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中秋節に見る、月餅ビジネス裏事情(1)

日本、中国、韓国などアジア各国では月を鑑賞する文化が古くからあります。中でも仲秋(中秋)の十五夜に月を見るという祭事は中国から日本に伝えられ、平安時代に急激に貴族の間で広まったと言われています。日本では月見団子、中国では月餅を食べながら月を楽しむ風習となっています。今年も中国全土で旧暦の8月15日にあたる9月12日に中秋節のお祝いがありました。風流な中秋節ですが、実は中国では『月餅』ビジネス上でシビアな裏事情があることを日本人はあまり意識していません。日本企業が中国市場で競争する際の理解を深めるためにも例を挙げてみたいと思います。


  近年魅力的なマーケットとして拡大している中国市場。中国の月餅マーケットをターゲットに日本の製菓メーカーもこぞって参入を望んでいます。ある製菓店も日本の地方自治体の後押しもあり、百貨店の食品売場やスーパーの特設コーナーで展示会に出展、コストをかけ精力的な販促活動を行い、試食会のアンケートでも良い評価が得られたものの、実際の商品売上げにはなかなか繋がりません。理由は何でしょう? 実際の月餅事情を知ると、いかに一つの角度からしか中国市場を見ていないかがわかると思います。

  中国では旧暦の8月15日は歴史的な行事。元々は月餅を食べながら月を楽しむとことでしたが、面子や交流を大切にする中国人、現代では自身が食べるというよりも周りの人に月餅を贈ることが習慣となっています。家族づきあいだけではなく、ビジネス上の付き合いでも月餅を贈ることは欠かせません。ひと昔前までは中身の味もさることながら、いかに包装が豪華かつ頑丈か、また賞味期限が長いか、ということが重視されていました、というのもAさんからBさんに、BさんからCさんにと月餅が渡って行くことが一般的だからです。

  また皆が月餅を贈り合う中、通常の月餅では見た目も味にも飽きが来てしまいます。そこで前述のポイント以外にも、いかに味に特徴があり、印象深い月餅を準備するかが重要となってきました。そんな風潮に拍車がかかって一風変わった月餅なども流行り、5年ほど前には月餅ケーキやハーゲンダッツの月餅アイスクリームなどが人気となり、各地に広まりました。

  ここまでで止まっていれば商品アイデア豊富な日本の製菓店にもチャンスは大きかったのですが、更に進化というか合理的というか、何とも言えないシステムが構築されてしまいました。このことを理解している日本企業ビジネスマンはあまり多くないかと思います。

  最近では月餅を贈る代わりに、月餅引換券を相手に渡すことが一般的です。商品券のようなものと理解してもらえれば良いです。贈る方も受け取る方も、その場では荷物にならず、また好きな時に交換できるので、賞味期限も安心というわけです。また受け取った人が更に他の人に贈る場合も現物ではなく引換券で渡す方がスマートです。

  例えば上海でも最も有名な月餅ブランド『杏花楼』は、市内で100を超える場所で引換を行なっていて便利です。また最近では企業職員の福利厚生のひとつとして月餅引換券が提供されることも一般的になり、中秋節の1ヶ月前くらいから至る所で引換券を目にします。このような流れになると、個人ベースでも引換券を多数持っている人も出てきます。政府の幹部や企業の購買担当などがそうですね。これらの人は必要分を引き換えてもまだ券は余ります。捨てるのはもったいなく何とかならないかと考えるのは当然。その場合の解決方法は黄牛(huangniu:日本で言うダフ屋。銀行前にたむろする闇両替業者なども指します)の出番です。黄牛はコンサートのチケットなどの転売などを常時行っていますが、一年のうち最も稼げるビジネスは実はこの月餅の時期なのです。もちろん違法行為ですが、政府もそこまで目くじらを立てません。黄牛はこれらの引換券を処理したい人から券を買い取り、別な需要先に転売して行きます。

  ある月餅ブランドの1箱では

    月餅企業の生産コスト:50元
    月餅企業の引換券販売額:200元
    黄牛買取額:150元(中秋節が近づくにつれ価格も下落しますが)
    黄牛転売額:180元

  上記の計算では1枚あたり30元が黄牛の利益となります。最近では中国でもグルーポン(中国団購)が流行しており、一般価格よりも安く購入することは出来るものの、黄牛と交渉する方が交渉に柔軟性もあり、その場で決済できるということで市民からも支持されています。(つづく

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