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トランプの保護主義は本物だ - 岡崎研究所

 1月24日付の英フィナンシャル・タイムズ紙の社説は、トランプ大統領の保護主義は本物であると警告しています。その要旨は次の通りです。

 ほとんどの政治家は「保護主義」を侮辱と捉えているが、トランプ大統領は違う。「保護は大きな繁栄と力に通じる」と就任演説で述べた。NAFTAを交渉し直し、TPPから離脱する。トランプは貿易政策の最も劇的な変更を提案している。

 NAFTAを交渉し直すことで、その全体を崩壊させることなく実質的な変更を図ることは可能であろう。原産地規則を変更し、カナダとメキシコが第三国、特に中国製の部品を米国向け輸出製品に組み込むことをより難しくすることは可能であろう。しかし、メキシコ製品に35%の関税を課すといった過激な行動は困難であろう。仮にNAFTAを無視して、WTOの下での「最恵国待遇」に立ち戻るとしても、関税は35%よりも遥かに低い。そうなると、トランプに残される選択肢は緊急関税の付加だが、それが違法だとWTOからの脱退もあり得る。かくして世界の貿易政策の構造は崩壊する。

 このような行動は米国を含め如何なる国の利益にもならない。サプライ・チェーンは寸断される。コストの上昇と革新の停滞を招く。米国の消費者にとって商品価格が上昇する。農業からサービスまで、米国の輸出は害される。

 トランプは製造業における雇用の減退の原因は貿易にあるとしているが、この現象は恒常的な貿易黒字国を含め広く国際的に見られることである。その主たる要因は技術革新にある。米国に生産拠点を無理やり押し戻すことは米国の労働者ではなくロボットの職を創出することとなろう。

 トランプの貿易政策の輪郭は未だ完全には明らかでない。例えば、トランプは全ての自由貿易協定に反対なのか、多国間の協定にのみ反対なのか、あるいは低賃金国との協定に反対なのか、不明瞭である。しかし、トランプは単に見せ掛けの行動をしているのではない。彼は保護主義が米国をより豊かにすると信じている。問題は、間違いに気付く前にどこまで行くのかにある。

出 典:Financial Times‘Take the US president’s protectionism seriously’(January 24, 2017)
https://www.ft.com/content/442eec40-e227-11e6-9645-c9357a75844a

米国は勝手にやります、悪しからず

 1月20日に挙行されました米国大統領就任式でのトランプ大統領の演説は、「米国は勝手にやります、悪しからず」というものでした。トランプ政権の貿易政策も同様です。「我々の製品を作り、我々の会社を盗み、我々の雇用を奪う他国の猛威から、我々の国境を守らなければならない。保護は大きな繁栄と力に通じる」、「我々はバイ・アメリカン(米国製品を買うこと)とハイヤー・アメリカン(米国人を雇うこと)という単純なルールに従う」と述べました。「バイ・アメリカン」という何十年もの間忘れられていた1960年代の言葉を聞きました。

 政権入りするピーター・ナヴァロとウィルバー・ロスが昨年9月に書いたトランプの経済計画がありますが、「如何なる貿易の取引も、GDPの成長率を高め、貿易赤字を縮減し、米国の製造業のベースを強化するものでなければならない」という「トランプ貿易ドクトリンの原則」を述べています。これまた一昔前の管理貿易の主張の匂いがします。

 諸外国首脳のなかでは、安倍総理がトランプ大統領に意見をいい得る立場にあると思いますが、出過ぎて怒らせる貧乏くじを引くことはありません。周辺に働き掛けるのが常套手段でしょう。

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