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「自己愛性パーソナリティ障害」という診断の意味を考える

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www3.nhk.or.jp  
 
 相模原市で起こった障碍者殺傷事件の、容疑者の精神鑑定が終わった。その診断名は「自己愛性パーソナリティ障害など」であると報道された。
 
 リンク先にもあるように、「自己愛性パーソナリティ障害とは、他者の都合を度外視し、周囲からの称賛を求めたり、みずからを特別な存在だと過度に考えたりすることを特徴とする」。それに関連して、自尊心が脆く、自分が軽視されたと感じると激怒や抑うつに陥りやすい。
 
 では、自己愛性パーソナリティ障害と診断することに、どのような意義があるだろうか。
 
 重大事件の精神鑑定に関して言えば、責任能力の有無を見極めるうえで、自己愛性パーソナリティ障害という診断名は小さくない意義を持つ。つまり、急性期の統合失調症や双極性障害*1のような重度の精神病性障害ではなく、また重度の発達障害にも該当しないのだから、責任能力に問題は無い、ということになる。
 
 この診断名には、私も疑問を感じない。報道されている情報と矛盾するものではないし、そもそも、専門家が時間をかけて鑑定した結果だからだ。この鑑定結果を踏まえて、裁判は粛々と進んでいくだろう。
 

「自己愛性パーソナリティ障害と診断すること」の曖昧さ

 その一方で、私は、自己愛性パーソナリティ障害という診断名の存在意義とはなんだろうか? と改めて疑問を感じた。
 
 ひとことでパーソナリティ障害といっても色々なものがあり、妄想性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害などは、精神医療の現場との関わりが大きい。なかでも、境界性パーソナリティ障害は患者さんの数も多く、社会的な影響も甚だしく、それでいて自殺や事故を防げれば存外に予後が良い疾患であるためか、積極的に研究が行われ、あれこれの心理療法的アプローチが実施されている*2
 
 かつて、境界性パーソナリティ障害という病名は、家族や医療関係者を振り回し、衝動的で、こらえ性が無く、自殺未遂やかんしゃくを繰り返す患者さんにレッテルのごとく付けられていた。しかし、21世紀に入って双極性障害や発達障害の診断頻度が高くなったためか、最近は「まさに教科書どおりの、境界性パーソナリティ障害としか言いようのない」患者さんだけが診断されるようになった。それだけに、わざわざ境界性パーソナリティ障害と診断し、相応の治療的対処を試みる意義がくっきりしたと言えよう。
 
 では、自己愛性パーソナリティ障害はどうだろうか。
 
 自己愛性パーソナリティ障害が臨床現場で診断されることは、それほど多くはない。控えめに言っても、この診断名を積極的につけたがる精神科医は少ない。私が見知っている限りでは、境界性パーソナリティ障害と診断された患者さんを現在進行形で診ていない精神科医はあまりいないだろうが、自己愛性パーソナリティ障害と診断された患者さんを現在進行形で診ていない精神科医なら、ごまんといるだろう。
 
 その一方で、自己愛性パーソナリティ障害は全人口の1~6%が該当するという統計も存在する。だとしたら、なぜ、精神科医は自己愛性パーソナリティ障害という診断名で患者さんを診ようとしないのか?
 
1.理由のひとつは、そういう患者さんには他に治すべき(そして治療的な対処が可能な)精神疾患が存在するからである。
 
 自己愛性パーソナリティ障害に該当する患者さんが、自分の性格を治したいと望んで医療機関を受診することはまず無い。ほとんどの場合、うつ病や適応障害といったほかの精神疾患に陥った時に受診し、早急な治療的対処を求めている。そのような患者さんに関して、精神科医同士のカンファレンスで性格傾向が議論されることは珍しくないが、“メインの病名として”自己愛性パーソナリティ障害と診断することはあまり無い。
  
2.理由のもうひとつは、自己愛性パーソナリティ障害への治療的対処の方法論が乏しいことである。
 
 さきに挙げた境界性パーソナリティ障害に関しては、治療的対処について多くのことが語られ、研究もされている。精神医学のスタンダードな教科書『カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開 第3版』では、境界性パーソナリティ障害の治療についてほぼ丸々1ページが費やされている。
 
 対して、自己愛性パーソナリティ障害の治療的対処については、ほんの少しのことしか書かれていない。短いので抜粋すると、

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