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- 2011年10月06日 12:00
南シナ海の戦略的価値 〜2つの大洋をつなぐ海〜
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米海軍大学のライル・ゴールドスタイン(Lyle Goldstein)准教授は、同大学戦略研究部の中国に関する専門家であり、海軍の中国海洋研究所の発起人でもあります。近年は、同じく中国研究の専門家であるアンドリュー・エリクソンなどとも共著を出すなど、名の知れた研究者です。
ところが、彼が7月に発表した「The South China Sea's Georgia Scenario」は、まるで中国共産党の公式声明のような印象を受けるものでした。もちろん、ゴールドスタイン教授の主張がたとえアメリカにとって都合の悪いものであっても、論理的であるならばそれはそれで価値があるのですが、本エッセイには誤認やバイアスが見受けられ、さすがに少し首を傾げざるを得ない内容でした。
このゴールドスタイン教授のエッセイに、米海軍大学の同僚でもあるジェームズ・ホームズが噛みついています(笑
最近、中国に対して何かと挑戦的なベトナムの振る舞いをグルジアに見立てて警鐘を鳴らす、というのであれば理解できますが、南シナ海の重要性を黒海と同列に考えちゃ確かにまずいですよね。まして台湾や東南アジア諸国との関係を絶ち、そこから撤退してもアメリカの世界戦略に影響はない、という見解は、まるで突っ込まれるのを待っているかのような主張です。ホームズ教授は以前より、アメリカの孤立主義的なまでのオフショア・バランスには否定的で(参照)、一定程度の関与をとどめ、地域のコントロールを継続すべきという立場ですから、ゴールドスタイン教授の意見と相容れるものではありません。
アメリカの指導者がゴールドスタイン教授のアドバイスに留意するなら、中国に隣接する取るに足らない東南アジア諸国との関係を断つべきだ、ということになる。また、彼は、「東南アジアの問題は、世界規模のバランスオブパワーにまったく影響しない。ワシントンは得るところなく外交的に後退する危険に瀕する」と主張し、「ブッシュ政権がアメリカの国益にならない問題に関してモスクワとの衝突を回避したように、オバマ政権も東南アジア諸国につなぎとめられるべきではない」と述べている。これはつまり、友好ではあるが「重要ではない」国を支援することへの警告、という意味を持つ。不要なしがらみを断ち、対海賊や対テロを通して海上における中国との関係を築くべきである、というのだ。
しかし、中国が国連海洋法条約を順守し、武力行使を控えるのかどうかは不明瞭である。中国は、南シナ海の一定の海域と空域において「議論の余地のない主権」を繰り返し主張して譲らず、国際公共財としての公海で行われる飛行活動や偵察、軍事的調査活動を禁止しようとしている。
領海とは、沿岸国の基線から12海里までの沖合を指し、沿岸国が完全な管轄権を持つ。国連海洋法条約では、基線から200海里までの海域を排他的経済水域(EEZ)として規定し、海中(漁業資源など)や海底の資源を開発・管理する主権を認めているが、公海を管理することまでは認めていない(注:なにより、すべての国の船舶は、沿岸国の領海内であっても無害航行権(沿岸国の平和や安全を害さない限り自由に航行できる権利)があります)。つまり、海洋国家の権利を侵害しようとする中国に対して、アメリカの抵抗は妥当なものなのだ。
黒海と南シナ海ではまったく異なる力学が働いており、ゴールドスタイン教授のアナロジーは妥当ではない。グルジア紛争になぞらえるのなら、次の条件にあてはまるものでなければならない。(1)アメリカの国益にとって重要でない小国に対し大国が戦おうとしているか、(2)アメリカや国際社会が介入する前に、大国が小国を圧倒するほどの軍事力の格差があるか、(3)米軍の展開が間に合わないほど戦域が遠いところであるか(前方展開基地が不足しているか)、という3点である。南シナ海は、このどれにもあてはまらない。
