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フェイクニュースはなぜ蔓延するのか――加速化するネットメディアに対抗する「スローニュース」とは? / 朝日新聞IT専門記者・平和博氏インタビュー

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信じたい情報ほど、慎重に見る

――スローニュースはフェイクニュースの拡散防止に繋がるのでしょうか。

スローニュースは、フェイクニュース拡散の防止に向けた一つの取り組みです。ただ、それだけでは難しいでしょう。

フェイクニュースの拡散防止には、情報の発信者側であるメディアの取り組みに加えて、拡散の舞台となっているフェイスブックなどプラットフォーム、そしてユーザーレベルの取り組みも必要だと思います。

プラットフォームの動きとしては、すでにフェイスブックなどがフェイクニュースへの広告配信停止や、ファクトチェックに取り組むメディアと連携したフェイクニュースの判定、排除の取り組みを明らかにしています。

また、フェイクニュース拡散の背後にある情報のタコツボ化”フィルターバブル”を破ろう、という動きも出ています。

ウォールストリート・ジャーナルは、保守派とリベラル派のフェイスブックに流れるニュースがどれだけ違うかというのを見せるページを立ち上げています。これをみると、出てくるニュースの配信元が見事に分断されていることがよくわかります。

また、あえて違う立場の意見が目に触れるようにする、という取り組みも始まっています。イギリスのリベラル派の新聞ガーディアンは、読者に毎回、保守派の論考5本を紹介する「バブルを破れ」という定期コーナーを新設しました。

このほかにも、保守派のユーザーならリベラル派のニュース、リベラル派なら保守派のニュースが表示されるような、ブラウザ用の拡張機能も開発されています。

――フェイクニュースにだまされないために、個々人が気をつけるべきことはありますか。

一つは、目にしたそのニュースを、他のニュースサイトも報じているかどうかを確かめてみること。

重要なニュースなら、他の主要なニュースサイトも報じているはずです。グーグルニュースなどで、キーワードを検索してみれば、それを確認することができます。もし、他にどのサイトも報じていなければ、注意が必要です。

他のサイトも報じているようなら、ニュースのポイントに違いはないか、読み比べてみることもお薦めします。

もう一つは、そのニュースを書いている筆者は誰か、ということ。グーグルで筆者名を検索すれば、他にどんなニュースを書いているかがわかります。

ニュースの情報源はどこかということも大事です。通常のニュースには、「~によると」といった情報源(ニュースソース)が明示されています。また、その情報源からの引用も記載されているでしょう。

そのような情報源が一切なければ、注意が必要です。

――複数の信頼できる情報源からのニュースを比較することが重要なのですね。

ええ、スローニュースを提唱したダン・ギルモアさんは大学で、このようなデジタルメディアリテラシーの講義を行っています。そしてギルモアさんは、私が翻訳を担当した著書『あなたがメディア! ソーシャル新時代の情報術』の中で、ニュースを受けとるユーザー側が、その内容を鵜呑みにしない、などの基本的なポイントをまとめています。

中でもギルモアさんは、「信じたいと思うセンセーショナルなニュースほど、より慎重に疑ってかかるべきだ」と注意喚起をしています。

ソーシャルメディアを手にしたことで、私たちみんなが、ニュースの受け手であると同時に発信者にもなっています。友達から回ってきたフェイクニュースを条件反射のようにリツイートしてしまえば、それは、自分自身がフェイクニュースを発信したことにもなります。

まず一呼吸おいて、これ本当かな、と思ってみるというのは、大事なことだと思います。

――人々が求めていたのは「ファクト(真実)」ではなく、自らが共感できる「物語」だったと指摘する声もあります。こうした人々に対して、リテラシーの警告は有効なのでしょうか。

陰謀論などを信じる人々に、それが事実ではないことを説明しようとすると、逆に確信を深めてしまう「バックファイヤー効果」というものを、ダートマス大学教授のブレンダン・ナイハンさんが指摘しています。

まさに、事実よりも共感、という状況です。ただ、ギルモアさんは、それについて悲観的ではありません。「トランプ氏が言うことを、何でも信じるという人たちはいる。ただ幸い、それは多数派ではありません」

そして、こう強調しています。「世界が急に事実を重んじるようになるなら結構ですが、それは起きそうにない。現状を少しでも改善するために、リテラシー教育は必要です」

少しずつでも、粘り強く、フェイクニュースの排除に取り組んでいくことが大切ではないでしょうか。

あなたがメディア! ソーシャル新時代の情報術
著者/訳者:ダン・ギルモア
出版社:朝日新聞出版( 2011-07-20 )
定価:
Amazon価格:¥ 6,624
単行本 ( 408 ページ )
ISBN-10 : 4022508760
ISBN-13 : 9784022508768

朝日新聞記者のネット情報活用術 (朝日新書)
著者/訳者:平 和博
出版社:朝日新聞出版( 2012-03-13 )
定価:
新書 ( 256 ページ )
ISBN-10 : 4022734418
ISBN-13 : 9784022734419
平和博(たいら・かずひろ)
朝日新聞IT専門記者(デジタルウオッチャー)

メディアブログ「新聞紙学的」の投稿はハフィントンポストにも転載されている。著書『朝日新聞記者のネット情報活用術』(朝日新書)、訳書『あなたがメディア! ソーシャル新時代の情報術』『ブログ 世界を変える個人メディア』(ダン・ギルモア著)。

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