- 2017年03月03日 15:00
トランプ大統領で、日本の「外交・安保」はどうなるか
1/2小川 剛=構成 大沢尚芳=撮影
安倍政権を取り巻く世界情勢が、逆風に転じている。「ポスト安倍」候補の一人、石破茂前地方創生担当相と、気鋭の国際政治学者、三浦瑠麗氏が外交・安保から経済政策まで縦横無尽に語り合った。
「損得」ファーストの大統領と渡り合えるか
【三浦】この1年で世界の潮流の一番大きな変化はトランプ米大統領の誕生だろうと思います。トランプ新大統領の登場によって日本外交、日本の安全保障政策はどのような変化を迫られると石破さんは予測されますか?
【石破】なぜトランプ大統領が当選したのか、本当によく分析しなければいけない。我々はほとんど、ワシントンDCやニューヨークしか知らない。会うのはもっぱら政府関係者や、軍の関係者や、大企業の人がほとんどで、圧倒的多数の、アメリカの普通の国民に接することがない。トランプ躍進の原動力になったのは白人の中年の中低所得者層の男性と言われている。ブルーカラーや高卒者の7割ぐらいがトランプ氏を支持したそうです。アメリカでは40代、50代の白人男性の死亡率だけが突出して増えていて、医療用麻薬の消費量も断トツに多いそうです。そういう中で、一般の米国民が何を考えているのかということですね。日米安保は日本の「タダ乗り」ではないことをどれだけの米国人がわかっているだろうか。「中国はけしからん」「メキシコはけしからん」とトランプ大統領は訴えた。「いや、そうではない」とまともなことを言ったのがヒラリー氏。しかし、まともではないけれど大勢が支持することを言ったトランプ氏が勝った。
【三浦】そこに危機感を感じる。
【石破】すごく感じます。時に孤立主義に回帰することもあるけれど、「多少損をしても世界のために働く」という一種の矜持がアメリカには長らくあった。今までアメリカが先頭に立って守ってきた人権、民主主義、正義、法の支配などを、トランプ大統領がまったく無視するとは思わない。しかし今までにないほど「損得」の概念がかなり強く出てくるだろうと。
【三浦】しかもそれが短絡的に行われる。
【石破】そう。日本はそういう相手と、同盟国として相対していかなければならない。問われているのはトランプ大統領ではないと私は思う。
【三浦】つまり、こちら側だ、と。
【石破】日本の側だと思います。
【三浦】安保法制を通したときに、「米軍が日本から撤退するかもしれない」という脅しを使わなかったのは安倍政権の賢明な判断だったと思うし、それが自民党という政党の良き伝統であると思います。しかし、トランプ大統領の登場で「米軍撤退」という脅しが向こうから“見える化”されてしまった。トランプ政権と対峙していくうえで、安倍政権の安全保障政策は過不足なく十分だと思われますか。あるいは自分ならこうするという追加的な修正はありますか?
【石破】安全保障政策は常に改善されていくべきもので、「これが完璧」ということはないのだと思っています。第2次安倍改造内閣が発足する前に、安全保障法制担当大臣の打診をいただいたことがありました。安保法制をわかりやすく説明せよ、ということだったのかもしれません。過去にも有事法制や、イラク特措法、あるいはテロ特措法の延長など、当初は反対の多かった法制の説明を行ってきた経緯もありました。イラク特措法も、最初は国民の支持率は約30%でしたが、最終的に可決の頃には約60%となりました。
打診をいただいて、総理に、「私は集団的自衛権は現憲法上もフルに容認されると考えており、自民党としてもそのように党議決定しております。集団的自衛権をどのように行使するかは、国家安全保障基本法で厳しく節度を持って定めるべきもので、憲法上の制約ではないと考えますが如何でしょうか」とお尋ねしました。安倍総理は「憲法上、容認しうる集団的自衛権は今回の安保法制までで、これ以上は憲法改正が必要だ」とおっしゃった。総理がそう決められた以上はそれが内閣の方針ということです。
【三浦】安保法制のあり方について、安倍首相とは考え方が違う。
【石破】目指す方向は同じでも、論理の立て方に違いがあった。ですから安全保障法制担当大臣はお引き受けできませんでした。仮に野党から「石破大臣、あなたは集団的自衛権を憲法上、これ以上行使できないと思っていますか?」と問われて、閣内不一致とされるのは困りますので。
【三浦】あとは嘘つくしかない(笑)。
【石破】嘘つくわけにはいきませんから。
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