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「朝日に勝った」で意気投合、安倍・トランプは問題ないのか〜田原総一朗インタビュー

安倍首相が訪米し、就任まもないトランプ大統領と会談した。渡米前は、トランプ大統領が日本に対して厳しい批判を浴びせてくるのではないかと懸念する声もあったが、終わってみれば、安倍・トランプの親密さを世界にアピールする場となった。今回の首脳会談をどう評価すべきか。田原総一朗さんに聞いた。

AP

貿易や為替の問題が解決したわけではない

今回の安倍・トランプ会談について、日本の新聞・テレビは「大変うまくいった」と評価する報道が多い。だが僕は、問題を先送りしただけだとみている。

たとえば、トランプ大統領が繰り返し主張していた自動車産業の問題。トランプは、日本からアメリカへ自動車を輸出しながら、アメリカから日本へ輸出できないのは不公平だと主張し、是正しないといけないと言っていた。あるいは、日本が中国と同様に、為替相場を操作して円安にして、輸出で稼いでいると批判していた。

また、アメリカがTPPから離脱した影響で、牛肉の関税の高さが問題視されている。アメリカのライバルであるオーストラリアは、日本とEPA(経済連携協定)を結んでいるため、アメリカより約10%低い関税で、日本に牛肉を輸出できるようになっている。その問題も懸念されていた。

ところが、そういう貿易や為替に関する問題は、安倍・トランプ会談で全く出なかった。だから「成功だった」と日本のマスコミは喜んでいるが、今回は、安倍・トランプの関係でケンカをしたくなかったということだろう。

だが、これまでのトランプの主張によれば、これらの問題が解決しなければ、アメリカの経済は好転しないということになっている。つまり、問題の先送りにすぎないわけだ。

「私は朝日に勝った」と誇る安倍首相

では、なぜトランプは問題を先送りにしたのか。

そういう観点からみて、面白い記事が2月11日の産経新聞に掲載された。<「私は朝日に勝った」「俺もだ」>という見出しで、安倍・トランプの関係を考察した記事である。引用すると、次のような内容だ。

大統領選で日本に対しても厳しい発言を繰り返してきたトランプが、これほど安倍を厚遇するのはなぜか。実は伏線があった。

昨年11月の米ニューヨークのトランプタワーでの初会談で、軽くゴルフ談議をした後、安倍はこう切り出した。

「実はあなたと私には共通点がある」

怪訝な顔をするトランプを横目に安倍は続けた。

「あなたはニューヨーク・タイムズ(NYT)に徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った…」

これを聞いたトランプは右手の親指を突き立ててこう言った。

「俺も勝った!」

トランプの警戒心はここで吹っ飛んだと思われる。トランプタワーでの初会談は90分間に及んだ。

要するに、産経は、このときの安倍首相の発言で、トランプが気を良くしたのではないかと書いているわけだ。

言われてみれば、安倍・トランプはよく似ている。

安倍首相は朝日に代表されるリベラル系勢力に勝ったと言い、一方のトランプ大統領もNYTに代表されるアメリカのマスメディアとケンカして勝ったと言っている。

アメリカに文句が言えない日本

両者の共通性は、たとえば、イスラム圏の国民の入国規制に対する姿勢に現れている。

トランプ大統領は、イスラム系の移民や難民たちがアメリカに入国するのを阻止しようとした。特にイラク、イランなど7カ国については、アメリカのビザを持っていても入国させないと、大統領令で指示した。

しかしアメリカの裁判所は、トランプの大統領令が憲法違反だとして効力を差し止めた。ヨーロッパ各国のリーダーたちも、トランプの姿勢を強く批判している。

その中で、安倍首相だけは「自分はこの問題にコメントする立場にない」と明言を避けている。つまり、世界の先進国のリーダーで、安倍首相だけはトランプを批判していない。

なぜ、安倍首相はトランプを批判しないのか。

一つには、移民問題について、日本が世界の先進国のなかでズバ抜けて消極的だという点がある。堺屋太一さん(元通産官僚、作家)に言わせると、「トランプは日本を見習っているのではないか」というわけだ。日本は移民政策に非常に消極的なので、トランプ批判ができないという面がある。

もう一つは、安全保障で日本が置かれている立場がある。要するに、安全保障でアメリカに依存しているため、アメリカに強いことは言えないのだ。

もし自民党政権ではなく民進党政権だったとしても、民進党の首相がトランプを批判できるのかといえば、やっぱり批判できないのではないか。ここは日本の深刻な問題だと思う。

いずれにしても、「朝日に勝った」「ニューヨークタイムズに勝った」ということで、安倍・トランプはいまのところ仲良くやっているようだが、日米の間に横たわれる問題を考えれば、そう楽観してばかりもいられないはずだ。

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