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【読書感想】笑いのカイブツ

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笑いのカイブツ

笑いのカイブツ

内容(「BOOK」データベースより)

人間の価値は人間からはみ出した回数で決まる。僕が人間であることをはみ出したのは、それが初めてだった。僕が人間をはみ出した瞬間、笑いのカイブツが生まれた時―他を圧倒する質と量、そして“人間関係不得意”で知られる伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキ、27歳、童貞、無職。その熱狂的な道行きが、いま紐解かれる。「ケータイ大喜利」でレジェンドの称号を獲得。「オールナイトニッポン」「伊集院光 深夜の馬鹿力」「バカサイ」「ファミ通」「週刊少年ジャンプ」など数々の雑誌やラジオで、圧倒的な採用回数を誇るようになるが―。伝説のハガキ職人による青春私小説。

 「伝説のハガキ職人」ツチヤタカユキさんが自らの半生を振り返った小説。

 これは小説なのか、独白なのか。

 読んでいて、すごくヒリヒリするというか、圧倒されてしまいました。

 世の中には、こんなに「笑い」に取り憑かれた人がいる。

 人生の他のすべてに優先して、「ネタ」を作り出そうとしている。

 ある暑い夏の日、給料を受け取るとそのままバイトを辞めた。

 僕は実家にいながら無職になった。

 母の冷たい視線をまるっきり無視し、起きている時間を大喜利に費やせる状況になった僕は、一日に出すボケ数のノルマを1000個から2000個に増やした。

 朝から晩までクーラーのない部屋で、裸で机にかじりついて、自分でお題を考えて自分で答え続けていた。ノート一冊を一日で使い切るくらい大喜利をした。

 とにかく、もっともっと加速したかった。誰よりも速く、濃く、生きたい。光の速さで生きて、一瞬で消えていきたかった。

 だけど、そんな気持ちとは裏腹に、いつもボケが1500個を超えたあたりで、誰かに殴られているみたいに、頭がガンガンして、死にたい気分になった。加速したい気持ちに、脳と身体が全然ついてこれていなかった。

 それでも毎日、ノルマの2000個に到達するまで、僕は絶対に、全力疾走をやめなかった。

 (NHKの『ケータイ大喜利』で)三段に昇格した頃、大喜利のスピードはさらに加速していき、その頃には5秒に1回ペースで、ボケが出せるようになっていた。一つのお題につき、少なくても30個。多い時は300個ボケを送った。

 ツチヤさんは、本当に、一日中ボケを考え続けていたのです。

 お笑いとは、ここまでストイックなものなのか……

 ツチヤさんは極端な例なのかもしれませんが、以前、有名なコピーライターの本でも「とにかくたくさんのアイディアを出してみるトレーニングが必要」と書いてあるのを読みました。

 お笑いとかコピーライティングには「センス」がモノを言うのだと思われがちだけれど、どんな天才でも、最初に「最適解」を見つけ出せるわけではなくて、試行錯誤を繰り返しているのです。

 もちろん、数さえこなせば良い、というものではないのだろうけれど、少なくとも「千本ノック」みたいなのが大事な時期はあるのしょう。

 ハガキ職人を続けるためには、最低限の金がいる。

 僕はすぐに、松屋でアルバイトを始めた。深夜の店の清掃が、主な仕事だった。

 時間が過ぎるのが、恐ろしいくらいに遅い。

 今、僕の心臓は、ちゃんと動いているんだろうか? バイトの途中、自分の心臓が止まっているような感覚を覚えた。

 この時間があれば、もっとたくさんの笑いを生み出せる。そう考えると、居ても立っても居られなくなってくる。今すぐに帰って、ボケを出したい。

 自分が存在していなかったら、生まれなかった笑い。それをたくさん作って、この世に残したい。どうにか笑いだけを作らせてくれませんか? 神様。

 家に帰り、ラジオを聴いた後、採用された分だけ、壁に貼られた紙の分の数字を増やした。その紙には雑誌やラジオなどで、今まで採用された数字が並んでいる。

 もうすぐ300を超えそうなのが、2つもある。

 ラジオや雑誌にネタが採用される。

 その喜びの感情は、打ち上げ花火のように、一瞬で終わる。

 採用を確認した、次の瞬間から、来週分の投稿のタイムリミットがスタートを切る。

 来週もまた、その瞬間を手に入れるたびに、ペンを握る。

 ツチヤさんの生きざまを読んでいると、ツチヤさんにとっての「笑い」とは何なのだろう、と考えずにはいられないのです。

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