。

 荷物が増えると利益が上がると思われていたが、荷物の伸び幅は予想を超えた。ただ、通販経由の利幅の薄い荷物が多く、営業利益増にはつながっていない。かくなる上は、荷受量を抑制する方策が必要であり、運賃の値上げで個数を抑制するのも対策の一つである。便利になる分応分の負担も強いても仕方あるまい。ドライバーの労働条件の改善もままならない。

<日本郵便に代わる「日本宅配便」に一本化、郵便受けに代わり「宅配ボックス」>

 SNSを通じたコミュニケーションにより郵便(ハガキ、手紙)が急激に減少している。それに対し宅配業界は46.7%を占めるヤマトをはじめ、佐川(32.3%)、ゆうパック(13.8%)、カンガルー(3.6%)等と乱立し宅配車を走らせている。これらの宅配便会社を「日本宅配便」に一本化して、効率化し、CO2の排出も抑えることが考えられる。既に宅配便会社で宅配物をお互いに融通し合い始めている。それならばいっそうのこと1社にしてしまったらどうかということである。すべての荷物をコンピューターを駆使して振り分け、地区ごとに一つにまとめて、郵便配達よろしく宅配便が朝一斉に各戸に届けることである。

 宅配便が日常生活に必要不可欠なら、民から官に上げて効率化を図りつつ、環境にも優しいものにしないとならない。将来は各戸には郵便受けに代わり宅配ボックスを備え付けることも考えたらよい。
 しかし、こんなことにならないように便利さの追求をセーブし宅配便は少なくするしかないのではないか。

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