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中秋節に見る、月餅ビジネス裏事情(2)

 ここからが更にすごいのですが、黄牛にもいろんなタイプがいるということです。巧みにシステムを構築し、合理的を追求して動いている黄牛集団もいます。どういった黄牛かと言いますと、月餅企業と提携をした黄牛集団です。





  先ほどの計算を再び考えてみましょう。

    生産コスト:50元
    引換券販売額:200元
    今季販売計画:10万セット
    券の発行日:8月1日〜9月11日
    月餅製造開始:8月8日
    現物引換期間:8月15日〜9月11日

  上記の数字をみると、日本企業においては真面目に10万セットを製造するというのが一般的な考えですよね。しかしこの月餅企業は実際には8万セット程度しか製造しません。この企業の考えとして、

  1)贈答用や福利厚生で券を受け取る人は結局面倒だったり忘れたりして引換えをしない。
  2)自身で消費する量以外は黄牛に100元〜150元で買い取ってもらった方が良い。
  3)月餅企業と黄牛が提携し、出来るだけ黄牛に買い取ってもらうように依頼する。
  もちろん税務署対策も出来ていて、別項目の領収書を発行したりします。

  3)は日本企業にはなかなか理解しがたい行動ですよね。しかし実際に存在する方法です。

  黄牛は元々1枚あたり30元の利益を目指しているとすると、月餅企業はもう少し色をつけて月餅引換券を40元で買い取ります。

  上記の計算を基に10万セットの引換券を販売すると、
    販売額=200元x10万セット=2000万元
    本来の製造コスト=50元x10万セット=500万元(A)
    実際の製造コスト=50元x8万セット=400万元(B)
    黄牛からの引換券買取額=40元x2万枚=80万元(C)

  A−B−C=500万元−400万元−80万元=20万元

  月餅企業にとっては最低でも20万元の+αの利益が残る訳です。更に前述のように引換券を持っていても、その存在を忘れている人、交換作業を面倒に感じる人は引換に来ませんから、発行数に対して更に濡れ手に粟の利益も出ることになり、その人数を仮に5000人だとした場合、

  200元x5000人=100万元

  100万元ほどの更なる+αの利益がでます。そうすると、合計で120万元のプラスαの利益となります。実はこの3)のシステムは中国人の一般消費者でも知らないところです。ただし中国食品ビジネス事情に詳しい人の間では知っている人も少なくありません。

  月餅企業では更に考えていて、引き換え終了日間近になると、どこでも気軽に引換ができたはずの月餅は、本店などの限定された場所のみの引換えとなります。

  そうすると9月11日の最終日には長い時で6時間待ちなどとなる行列が発生します。もともと並んだりすることに耐えがたい性格の中国人、疲れもあるため途中で意思も折れ、列に並ぶのをやめたり、または周りに群がってくる黄牛に、従来の買取り額の150元よりもっと低い言い値をいう黄牛(例えば 120元程度)の提案を受け入れたりします。こうして企業側は引換券で現物に換える人を出来るだけ調整し、製造個数にちょうど合うように計算していくというわけです。

  更にそこに偽物の引換券を流通させる悪い輩もいるのですが、企業も黄牛も消費者も偽物が出回り、損失もある程度出ることも加味した上ですべての対応をしています。合理的というか、たくましいというか、事情を知ると考えるところありますよね。

  しかしながらたくましいのは中国企業だけではありません。他にも韓国、東南アジアなど日本以外の他国から中国市場に参入してくる製菓店はこれらの事情を把握した上で、黄牛を巧みに利用しているケースもあります。例えば「○X製菓」という店があったとします。黄牛は月餅時期に街や百貨店の食品売り場に出没し、一般の人に対し買い取りたいブランドの名称を積極的に聞いていきます。その時に黄牛が『「○X製菓」の引換券はあるか?』と聞いていくと、一般消費者は自然に今年は「○X製菓」の月餅が人気ありという印象を抱きます。そこを計算して動く企業も増えてきています。

  どうですか?やはりコンプライアンスや商道徳が厳しい日本企業には向かない方法でしょう?よって私個人の意見としては、中国百貨店やショッピングモールに『日本規格のおいしい月餅を製造したら消費者に受ける』などと言われたとしても、商品の味や鮮度で勝負する日本企業は月餅市場に参入するのではなく、通常商品を丁寧に丹精込めて製造し、それをいかに消費者に受け入れてもらうかと努力する方が、向いているような気がします。

  このような事例が常に存在するのが中国市場。手ごわいながらもやはり世界において魅力的な市場であることには変わりありません。よって日本企業はこのような事例が存在するんだと理解することがまず重要。その上で、最善の対策をしていけば良いのです。

  海外市場を相手にする以上『知らなかった』では許されないことも多くあります。海外で成功するためには日本国内市場よりも何倍も人員とセンスと努力、そして柔軟な考え方が必要です。何でもかんでも『日本式』を持ち込もうとする日本企業。日本式を用いるのはそのことがプラスとなる技術や管理のみにとどめ、営業や販売方法はその国の文化を理解した上で、いかにその国にフィットした対応方法を用いるかが成功につながると思います。

  写真は『杏花楼』前に並ぶ人々。最終引換日は6時間程の行列。

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