米海軍大学のライル・ゴールドスタイン(Lyle Goldstein)准教授は、同大学戦略研究部の中国に関する専門家であり、海軍の中国海洋研究所の発起人でもあります。近年は、同じく中国研究の専門家であるアンドリュー・エリクソンなどとも共著を出すなど、名の知れた研究者です。
ところが、彼が7月に発表した「The South China Sea's Georgia Scenario」は、まるで中国共産党の公式声明のような印象を受けるものでした。もちろん、ゴールドスタイン教授の主張がたとえアメリカにとって都合の悪いものであっても、論理的であるならばそれはそれで価値があるのですが、本エッセイには誤認やバイアスが見受けられ、さすがに少し首を傾げざるを得ない内容でした。
このゴールドスタイン教授のエッセイに、米海軍大学の同僚でもあるジェームズ・ホームズが噛みついています(笑
最近、中国に対して何かと挑戦的なベトナムの振る舞いをグルジアに見立てて警鐘を鳴らす、というのであれば理解できますが、南シナ海の重要性を黒海と同列に考えちゃ確かにまずいですよね。まして台湾や東南アジア諸国との関係を絶ち、そこから撤退してもアメリカの世界戦略に影響はない、という見解は、まるで突っ込まれるのを待っているかのような主張です。ホームズ教授は以前より、アメリカの孤立主義的なまでのオフショア・バランスには否定的で(参照)、一定程度の関与をとどめ、地域のコントロールを継続すべきという立場ですから、ゴールドスタイン教授の意見と相容れるものではありません。
South China Sea Is No Black Sea (The Diplomat)ゴールドスタイン教授は、南シナ海と2008年のグルジア紛争(南オセチア紛争)とをリンクさせている。彼の主張によると、「アメリカは、弱小で離れたところにある戦略的には三流で、しかもその領土を欲し、政治的な従属を望む強国に隣接した同盟国(つまり台湾)に、自国の威信を賭けるという愚行をしている」という。さらに、「グルジアに肩入れしたブッシュ政権は、ロシア軍に対して無力で、外交的には明確な敗者だった」と、悲観に満ちた描写をしている。
By James Holmes
アメリカの指導者がゴールドスタイン教授のアドバイスに留意するなら、中国に隣接する取るに足らない東南アジア諸国との関係を断つべきだ、ということになる。また、彼は、「東南アジアの問題は、世界規模のバランスオブパワーにまったく影響しない。ワシントンは得るところなく外交的に後退する危険に瀕する」と主張し、「ブッシュ政権がアメリカの国益にならない問題に関してモスクワとの衝突を回避したように、オバマ政権も東南アジア諸国につなぎとめられるべきではない」と述べている。これはつまり、友好ではあるが「重要ではない」国を支援することへの警告、という意味を持つ。不要なしがらみを断ち、対海賊や対テロを通して海上における中国との関係を築くべきである、というのだ。
しかし、中国が国連海洋法条約を順守し、武力行使を控えるのかどうかは不明瞭である。中国は、南シナ海の一定の海域と空域において「議論の余地のない主権」を繰り返し主張して譲らず、国際公共財としての公海で行われる飛行活動や偵察、軍事的調査活動を禁止しようとしている。
領海とは、沿岸国の基線から12海里までの沖合を指し、沿岸国が完全な管轄権を持つ。国連海洋法条約では、基線から200海里までの海域を排他的経済水域(EEZ)として規定し、海中(漁業資源など)や海底の資源を開発・管理する主権を認めているが、公海を管理することまでは認めていない(注:なにより、すべての国の船舶は、沿岸国の領海内であっても無害航行権(沿岸国の平和や安全を害さない限り自由に航行できる権利)があります)。つまり、海洋国家の権利を侵害しようとする中国に対して、アメリカの抵抗は妥当なものなのだ。
黒海と南シナ海ではまったく異なる力学が働いており、ゴールドスタイン教授のアナロジーは妥当ではない。グルジア紛争になぞらえるのなら、次の条件にあてはまるものでなければならない。(1)アメリカの国益にとって重要でない小国に対し大国が戦おうとしているか、(2)アメリカや国際社会が介入する前に、大国が小国を圧倒するほどの軍事力の格差があるか、(3)米軍の展開が間に合わないほど戦域が遠いところであるか(前方展開基地が不足しているか)、という3点である。南シナ海は、このどれにもあてはまらない。



