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宮崎日日新聞の社説

死因究明制度
2011年08月23日宮崎日日新聞


犯罪死見逃しを防ぐ体制に

 死因がよく分からない遺体が発見されると、警察が検視を行う。医師も立ち会い、遺体の隅々まで注意深く目をやり不審な点がないか調べる。関係者の事情聴取なども経て「事件性なし」と判断されれば、ほとんどの遺体は解剖されないまま葬られてしまう。ところが後になって、実は殺人事件や傷害致死事件だったと分かることがある。

 警察庁によると、こうした「犯罪死の見逃し」は1988年以降、少なくとも43件あった。4年前に大相撲の時津風部屋の力士が亡くなり警察は病死と判断したが、後で元親方や兄弟子らによる暴行死だったと分かった。自殺ではなく殺人と判明したものの、既に時効が成立していたというケースもあった。

■検視官や解剖医不足■



 どうやって見逃しを防ぐか。政府は犯罪対策閣僚会議で死因究明制度の整備に本格的に取り組むことを決め、警察庁や厚生労働省、文部科学省など関係省庁の局長クラスから成るワーキングチームを発足させた。警察の検視官や解剖医は絶対的に不足している。検視に立ち会う検案医も足りない。しかも東京や大阪など大都市圏と、それ以外の地域とで究明体制の格差が大きい。必要とされるのは、全国どこでも同じ水準で死因をきちんと調べる制度だ。

 全国の警察が取り扱う遺体は年々増えており、昨年は17万1千体余り。このうち警察の検視で事件性ありと判断された約8千体が「司法解剖」に回され、さらに約1万1千体が事件性にかかわらず死因を特定するため「行政解剖」された。解剖率は11・2%で、これを5年後に20%まで引き上げるのが当面の目標になっている。

■6割強は4都府県■



 そこで、問題になるのが地域格差だ。解剖総数約1万9千体のうち1万2千体余り(64・9%)は東京、大阪、兵庫、神奈川の4都府県に集中している。解剖率を見ると、4都府県平均で23・2%なのに対し、それ以外の地域の平均は5・8%にすぎない。ここに相当テコ入れしないと、全体の底上げは図れない。

 戦後、感染症予防などを目的とし大都市圏には連合国軍総司令部(GHQ)によって監察医制度が導入された。4都府県ではそれが今も機能しており、東京の場合は都監察医務院が年間2700体の行政解剖を手掛けている。

 こういった制度がない地域では、いったん事件性なしとなれば行政解剖されることはまずないのが実情だ。全国の解剖率を20%にするには、現在170人いる解剖医を倍増させなければならない。

 文科省が解剖医の養成に力を入れ、厚労省は行政解剖の拡充を図り、警察は検視官の増員などで検視の精度を高め…と関係省庁が連携して、死因究明制度の立て直しに根気強く取り組んでいくしかない。どれ一つ欠けても、信頼できる制度にはならない。

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各大学にいる大学院生の数は確実に増えている。しかし、今のままでは、彼らが今後安心して法医学者として働けるかというと疑問だ。そもそも、就職できるポストの数が、年々減らされている。誰かが定年退職したあとはそのポストが大学によって消滅させられてしまうことが多発している。そこへ大学院生を就職させたくてもできる状況にない。また、感染症など、それなりのリスクがあるにも関わらず、給料も一般臨床医に比べ極めて低い。もともと希望者はそれなりにいるのに、国として希望者をつぶしている今の状況をなんとか改善させなければならない。

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