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台頭する中国消費パワー、日本はどのように進むべきか

中国通な社長のビジネスコラム 第47回 −秋葉良和

 今週は業務でイタリア出張に来ています。年に2〜3回程度欧州を訪問するのですが、この地においても毎回のように中国人および、その消費力の勢いを感じます。欧州各国も中国のパワーに乗じて利益を得ようと、路線を中国市場中心にシフトし始めています。

 最近では欧米各国が様々な問題を抱え、経済力が減退している中、中国の消費力に対して期待するのも理解できるし、中国の消費パワーを私自身素直に認めるものの、欧米各国の期待がやや行き過ぎているのではないかという違和感を覚えます。何れにしても、中国の消費力が世界に与える影響が増してきているということです。しかしながら、その流れに反比例するように日本の影響力が減少しているようで、非常に残念に感じることも多々あります。

 いくつか例を挙げてみたいと思います。

 現在日本とイタリア間を直行便で運行しているのはアリタリア航空のみ。以前は日本航空が日本とミラノ、ローマ間を結ぶ便を運行していましたが、更生法により人員と路線のリストラを行った結果、この便はなくなってしまいました。反対にイタリアと中国を結ぶ便は中国の航空会社の便も含め増加しています。

 今回のフライトは、その後の移動のことを考え、スターアライアンスグループを利用することに決め、往路はルフトハンザ航空を利用、ミュンヘン経由でミラノマルペンサ空港を利用しました。いざ搭乗し、席の前に置かれているエンターテイメントプログラムを見ると、さすがに成田発ということもあり説明文は日本語の記載もあるにはあるのですが、全般的に中国語記載の比率の方が高く、また日本発の便にも関わらず通路を挟んで両隣は中国系の方でした。

 機内ではドイツで人気の伝統的なビールがあるとCAに勧められ、頼んでみることにしました。職業柄どうしても成分表示を確認してしまいます。表示面を見ると(後から貼付けらたラベルではなく、製造時のオリジナル表示ラベル)、ドイツ語、英語、中国語の記載となっていました。中国市場を最初からターゲットに入れているということですね。そういえば以前新聞で、中国のビール消費量が拡大しており世界一になったとの記事を目にしたのを思い出しました。

 また機内販売誌を見るとカードサイズで格好良く、GSM/GPRS/3G対応で機能満載のスマートフォンが紹介されており、欲しい!と思いましたが、説明文を読むと当然のごとく日本では使用できず…詳細を見ると、対応言語はドイツ語、英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語に加え、最近ソフト改良で中国語も利用できるようになったと記載されています。日本語は!と思わず叫びたくなりましたが、これは日本のキャリアが独特な通信制限を敷いているので仕方ありません。ご存知の通り、10年以上前から海外で販売される携帯電話は、ほとんどの国においてSIMフリー、GSM方式。カードを差し替えるだけで様々な国で共通して携帯電話を利用できます。

 日本では、最近でこそ総務省の指針によりSIMフリーにする機種が発売され始めているものの、まだまだ全体には普及しておらず、3大キャリアが市場を独占し、かつ独自の通信網を強要しています。これにより、世界の携帯電話の進化の潮流と日本の潮流は結構な溝ができ、海外の企業からは日本はグローバリゼーション精神が足りないとも捉えられ、韓国台湾以外の欧米のメーカーは日本マーケットに積極的に参入せず、その分中国市場に積極的に投資しています。また日本の携帯電話メーカーは国内各キャリアの要望を取り入れ、日本市場独特の性能を付与した機種を開発することを強いられ、その結果、海外との汎用性に乏しく海外市場では人気が出ず、競争に勝てない状況が続いています。歯がゆい思いです。

