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北朝鮮が4発の弾道ミサイルを日本海へ発射 BMDが直面する課題

北朝鮮が日本海へ弾道ミサイルを打ち落としました。
北朝鮮が日本海にミサイル4発、ICBMの可能性低いと米韓当局(2017/3/6 ロイター)

北朝鮮は6日朝、同国西岸から弾道ミサイル4発を日本海に向けて発射した。3発は日本の排他的経済水域(EEZ)に落下したとみられる。北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射を以前から示唆してきたが、米国と韓国当局は今回のミサイルがICBMだった可能性は低いとみている。

ミサイルは午前7時34分ごろ、北朝鮮西岸の東倉里(トンチャンリ)から4発ほぼ同時に発射された。韓国軍によると、ミサイルは東方へ約1000キロ飛行し、高度は約260キロに達した。日本の防衛省によると、4発とも秋田県男鹿半島の西300─350キロの日本海に落下し、うち3発は日本のEEZ内に、残り1発もEEZ付近に落ちた可能性があるという。

弾着は男鹿半島西方沖300〜350kmとのこと。日本の排他的経済水域(EEZ)の周縁部に落ちたようです。EEZの範囲は下図でいうと、白い部分ですね。

画像を見る
日本の領海等概念図、海上保安庁HPより転載。)

大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の発射実験をするのではないかという観測もありましたが、高度260kmほどということですので、おそらく準中距離弾道ミサイル(MRBM)級のスカッドERかノドンあたりを最小エネルギー軌道で発射したのだと思われます。

リンク先を見る
(米議会予算局(CBO), [PDF] Options for Deploying Missile Defenses in Europe, February 2009, p. 9.)

昨年9月に北朝鮮はMRBMを3発(ノドンとスカッドER)同時に発射し、ほぼ同一地点(ばらつきがどの程度だったかはわかりませんが)に同時に着弾させる実験を行っています。今回の発射実験は、1日から始まった米韓合同軍事演習「フォール・イーグル」を牽制するものだという見方が報じられています。

固体燃料式MRBMの斉射能力は日米BMDへの挑戦となる

北朝鮮は任意のタイミングで任意の数を任意の場所に発射する態勢を整えつつあります。ICBMの開発も進行中ですが、あくまでもその照準は米国本土に向けられるものです。日本攻撃専用ともいえるノドン・クラスのMRBMの斉射は、現行の弾道ミサイル防衛(BMD)に対して厳しい挑戦ですし、我が国にとっては直接的な脅威です。

また、ノドンは液体燃料であるがゆえに、これまでは常時発射状態にはありませんでした。しかし、固体燃料式陸上発射「北極星2号」が誕生しており、この技術が固体燃料式ノドン(ノドンではなく新型ミサイルですが…)へとつながることは間違いありません。北朝鮮のMRBM〜IRBMはより柔軟な運用が可能になるでしょう(なお、今回の発射において用いられたミサイルの燃料が固体か液体かはまだ分かっていません)。

スカッドERが1,000kmを超える射程を持つのであれば、ノドンと同じく日本を射程に収めたMRBMの種類も数も増えることとなります。繰り返しになりますが、固体燃料式ノドンとスカッドERの斉射による同時弾着射撃という技術・運用法は、日米のBMDに大きな脅威となります。

敵基地攻撃は難しい

移動発射機(TEL)を航空機や巡航ミサイルで狩るという敵基地攻撃論も考察には値しますが、実に困難なミッションです。

1991年の湾岸戦争発生時、イラクは600発以上のスカッドミサイルを保有していました。もちろん、発射機は移動式のTELで、1980年までに12基のTELをソ連から取得しており、国産のものを含めると数十基だったと報告されています。

これに対し、9カ国からなる多国籍軍によるスカッドミサイル関連施設に対する出撃回数(ソーティ)は、開戦後約1カ月で総計1,460に達しました。スカッド搭載TELに対する攻撃(スカッド狩り)は、そのうちの約15%(215ソーティ)。なお、約80%は製造所や貯蔵トンネル、専用道路といった固定目標への攻撃です。

スカッド狩りによってイラクの弾道ミサイル戦力は確かに衰えましたが、多国籍軍がこれだけの物量を投じても、スカッドTELすべてを制圧することはできませんでした。戦争終了の数時間前までスカッドは火を噴き続け、ソ連製TEL×6基、国産TEL×4基が最後まで生き残りました。

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(ノドンのTEL。自作CG。)

イラクは北朝鮮の約3.5倍の面積を持っていますが、TELを隠すうえでは北朝鮮の方が適した地形を持っています。というのも、砂漠が広がるイラクとは違って、北朝鮮には山や谷による“影”の部分が多く、その影は早期警戒機(AWACS)のレーダーなどの死角となります。しかも、ノドンはミサイル数が200発、TELは50基で、韓国を巻き込んだ有事シナリオとなるとスカッド・シリーズの100基近いTELも含まれます。固体燃料式ノドンも加わるかもしれません。運用するTELの数においても、北朝鮮はイラクより厄介な相手というわけです。
【参考】敵基地攻撃能力:知っておきたい巡航ミサイルと空爆の有効性


ミサイル防衛は同時発射された多目標迎撃能力獲得を始めてはいる

DWES、C2BMCといったワードの重要性が日本のミサイル防衛でも高まってほしいところです。DWES(Distributed Weighted Engagement Scheme)については過去記事でも取り上げていますが、多目標に対し、複数のイージスBMD艦のうちどの艦が射手として最適であるかを自動的に調整するシステムで、目標の1発に対して迎撃ミサイルが何発も集中してしまう重複発射を防止することができます。

DWESは2015年2月に「FTX-19」迎撃シミュレート実験(実弾標的・迎撃ミサイル発射はなし)を実施しています。3発の分離型短距離弾道ミサイル標的をほぼ同時に発射し、アーレイ・バーク級イージス艦の「カーニー」、「ゴンザレス」、「バリー」のうち2隻のイージス艦がこれを探知し、SM-3ブロック1Bの発射シミュレートを実施し、成功しています。

また、イージスBMDはすでに実弾迎撃実験において同時に発射された複数の目標を迎撃することに成功しています。

【参考】イージスBMDを含むミサイル防衛システムによる多目標同時迎撃実験の記録

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