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人はなぜ名前に見合う風貌になるのか

 生まれた赤ちゃんの名付けに悩む人は多いが、ヨナ・ゼブナー氏の悩みに比べればそれほどでないかもしれない。近く母親になる同氏にはとりわけ悩むべき理由があった。なぜなら、同氏自身の研究で、人が名前に似た風貌になることが示されていたからだ。

 同氏はイスラエルのヘブライ大学とIDCヘルズリヤ大学、およびフランスのビジネススクール「HECパリ」の研究者らと共同で、一連の興味深い実験を行った。被験者にある人の顔写真を見せ、4つないし5つの選択肢の中から正しい名前を選ぶよう求めたのだ。

 すると、偶然よりかなり高い確率で正しい名前が選ばれたという。研究チームが名前の「手掛かり」になるもの、例えば人種、年齢や社会経済的な要素を調整した場合も結果は同様だった。また、名前と顔のデータベースがプログラムに組み込まれたコンピューターでも同様の結果が得られたという。

 ある実験では、イスラエルの被験者に若者25人の中立的な写真を見せた。写っていたのはイスラエル生まれの成人で、一般に多く見受けられる名前(ニックネームではない)を持つ人たちだ。被験者は、若い男性の写真を見せられ、名前がヤコブ、ダン、ヨセフ、ネタネルのうち、どれだと思うか質問された。その結果、正答率は30%と単純に予測した場合(確率は4分の1なので25%)より高かった。

 なぜ、このようなことが起こるのか。人々は特定の名前と、特定の顔および性格の特徴とを結びつけている。そして、このような特徴が十分に多く存在するため、単純な予測確率を超えられたとみられる。ゼブナー氏らは、写真に写っていた人が乳児の頃に見かけによって名付けられたという可能性を排除する。なぜなら、乳児は大人に比べれば風貌に大きな差はなく、誕生前に名前が決められていることも少なくないからだ。研究チームは、顔が与えられた名前を反映するようになる公算が大きいとみている。

 ゼブナー氏は、これが恐らく2方向のフィードバックプロセスによるものだと指摘する。子どもに対する人々の反応は、名前と関連する既成概念の影響を受ける。そして子どもは人々の反応に対し、それらの特徴の一部を帯びることで対応するというプロセスだ。

 チームは、一連の名前と写真から生じる偏見の排除に努め、何がチームの出した結果を説明し得るかに腐心した。ある実験によると、被験者は、写真に髪型しか写っていなかった場合でも、単純な予測の確率(25%)より正しく(33%)名前を言い当てることができた。大人は自分自身で髪型を選ぶため、この結果からは、人々が無意識のうちに名前に関連づけられた期待に沿うようになることが裏付けられるとチームは指摘する。

 偏見をさらに排除するため、研究チームは約9万4000枚の画像データベースを学習させたコンピューターでもテストを行った。コンピューターに新たな画像を見せ、2つの選択肢の中から正しい名前を選ぶよう求めた場合の正答率は59%と、単純な予測の50%(確率2分の1)を上回った。コンピューターは、名前の選択の際に最も影響した顔の部分のヒートマップ(データを色で区別して視覚的に識別できるようにしたグラフ)も作成した。すると、選択に最も影響した部分は口と目だった。つまり、表情によって最も影響を受ける部分だった。

 人(被験者)を対象とした結果は、イスラエルとフランスで行われた実験によっていずれも支持された。だが、イスラエルの被験者がフランス人の写真を見ても、名前(ローラン、ベロニックなど)の正答率は単純な予測確率を上回らなかった。これは、フランスの被験者がイスラエル人の写真を見てヘブライ語の名前の中から当てようとした際も同様だった。被験者は別の文化の名前に対する連想を持たない。このため、顔の手掛かりを使って正しい名前を言い当てることができなかったのだ。

 先月に娘を出産したゼブナー氏は「わたしにとって、彼女の名前を付けるのがいかに難しかったか想像できるでしょう」と話す。結局、ゼブナー氏は娘にライラックと名付けた。既に周りの人たちは、娘にこう言ってあやしているという。ライラックは将来、美しい花を咲かせ、甘い香りを漂わせるだろう、と。

出典:“We Look Like Our Names: The Manifestation of Name Stereotypes in Facial Appearance,” Yonat Zwebner, Anne-Laure Sellier, Nir Rosenfeld, Jacob Goldenberg and Ruth Mayo, Journal of Personality and Social Psychology (Feb. 27)

By DANIEL AKST

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