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アングル:「働き方改革」で残業代減少、政府部内にも消費減退の懸念

[東京 24日 ロイター] - 政府が推進する「働き方改革」の結果、残業代の減少による消費減退への懸念が一部の政府関係者から出ている。プレミアムフライデーも始まり、消費活性化・デフレ脱却につなげようと政府は躍起だが、それには企業が生産性向上やコスト削減分を賃金に還元することが必要になるとの声がエコノミストから出ている。

<残業制限が収入減に、政府内でも議論>

「時間外労働は、一般職の従業員にとっては生活給という一面もあり、それを織り込んだ生活設計を立てている。時間外労働時間の削減は給与減となってしまう」──。

残業時間の上限を巡って政府内で議論が続いていた昨秋の段階で、ロイター企業調査(2016年11月)に回答した企業からは、このような残業時間削減のマイナスを指摘する声が出ていた。

ここにきて、政府関係者の一部から生活費の一部に織り込まれている残業代の削減が、果たして働き手のメリットになり得るのか、という疑問の声も浮上してきた。

政府の「働き方改革実現会議」では、政府案として残業時間の上限を年間720時間(月平均で60時間)とする方向が提示され、企業の中には残業削減に取り組む動きも出てきている。

これに対し、今月15日の経済財政諮問会議では、民間議員の新浪剛史・サントリーホールディングス社長から「働き方改革を進める上で、ともすれば企業は残業代を減らすことを目標としてしまう。残業代の削減が働き方改革の目的となり、それが社員にとってマイナスになっては、元も子もない」と発言した。

民間議員の伊藤元重・学習院大学教授は、30代後半から40代の子育て世代の賃金上昇が相対的に鈍く「長時間労働の削減をこれから進めていくとともに、それによって収入が減らないような仕組みの促進を考えていく必要がある」と指摘した。

<時間外手当、中所得層の17%が生活費に>

毎月勤労統計によると、中小企業よりも大企業における残業代の割合が大きく、給与の11%を占めている(2015年のデータ)。

連合総研が16年10月に実施したアンケート調査では、残業手当を生活の当てにしている人は全体の1割。特に年収600─800万円では17%を占め、主に子育て世代の30代の男性に多いという結果が出た。

こうした実態を踏まえれば、残業時間の制限を進めるだけでは、収入減に直結することは明白だ。味の素<2802.T>のように一律1万円のベースアップを実施するところも出てきたが、まだ、極めて少数だ。

ある製造業の首脳は「残業代のカット分をベースアップの原資にするという発想は、経済界の中では少ない。このままでは、収入減と消費減が連動しかねない」と懸念する。

昨年11月のロイター企業調査では、輸送機械のある企業から「削減は心身衛生上かなりプラスで、中長期的には会社収益にプラスとなる。時間外労働削減で削減できた労務費(残業代)は、そのまま従業員に還元する方向の施策を考えるべき。それにより時間外労働削減の成果が出せる」とのコメントがあった。

政府内にも同じような問題意識が広がりつつあるが、残業手当の削減に対する副作用への対応策を政府として検討していない。

<プレミアムフライデー効果に課題多く>

「働き方改革」のもう一つの目玉である「プレミアムフライデー」。2月最後の金曜日となる24日からスタートし、月末金曜日の早期退社による消費喚起が期待されている。

だが、ある政府関係者は「残業代削減が、かえってプレミアムフライデーに逆行しないか、しっかりチェックする必要がある」と指摘する。

SMBC日興証券は、恩恵が及ぶ就業者が全体の6.5%程度、消費押し上げ効果は最大でも年間635億円と、国内総生産(GDP)ベースの家計消費に対し、0.02%程度にすぎないと試算している。

ロイターの取材に応じたパート勤務の50代の主婦は「混んでいる土日を敬遠して、金曜日に買い物や旅行に行くかもしれないが、単なる消費の前倒しにすぎない」と述べ、支出全体の増額に疑問を持っている。

また、30代の男性(会社員)は「生活費はぎりぎり。妻が教育費ねん出のため、パートに出ている。残業代削減で自分の小遣いも減る」と話す。

夫の収入が1000万円を超える40代の主婦は「配偶者控除の改革で自分のパート収入が控除対象から外れ、実質的に収入減となることの負担感が大きい」と述べ、支出を増やす気にはならないと語った。

「働き方改革」と消費拡大のリンクには「収入減を避ける企業の努力が不可欠」(エコノミスト)との見方が、足元で浮上してきた。

先の政府関係者は「企業が生産性上昇を改善させ、単純な所得減にならず、処遇や雇用がしっかり確保されることを明確にする必要がある」と述べている。

(中川泉 編集:田巻一彦)

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