- 2017年03月03日 15:00
トランプ大統領で、日本の「外交・安保」はどうなるか
2/2思いやり予算、沖縄……現政権のアキレス腱
【三浦】安保法制に関しては、結局、安倍首相と高村(正彦 自民党副総裁)さんとのやりとりで、「こういう憲法解釈ならいけるだろう」という公明党対策の部分があったわけですか?
【石破】それは私にはわかりません。2015年の安保法制の議論の中で、高村副総裁がおまとめになるということになり、北側(一雄 公明党)副代表と、弁護士同士、法的ロジックにもとづいてまとめられたのは事実だと思います。
【三浦】結果として安保法制は「存立危機事態」に限定されましたよね。憲法解釈上の限界というレガシーを安倍政権は残してしまったわけです。今後、日米の同盟関係を対等に持っていく形で、集団的自衛権の行使を定義し直して、フルスペックに近づけていくということはありうるのでしょうか。安倍首相は2020年ぐらいまで(首相を)やりたい意向をお持ちのようですけど。
【石破】そうですか。
【三浦】らしいですよ。巷の噂では。安倍政権が安保法制からさらに一歩踏み出す可能性があるのかどうか。
【石破】それはちょっと難しいのだろうと思います。今の政権として、「憲法上これ以上の行使はできない」と言ったわけですから。ただトランプ大統領はもっと日本に(在日米軍の駐留経費を)負担させるべきだって言いましたよね。もちろん、「日本はすでに75%も負担しております」と言うことになるでしょう。それで向こうは「そんなに持ってくれているんだ。ありがとう。それならいいよ、その話は。悪いことを言ったね」となるのか。それとも「米軍が日本に置いている艦船や航空機のレンタル料はどうした? 提供している核の傘代もあるぞ。空母ロナルド・レーガンやF-22戦闘機は高いんだ。その分を払ってないだろうが」と言われるのか。
【三浦】そこまで政権として予測しているのか。
【石破】しているとは思いますが。
【三浦】つまりホストネーションサポート(思いやり予算)で日本は75%も負担しているという、これまでのロジックや、防衛予算をちょっとずつ増やしていけば何とかなるというレベルでは間に合わない変化が起こりうる、と。
【石破】何しろ相手がトランプ大統領ですからね。
【三浦】沖縄・普天間基地の辺野古移設問題についても、問題をこじらせた現政権の対応には批判があります。石破さんならどう対応されますか?
【石破】私ならどうこうということではなく、もう少し沖縄に寄り添う姿勢を沖縄県民に実感していただくことが必要ではないかと思います。小泉内閣で防衛庁長官を拝命していたときに、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したことがありました。お盆の期間でしたが、私も含め幹部はすぐに対応しました。奇跡的に民間人に死傷者はなく、米兵も重傷は負ったものの命に別状はありませんでした。しかしあの時から、次に沖縄で米軍機が民家に落ちたらもう日米安保は本当に危機的になるかもしれないという感じをずっと持ち続けています。裏で中国が煽動しているとか、本土から極左分子が入り込んでいるとか、そういう面があるのかもしれません。でも県民のシンパシーが政権、あるいは本土に寄せられているかといえば、選挙の結果を見る限り、そうではないと言わざるをえません。
【三浦】沖縄は比例区だけでなく、小選挙区でも共産党が取っていますからね。
【石破】たしかに辺野古移転には多くの反対論があります。しかし、私が国会で答弁した通り、当時、苦渋の決断として手を挙げてくれたのが名護市だった。そして辺野古につくることで、弾薬庫と訓練場と滑走路を一体で運用できる。海上に出すことで騒音や墜落の危険なども相当に低減される。その意味では、決してアンリーズナブルな結論とは思っていません。ですから、政府としては沖縄の気持ちに寄り添う姿勢をしっかり示すことが大切です。
これはこれからの議論になると思いますが、たとえば将来的に情勢が好転したら「陸上自衛隊辺野古基地」に移管して民間機も降りられるようにする。嘉手納も「航空自衛隊嘉手納基地」にする。つまり管理権を日本側が持って、「米軍はゲストとしてどうぞお使いください」という形に持っていく。これは今の地位協定でも可能なはずです。いずれにしても、沖縄県民の気持ちを政府は全面的に受け止める、と思ってもらうことが大事。今の状況にほくそ笑んでいる人たちに対する強いメッセージにもなると思いますよ。
石破茂
1957年、鳥取県生まれ。衆議院議員(10期)、水月会(石破派)会長。慶應義塾大学法学部卒業後、三井銀行入行。86年衆議院議員に全国最年少で初当選。防衛庁長官、防衛大臣、農林水産大臣、地方創生担当大臣を歴任。著書に『日本人のための「集団的自衛権」入門』ほか。
三浦瑠麗
1980年、神奈川県生まれ。国際政治学者。東京大学農学部卒業。東大公共政策大学院修了。東大大学院法学政治学研究科修了。法学博士。現在、東京大学政策ビジョン研究センター講師。『朝まで生テレビ』や『プライムニュース』などでコメンテーターとして活躍する気鋭の若手論客。近著に『「トランプ時代」の新世界秩序』。
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