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財政政策は救世神か破壊神か

今日の日経新聞1面にも登場した「シムズ理論」というのがある。ノーベル賞学者のシムズの提案である。要するに財政支出によってインフレを生み、政府の負債、つまり国債の価値を下げ、返済したことにしようという。アメリカの理論だろうが日本的でない。

日本政府は、この理論を渡りに船とばかりに、財政の規律をなくす方向に目を向け始めた。御用学者は、シムズ理論を虎の威とばかりに持ち上げ、政府はお金をもっと使うべき、財政政策が有効と主張し始めている。

実際のところ、どうなのか。

適度なインフレが生じるのなら、そして、その適度なインフレの状態が日銀や政府の政策よろしく保てるのなら、国民の所得が適度に上がって好ましい。国債の価値も下がり、政府も楽になる。

それで、インフレで国債の価値が下がるとはどういうことなのか。戦時中に発行された軍事費調達のための国債の価値が、敗戦後の高インフレによって紙くずになったことをイメージすればいい。10年後に100万円返ってくるとしても、10年後の100万円でバナナ1本しか買えないようなインフレが進んでいるイメージでもある。そんな激しいインフレは困るので、本当の所、せいぜい数パーセントのインフレが望ましい。10年後の国債の価値がある程度保たれているし、一方で給与も上がっている。

問題は、その適度なインフレの状態を起こせるのかどうかである。そんなに都合よく経済をコントロールできるのなら、今の日本経済の「望ましからざる状態」は起きなかったはずではないのか。ここに、理論的には納得的だが現実的ではないとの、一般な評価が生まれる。

もう1つの問題は、インフレが生じると誰もが思った瞬間、何が生じるのかである。合理的に行動するのなら、無理にインフレを起こさないような出来の良い国、現在ではアメリカくらいだろうが、そこに資産を移すことになる。とすれば、海外に大量の資産が逃避し、円安になり、インフレを加速させる。適度なインフレをはるかに通り越してしまいかねないし、現実にもこの超インフレが落ちだろう。

シムズ理論を擁護しておくと、今のアメリカではある程度現実的かもしれない。というのも、アメリカ人がドル資産を逃避させるとして、現実にはどの国があるのかだろうか。多分、選択肢が少ない。しかも、世界経済は米ドルでの価格形成が主流となっている。石油が代表的だろう。また、アメリカ経済がこければ、世界全体が大混乱する。

言い換えれば、アメリカ人とその資産には適当な逃げ場がない。というか、アメリカが世界をコントロールしているし、現在では続かざるをえない。

シムズ理論は、このようなアメリカ人にとっての当然の前提に基づいているのではないのか。シムズ理論が成り立つとしても、アメリカという国だけではないのか。アメリカでしか成り立たないことを日本が信じていいのか。こう考えて大きな間違いがない。

まとめれば、今の日本政府が、シムズ理論を錦の御旗として財政規律を無視し、資金をいろんな所に注ぎ込み、インフレを起こそうとするのなら、そしてインフレが起こってくるのなら、資金を海外に逃避させるべきである。アメリカ株を買ってもいいし、日本よりも信頼できる国の外債を買ってもいい。つまり、思慮不足の行動を起こす日本政府から自分自身を守るべきである。

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