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トランプ大統領は北朝鮮問題の行き詰まりを打開できるのか? - 岡崎研究所

 北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の米代表も務めたクリストファー・ヒル(元米国務次官補、元韓国大使)が、Project Syndicateのサイトに1月27日付で掲載された論説において、トランプ政権は政策の優先順位を明確にして現実の脅威になっている北朝鮮の核・ミサイルに焦点を当て早期に対応すべきである、と述べています。要旨、次の通り。

 トランプ政権にとり最も緊急の課題の一つは北朝鮮である。金正恩は新年の辞で北はICBM(大陸間弾道ミサイル)を持っており、ICBMの発射実験をする用意ができていることを明らかにした。これに対してトランプはツイッターに「それは起こさせない」と書いた。トランプが外交上のレッドラインを引こうとしたのか、あるいは単なる予測を述べたのか、北はそんな技術力は持っていないと反論したのかは分からない。

 1980年代以降米国の歴代政権がこの問題に直面してきたが、今回ばかりは脅威が現実のものとなっている。トランプ政権の間に北は大量破壊兵器で米を攻撃する手段を獲得するかもしれない。北はあくまで核兵器とミサイルの実験を続けようとしている。今や失敗も隠そうとはしていない。

 北の動機については、レジームの維持、威信増進、自衛、地域覇権などが議論されてきたが、北の目的を知ること自体は重要ではない。

 良いオプションはなかなかない。問題を無視することはできないし、選挙戦でトランプが示唆したように中国に「外注」することもできない。効果的な戦略のためには、米国のあらゆる形の力、特に外交と中国との協力を使っていくことが必要である。

 北の核排除の戦略には次のことが必要である。まず、米国は日韓との強い関係を維持していくべきである。トランプは日韓との間で貿易や軍事協力などの目的を追求するにあたっては賢明にやっていかねばならない。日韓(特に韓国)は世論の変化に敏感であり、米国は二義的な問題で日韓の不満を起こさないようにしなければならない。

 中国との関係はもっと難しい。中国の懸念を単にレジームチェンジや難民流入問題だと短絡に考えることはできない。中国の一つの重要な考え方は、北の崩壊は中国の核心的利益に関係するとして韓国主導による半島統一は米国との関係で中国を不利にすると考えている。

 統治とは優先順位をつけることである。米中関係はその幅広い目的の中でどの目的が他の目的と比べて一層重要なのかを考えてみることをしてこなかった。中国との貿易の進展が北の脅威の無力化よりも重要なのか。

 トランプ政権にとり重要なことは、アジアでの米国の利益につき明確な評価を行い政策に優先順位をつけることである。新政権が北の核脅威に焦点を当て、早期に対応することを希望する。

出典:Christopher R. Hill,‘Can Trump Manage North Korea?’(Project Syndicate, January 27, 2017)
https://www.project-syndicate.org/commentary/trump-north-korea-nuclear-program-by-christopher-r-hill-2017-01

 上記ヒルの論評には、特に新味はありません。しかし、平凡な論評にならざるを得ないことが却って今日の北の核・ミサイル問題の難しさ、手詰まりを示しています。ヒル自身、良いオプションはなかなかないと正直に述べています。

 政策目的に優先順位をつけることが大事との指摘には同感です。対中経済利益のために北朝鮮に関する対中圧力が犠牲にされてはならないことを示唆しています。トランプ政権に対しては重要な指摘です。同政権には政策目的の優先順位の意識は薄く、すべてが同じ交渉・取引対象であると考えられているような印象を受けるからです。

 金正恩は1月の新年の辞でICBMの発射実験を警告し世界から注目されましたが、実際の行動を見ると、米大統領選挙直前の昨年の10月20日にムスダンを発射して以後は、2月13日の中距離ミサイル実験まで奇妙に挑発を避けていたことが注目されます。予測不可能なトランプ政権の出方を見定めているのでしょう。他方、韓国内政の混乱を見て、挑発は保守の与党側を助け野党側に不利になるのでこれを避ける意図があるとの見方もあります。

北は自信をつけている

 もう一点最近注目されるのは、北が実験の失敗を恐れずに発表するようになっていることです。北が自信をつけていることを示しているのかもしれません。北は失敗をしながら技術を着実に発展させています。

 今後のオプションとしては、①6カ国交渉再開、②米中直接交渉、③軍事ポスチャーの強化、④制裁強化等が考えられます。当面軍事ポスチャーの強化と制裁強化(特に第三者制裁が重要)を検討していくべきと考えられます。しかし、中長期的には、注意深く米朝二国間交渉も検討していくべきではないでしょうか。

 対北交渉に当たっては、何を達成するのかという問題もあります。昨年10月クラッパー米国家情報長官は「北朝鮮を非核化しようという試みは、おそらく見込みはない」と述べ、北朝鮮の核戦力を制限する政策へと方針転換するのが現実的だとの考えを示しました。更に北朝鮮が非核化を行わないのは「(核開発が)生き残るためのチケットだからだ」、「私たちが望むことができるのは(核戦力に)上限を設けることだろう」と主張しました。これらは直截な発言です。

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