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産地偽装米騒動第2ラウンド-JA京都・米卸会社による反撃開始

2月14日のエントリー「マスコミ単独のスクープ記事から『企業不祥事』は生まれるか?」におきまして、産地偽装米を流通させているとして報じられた京都の米卸会社に関連する週刊ダイヤモンド誌の単独スクープ記事を取り上げました。本日発売の週刊ダイヤモンド誌(2月25日号)では、続報記事が掲載されておりまして、どんな新たな事実が報じられているのだろうかと期待しておりましたが、先行するWEBニュースで報じられた内容以外に、あまり新たな事実は掲載されていませんでした。「ついに行政検査に発展!」との見出しですが、そもそもダイヤモンド誌による告発は2月13日であり、行政調査はその前の2月10日なので、前号発売の時点で予定されていた記事といえそうです。

また、前回エントリーでも述べたとおり、単独誌によるスクープ記事というのは、なかなか後追いしてくれるマスコミが登場しないケースが多く、これまでいくつかのテレビニュースでは取り上げられましたが、他紙記者による取材によって新たな事実が判明した、ということは報じられていません。通常、このような行政検査が行われますと、多くの社会部(ぶらさがり)記者の方々が検査から判明した事実を(行政官からコソッと聴取をして)取り上げるのですが、そのような気配もないようです。

一方、京都の米卸会社及びその親会社であるJA京都中央会は「報じられているような大量の中国米が混入することなどありえない、週刊ダイヤモンド誌と当該記者を謝罪広告等を求めて民事賠償請求訴訟を提起した」とリリース(HPでのリリースからみると刑事告訴の準備もしている模様)。2月16日には産地偽装騒動特設HPをJA京都中央会HP内に新設し、連日の自主調査の結果を報告しています(なお、調査にあたっている農協監査士10名の名前も実名で公表しています)。

本日(2月20日)は複数のテレビ局を通じて、JA京都中央会が自主調査の様子を一般公開して、自主調査の公正性・透明性を訴えています(たとえばこちらのニュース等)。公平な立場で考えると、米卸会社・JA京都中央会側が一気に反攻に転じた形です。農水省による調査は続いている状況なので、今後どのような展開になるのかは不明ですが、「同位体研究所」における調査分析の信用性を含めて、真偽が明確になるまではかなりの時間を要することが予想されます(もちろん、内部告発や内部通報といった情報が駆け巡る事態となれば事件の急展開も考えられますが)。

私がこの話題に関心を寄せる理由は、なんといっても本事件の顛末が公益通報者保護法の改正問題にも影響を及ぼすのではないかと考えるからです。大手マスコミは同法における公益通報先である「第三者」の典型です。マスコミによる報道が不正事実発覚の端緒となることが想定されるわけですが、しかし公益通報に十分な証拠が存在しない場合には、被通報事業者は「風評」によって多大な社会的信用毀損に陥ります(おそらく、マスコミは記事内容の真実相当性を担保する資料に基づいて報道した、と主張することで敗訴することはないと思いますが、事業者側は名誉回復行為だけでは到底社会的信用を回復することはできません)。国民が「安全よりも安心」を選択する時代となったため、いったん風評被害に遭った事業者はなかなか立ち直れないというのが現実です。

公益通報者保護法の改正審議の中では、通報者の「正義」ばかりに光が当たりますが、その「正義」保護の裏で、回復しがたい風評被害に泣く事業者(およびそこで働く社員・家族)を作り上げるリスクがあります。今回のダイヤモンド誌の単独スクープも、内部告発者によるスクープでは起こりうる事態であり、これがスパッと不正発覚につながればよいのですが、このまま事件が長期化し、結局シロだったとされ、もしくはグレーのままうやむやになってしまえば、「ほら、やっぱり公益通報者保護法の改正は人権上危険ではないか」と指摘を受け、法改正見送りの立法事実として引用されてしまうことになりかねません。私は双方とも利害関係がなく、極力公平な第三者としての視点で事件を見守るつもりですが、「出てほしい」結果を抱けば「予断」を招きかねません。今後報じられるマスコミからの報道においても、極力「認識」ではなく「事実」に焦点を当てて検証してみたいと考えています。

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