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対立関係にある「イノベーター」と「生活者」:不寛容の本質

東京工業大学の西田亮介さんの新著「不寛容の本質 なぜ若者を理解できないのか、なぜ年長者を許せないのか (経済界新書)」を読了。

本書の基本的なフレームは、「昭和」時代の事実と現代の乖離。そして現代と「昭和」への羨望をくみ上げていく。そこにあるのは、あの(よかった)頃の時代を通じて、いまの事実とは異なる感覚や価値観をもったひとたちが、昭和の時代を知らないいまの事実で生きるひとたちを観る。それが不寛容という形で表出してしまっていることを多面的に、客観データに基づいて進めていく。

ただ、そこにひとつ、現代を生きるひとたちにあるあの(よかったと思われる)時代への羨望というものも存在していることを提起している。

この不寛容の一端として挙げている事例が、西田さんの研究に紐づいた「豊かさ」「政治」「イノベーター」「少年院」、そして「高等教育」だ。何を切り口にするのかは著者次第であるが、幅広いテーマを追う西田さんらしい。

読みやすい新書なのであまり書き過ぎないよう、僕が一番興味深く感じたのが、「対立関係にある『イノベーター』と『生活者』」の部分だ。

映画「シン・ゴジラ」から、政治的文脈で活用される「イノベーション」「中小企業基本法」に触れつつ、本書での「イノベーター」としてライブドア創業社長の堀江貴文さんや、認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹さんを挙げる。比較的「イノベーター」という文脈で思い当たる人選ではないだろうか。

当該部分は、以下の文章で始まる。

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 今後、ますまる日本における「イノベーター」と「生活者」の関係は利益相反になっていく。彼らにとっては国の財政破綻は懸念事項であり、同時に母国の格を下げることにもなるだけに、ともすれば緊縮財政を主張する。財源があれば、現在の直近の社会に偏在する困難の改善よりも、「未来への投資」を望むことだろう。

 また堀江貴文や新経連を例に挙げるまでもなく、「イノベーター」たちは規制緩和がその主張の中心にある。まるである種の信仰のように。

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これに対して、生活者にとっては「未来への投資」よりも、「今日の生活」の防衛が主であり、「生活保守」が重要であると位置づける。

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 「生活者」にとっての合理性からすれば、公共投資の増額、規制の強化を志向し、また財源があるならばあらゆる世代における社会保障の改善を望むはずだ。

 驚くほどに「イノベーター」と「生活者」両者の潜在的な利害が合致しない局面を迎えつつあることに気づく。

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もちろん、実際にすべての「イノベーター」と「生活者」が完全に断絶しているわけもなく、個々人で見れば、その主張も混在しているだろう。だからこそここでは”潜在的な利害”という言葉で締めくくったものと思われる。

全体的には年長世代(在りし日の昭和)と若年世代(羨望の昭和)という世代論を語る書籍に見られるが、読後感としては、確かに生きてきた時代の影響は色濃く残りながらも、案外、個々人の相違が、実際のファクトやデータを越えて、価値観となって他者と関わる(インターネットのみ、匿名的なかかわりを含む)ことによって、どこかで不寛容性が育まれ、その誤解とかい離が埋まるどころか増長された結果として、その不寛容性が深まってしまうことを示唆しているのではないだろうか。

そうであるとするならば、その不寛容を寛容にするためには、丁寧にして客観的、包摂的な対話を気づいたひとから少しずつ地道に行っていくしかないのかもしれない。

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