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野田首相よ、覚悟はあるのか

野田政権発足からおよそ1か月が過ぎた。報道各社が世論調査を出しているが、野田政権の内閣支持率は、もっとも低い毎日新聞で50%、他はだいたい60%前後となっている。

僕は、この数字を見て、意外に高いと思った。数字が高い理由は、なによりもマスコミがほとんど野田批判をしていないからだろう。世論は、どうしてもマスコミの報道に影響される。そのマスコミが野田政権の批判をしていない。だから、支持率が高いのだ。

では、なぜ野田批判をしないのか。マスコミは、野田さんのことを計りかねているのではないかと僕は思う。つまり、野田さんが本気で何を考えているのか。やる気があるのか、ないのか。中身が空っぽなのか、詰まっているのか。わからないのである。

鳩山さんや菅さんは金魚だった。自分の存在を強く印象付けようとしていろいろ無理をして、頑張ったところがあった。ところが野田さんは、むしろ自分のことを印象付けまいとしているように見える。野田さんは非常に下手(したて)に出ていて、思い切ったことも言わない。鳩山さんや菅さんに比べるとまさに”どじょう”である。国民は、鳩山さんや菅さんに懲りている。だから、野田さんのこのような態度に好感を持ったのではないだろうか。

何にもないから、出しようもないのか、今のところは慎重に出すまいとしているのか、どちらなのか。僕にもわからない。自民党と民主党の幹部の中で、野田さん、僕がいちばん会ったことのない人物だった。まったく関心がなかったと言っていい。おそらく多くの人もほとんど関心がなかったのではないか。民主党でいえば、小沢さん、輿石さん、前原さん、仙谷さん、枝野さんには何度も会っている。ところが野田さんには、2、3回しか会っていない。なにより、野田さんには謀(はかりごと)めいたところも、戦略めいたところも何にもなかった。ところが、そういう人が総理大臣になった。おそらくマスコミでも野田さんをわかっている人は、ほとんどいないのではないか。こんな総理大臣は初めてである。田中角栄さん以降、僕が会ったことのある総理大臣でこんなに関心を持てなかった人物は他にいない。

野田さんのに前は難問ばかりである。まず第三次補正予算ができていない。復興復旧のために11.2兆円の増税が必要だ。だが、民主党の中にも異論がある。これらができるのか。さらに、TPP加盟の問題もある。11月12日にAPECが始まるが、それまでに加盟するかどうか、決断しなければならない。だが、決断できるのか。

それから、普天間の問題をどうするのか。オバマ大統領の発言についていろいろ報じられているが、アメリカは来年が選挙の年だから、どんなに遅くても今年中に移転を決めなければならないだろう。移転先の辺野古についても、日米で合意はしているが、沖縄はまったく合意していない。普天間基地は街中にあり危険だから、移転してほしいと言ったのはそもそも日本側である。自民党政権のときのことであるが、日本が辺野古移転を決め、アメリカはそれを認めただけである。アメリカにしてみれば、「早くしろよ」「何をモタモタしているのか」というところだろう。

これに対して野田さんは、頑張ります、全力投球しますと言っている。だが、何に全力投球するかがわからない。辺野古に移転するために全力投球するのか。辺野古以外のところに持っていくことに全力投球するのか。あるいは、嘉手納統合に全力投球するのか。何を考えているのか、何も言わない。

何かがあって言わないのか、空っぽなのか、わからない。僕は、沖縄に関しては、野田さんは空っぽなのではないかと思う。空っぽの場合、どうなるか。凍結である。結果としては最悪の事態である。

鳩山さんは、「辺野古は絶対にない、県外に持っていく」と言っていた。自民党政権時代には、沖縄県知事も名護市長も合意していた。それを鳩山さんがひっくり返した。ひっくり返したときに、鳩山さんに根拠や思惑があればいいのだが、なんにもなかった。それが、一転して日米合意したのである。そのことで鳩山さんは退陣したのだが、その後を継いだ菅さんは、何もしなかった。だから、沖縄の人は騙されたと思っている。民主党を嫌っているのである。

ヘタをすると野田さんは第二の鳩山さんになるだろう。

いまの日本の政治は、世論に迎合しすぎている。ポピュリズムになりすぎていると僕は思う。たとえば、月曜日の新聞を見ると、復興のための増税に対して反対が強いとある。政権与党のやることには、だいたい世論は反対なのだ。世論とはそういうものである。だから、増税するなら、増税するための根拠を言って、説得しなければならない。

かつて竹下登元首相が僕に言ったことがある。「国民に好かれる政治家になりたいなら野党の政治家になればいい」政権政党の政治家は国民に嫌われる覚悟をしなければならないのである。ところが、自民党は長い間、世論迎合だったから、900兆円以上の借金ができてしまった。普天間の問題もそうである。沖縄の人によく思われたい、沖縄以外の日本人にもよく思われたい、アメリカにもよく思われたい。これでは何もできないだろう。

どじょうが金魚になれないのは構わないことである。だが、どじょうは危なくなるとすぐに土に潜ってしまう。もしかすると、野田さんは、いま潜ってしまっているのではないか。

いま日本の抱えている多くの問題について、野田政権のはっきりとした方向性が見えてこない。日本に必要なのは、国民に嫌われる覚悟を持ったリーダーだ。リーダーが覚悟を持たないと困るのは国民なのである。

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