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調査報道メディア「ワセダクロニクル」編集長に聞く (下)

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ワセダクロニクル 渡辺周編集長©Japan In-depth編集部

■誰かを糾弾するのではなく全体像を見せたい

安倍:評判はどうですか?新聞記事にもなったし、ネット上でも面白いっていうコメント結構多いですけど。感想とかきていますか?

渡辺:ありがたい感想が予想以上に多くて。

安倍:取材も殺到してます?

渡辺:結構多いですね。

安倍:逆にクリティカルな意見とかはありました?

渡辺:そんなには。あったとしてもだいたい当然我々も想定した上でやっていることなので。先ほどの抗議もそうですけど。抗議が来たからと言ってなんか中身が新しいことはなくて。それは我々の事前のやり取りで言っていることをまた同じことが来ているだけで。

共同は、社としては抗議しているわけですけど、現場レベルでおかしいんじゃないか、という声も上がっているようなので。組合とか。そこはそれこそ自浄作用に期待したいですね。だからあんまりもうそこが主眼ではないので我々は。

誰か一人どこかに悪い人がいて、その人を糾弾すれば終わるという話ではなく、やっぱりスポンサーがあって電通があって子会社があって、共同の子会社があって社団法人があって。一連の中で、ポンとここからお金を投入するとそのシステムを通ると出てくる金に紐づいた記事が出てくる、と。それぞれの段階でみんな担当者は自分の仕事をしているだけなのかもしれない。もちろん今回取材をした中で、社団の人も後ろめたかったとか、こういうことはない方がいいとか言っているわけですよね。

そういうただシステムの中の歯車の一つにいるだけ、それを全部自分が背負っているわけではなくて、だってあいつから頼まれたから仕事だと。そういう中で、なんか極悪人がどっかにいるというわけではなく、システムの中の歯車となってそれぞれがだんだん感覚がマヒしていってですね、やっているうちに、読者がそういう記事を読まされてしまうと。

だから構造とかシステムにちゃんとメスを入れないとやっぱりダメで。だから2回目の続報というのはやっぱり全体を見せたいと。だから一番最初に推進フォーラムがあって、そこに医者が看板使って、投入部から見えるように。点でとらえるのではなくて。

安倍:全体像をね。

渡辺:全体像。だからシステムにメスを入れてシステムを解体しないと同じ事はまた何回でも起こるので。だから犯人捜しみたいに、確かに行為をするのは人だけれども、誰かひとりあげつらってお前のせいだと言っているのは、ちょっとそれはピントがずれていますよね。

安倍:せっかく今、広告主とインターネットメディアでルールができつつあるのに、伝統メディアがそもそも自浄作用を効かせてないというのは残念な話ですよね。

渡辺:そうなんですよ。それと第一報でも書きましたけど、やっぱりかなり前からやっているっていうことですよね。こんなにネット上でステマが問題、といわれるもっと前からあったと。これから続報で今後報じていきますけども、相当根深いですよね。

■今はウェブメディアの過渡期

安倍:こういう調査報道に特化したメディアはあるんですかね日本に?

渡辺:どうかな、ちょっとぱっと思いつかないですよね。目指しているところはあるんじゃないかと思うんですけど。

安倍:インターネットのいいところって写真でも動画でも文字でもいくらでも載せられるじゃないですか。制限ないじゃないですか。

渡辺:それはもう圧倒的ですよね。何がいいって、動画載せられるのもいいんですけど、今回思ったのは、脚注を思う存分載せられるというのがあって。あれはずっとやりたかったんですよね。新聞でやろうと思うととてもじゃないけど(紙面が)足らないので。あれはすごくいい。要するに何を根拠に我々がそれをいっているのかっていうのをきちんと明示することができる。あれは定着させたいなと思っているんです。

安倍:伝統メディア、特に新聞ご出身だと思うんですけど。将来性あると思いますか?

渡辺:出た人が言うのは申し訳ないんですけど、どうかな、一般的に言えばそれは厳しいですよね。これは数字にも示されているように。ただ甘いのかもしれないけど、あれだけの人員を抱えて情報インフラをもって、あれだけ全国津々浦々、全国紙の場合ですよ、テレビ局の場合はネットワークですよね。そういうメディアってそんなに世界にないんじゃないかって。

確かに結構引き算の毎日なので戦々恐々というところがあると思うんですけど一方で、コップの水じゃないですけど、まだ半分あると思うんです。もう半分しかないと思うのもあると思うんですけど。あれだけの訓練を受けた記者を自前で抱えているところはそうないと思うんですよね。だからやりようによっては十分いろんな道があるんじゃないかなと。

やっぱりこうなってくるとプロとしての仕事ができるかどうかというのが一番の分かれ目だと思うんですよね。これだけ情報が誰でも発信できて、ポストトゥルースとか言われている時に、本当にプロの仕事が求められていて、その訓練を受けたプロの人たちをどれくらい抱えているかというのは結構強いと思うんですよね。僕は社長じゃないのでいくら言っても辞めちゃったんであれですけど。

安倍:先ほど伝統メディアから人がけっこう動いているっておっしゃいましたけど、まだまだ数としては微々たるものじゃないですか。もっと流動性が高まってきて、こっちの世界にもきて、ちゃんと食べていけるような感じにこの2年くらいでなっていけばいいなと思っているんですけども。そういう意味では伝統メディアに期待しつつも我々インターネットメディアがもっとどんどん力をつけていくことが必要だと思うんですよね。

渡辺:そうですね。過渡期ですね。

安倍:それは間違いないですね。第二弾第三弾、楽しみにしています。

渡辺:ありがとうございます。

(了。(上)の続き。全2回。このインタビューは編集長安倍宏行、編集部坪井映里香が2017年2月11日に実施したものです。)

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