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【読書感想】北朝鮮・絶対秘密文書: 体制を脅かす「悪党」たち

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北朝鮮・絶対秘密文書: 体制を脅かす「悪党」たち (新潮新書)

北朝鮮・絶対秘密文書: 体制を脅かす「悪党」たち (新潮新書)


Kindle版もあります。

北朝鮮・絶対秘密文書―体制を脅かす「悪党」たち―(新潮新書)

北朝鮮・絶対秘密文書―体制を脅かす「悪党」たち―(新潮新書)



内容(「BOOK」データベースより)
記者が秘かに入手した、あの国が「絶対秘密」と指定する内部文書。そこには、統制に抗い、管理から外れた「悪党」たちのたくましいまでの行動が描かれていた。金鉱山のヤミ採掘、放射性物質の密輸出、世界遺産地区からの文化財窃盗―。数々の経済犯罪は、市場経済の拡大から露呈した国家管理の限界でもあった。文書分析と北朝鮮住民たちへの直接取材の積み重ねから、閉鎖国家の現在と、その体制崩壊への道筋に迫る。

 この新書のタイトルを書店で見かけたとき、「うわー、なんか胡散臭いタイトルだなあ……」と感じたのです。
「絶対秘密文書」って、なんか妄想チックなクーデター計画とかが書かれた文書を入手したとか、そういう話なのだろうか。でも、その手には引っかからないぞ!

 もっとも、その「絶対秘密」とは、金王朝メンバーの赤裸々な生活が描かれた手記でもなければ、朝鮮人民軍のクーデター計画書でもなく、じつは北朝鮮の検察機関が捜査記録などをまとめたものでしかない。だが、文書に記されていた具体的な犯罪事例は、

・金鉱山のヤミ採掘
・放射性物質の密輸出
・世界遺産地区での文化財窃盗

   などと非常にバラエティーに富んだもので、単なる読み物だと考えても興味深い上に、そこに「犯罪者」として登場する、まさに「庶民」と呼ぶべき北朝鮮の人々の行動や思考には、国家崩壊への「要因」が満載されていたのである。
 なぜ、犯罪記録が国家崩壊と結びつくのか、ピンとこない向きがあるかもしれないが、そもそも犯罪とはその社会の規範を犯すことであり、逆に言えば、国家権力が何を規範とし、何を守ろうとしているかを示すものだ。たとえば、経済状況がつねに逼迫している昨今の北朝鮮においては、やはり中でも経済事犯が多いのであるが、北朝鮮の検察組織もそこを非常に重視していることが、「絶対秘密」の文書にもはっきりとあらわれている。

(中略)

 つまり、私が入手した「絶対秘密」の文書は、あの国では稀有な、「国家が恥部と考えているものを国家公認で治安機関が編集した文書」であり、それは厚いベールに覆われた閉鎖国家の内情を知るにおいては、じつに貴重な資料となるのである。
 そんな文書を読み込んだ結果として言えることは、多くの日本人がマスコミ報道を通じて抱いている、「北朝鮮の人々は国家から洗脳されて何も事実を知らない」、「国家の命令を唯々諾々と聞くだけの人形」、「窮屈な制度に縛られて息も出来ない」といったイメージは、間違いとまでは言わないまでも非常に一面的だということだ。

 ……実は、この「絶対秘密文書」って、北朝鮮の犯罪者たちに対する「検察組織の調書」だったんですね。
 新聞記者である著者は、きちんと「裏取り」もしていて、おそらく「本物」だろう、と。
 なぜ、犯罪についてのレポートが「秘密文書」になるのかというと、「ある国で行われている犯罪というのは、その国の現状の問題点(国民が不足だと感じているのは何か)を克明にあらわしているから」なのです。
 「理想郷」であることをアピールしたい北朝鮮にとっては「不都合な文書」であることは間違いありません。
 治安の状態や、経済活動の現状なども、このレポートからは伝わってくるのです。
 この文書と、実際に中国と北朝鮮の国境などで地道に取材を続けてきた情報と経験を掛け合わせて、著者は、「いまの北朝鮮」に迫っていきます。

 経済的には「統制」されているはずの北朝鮮で、さまざまな「経済犯罪」が行われ、財産を私有して豊かに暮らす人も出てきている。
 餓えや生活苦が採りあげられることが多い北朝鮮なのですが、「うまくやって、贅沢をしている人々」が、登場してきているのです。
 それは「体制側」にとっては脅威なはずなのですが、「いい生活をしたい」という市民・庶民の欲望はとどまるところを知らず、「格差」が生まれ、広がってきています。


 この本の30ページに、国境の川を挟んだ北朝鮮(新義州)と中国の街(丹東)の景観の写真が載っているのですが、高いビルが立ち並ぶ中国側と、目立つ建物が何もない北朝鮮側のあまりのギャップに驚いてしまいます。
 宇宙からの写真でも、北朝鮮は、光にあふれた中国と韓国の間の「暗黒地帯」になっているのだとか。

   この新書のなかで、読み書きもできない農場労働者だった孔という男が、金鉱山のヤミ採掘でのしあがっていったという「犯罪」が採り上げられています。

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