 国際展示会にしても同様です。かつては一世を風靡した東京モーターショー。冷え込んだ日本景気を考慮するとモーターショーに出展しても利益に直接つながる時代は終わったと捉える欧米メーカーの中には撤退するメーカーも少なくありません。その分上海モーターショーに資金を投入し参加しています。展示会場で車を注文して行く人も数多く、展示会が即利益につながるという訳です。数年前にはズタ袋に大金をつめた少女が会場に現れ、その場で車を購入するということも話題になりました。食品分野においても世界各国は日本で実施される食品展の参加回数を減らし、その分北京、上海、広州で実施される展示会に積極的に参加しています。

 ワインを扱っているイタリア人の友人は、10数年来、日本とビジネスを行なってきて、日本人を非常にリスペクトしているものの、ビジネスの舞台は自然と中国に移っているとのこと。日本の大手酒類メーカーに相当な数量を輸出していたのですが、ここ最近の不況で日本からの買付け数量が徐々に減少しています。そんな中、昨年から始まった中国市場向け輸出はどんどん伸長しており、中国のある中小メーカーの3ヶ月の買付け量が日本の大手酒類メーカーの1年分を既に超えたとのこと。友人曰く『日本人が本当に好きだし、本当なら日本のみとビジネスをしたい。しかし現在、日本の経済は停滞気味で、また価格/品質に世界一厳しく成約に至るまで相当時間を要する日本市場と、好景気でその場でビジネスが成約する中国市場の状況を比較すると、中国市場にある程度シフトせざるを得ない。家族や職員の為に利益を出すことが最重要』とのこと。当然の流れと考えます。

 私も実際にいくつかのワイナリーを訪問したのですが、そこで聞いたのは、最近中国資本がどんどんフランスやイタリアのワイナリーを買付けに来ているとのこと。私が『現地の資本が減って行くというのは伝統も薄れ好ましくないですね』と述べると、『そうそう、まるでバブル期の日本企業がジャパンマネーの力で本業でもないのにワイナリーを買付けに来た時の状況と似ているね』と言われ、意表をつかれ何とも恥ずかしい思いをしました…。

 いずれにしても、政治家も企業も現在の日本の置かれている状況をもっと冷静に分析すべきと思います。自分たちはしっかりやっている、日本が一番!という信念を持つことは大事ですが、世界情勢を視野に入れ、的確な分析を行う時期だと思います。
周りを知らない「井の中の蛙」であればまだしも、鍋の中でぬるま湯につかり、気持ち良いと感じるあまり下から熱せられていることに気づかず、すっかりとゆであがってしまう蛙では元も子もありません。

 現在の中国消費パワーの台頭は、考えようによっては日本が再び国力を盛り返す為にどのように進むべきかということを再考させてくれる良い機会なのかも知れません。世界経済の状況を分析した上で現在の日本の正確な立ち位置を把握、日本が市場として魅力を失いつつある現在、日本が積極的に世界各国の市場にビジネスで乗り出して行く比重を高めるべき。そのためには日本人の為のサービスや技術ではなく、海外各国それぞれの市場特性に合わせながらも日本の良さを出す、サービスや技術の確立と、海外で通用するグローバル人材の育成が急務。行政、民間かかわらず、強い思い抱きながらも、且つ目の前の利益を創出出来るような人が集まれば日本も徐々に変わって行くでしょう。私もその一員になれるよう日々取り組みたいと思います。(執筆者:秋葉良和・A−commerce 編集担当:サーチナ・メディア事業部)

【執筆者】
画像を見る秋葉良和(あきば よしかず)


株式会社A−commerce代表取締役、早稲田大学招聘研究員。
1994年、三井物産入社。14年にわたり食料部門に所属、輸出入から国内流通、M&A事業、海外加工スキームの構築等を経験した後、中国上海勤務。中国を起点とした輸出入から現地政府との折衝まで幅広く経験。2007年三井物産退社、中国ビジネスに特化したA−commerceを起業。現在は中国政府企業上海FESCOとの全面提携による中国ビジネススクール『CBDA研修センター』運営のほか、中国ビジネスアドバイザー、輸出入業務を行う

●関連サイト
赴任前研修、管理者研修に最適!CBDA研修センター
中国ビジネスを支援するA−commerceホームページ

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