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オタクは害悪か、それとも救いの神か

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さて、前者の「オタクが迷惑をかけるに違いない」が偏見なら、後者の「オタクが行けば業界が潤う」というのも偏見である。として、前者の偏見は悪くとも、後者の偏見は問題ないのでは? と思う人がいるかもしれない。しかし、僕は後者の偏見も前者の偏見とは別種の問題を孕む、悪い偏見であると考えている。

以前に僕は、熊本県南部を走る「くま川鉄道」の特別応援切符の問題を論じた。(*6)

この時にエロゲキャラクターの切符の販売を中止した人吉市の決定を批判する人達の一部が主張していたのが「切符を発売しなければくま鉄は滅びる」とか「切符の販売を止めた人吉市は、くま鉄を廃線にしたいに違いない」というものである。

鉄道は交通網であり、その交通網の利用はその地に暮らす人達の動態によって変化する。そうした変化の中で、交通網が不要になれば廃れるのは仕方のないことであると言えよう。赤字路線であればいずれは配線になってもおかしくないし、一方で必要な路線であれば、震災で一時的に収入が減ったとしても、いずれ盛り返すであろう。

そうした中で、こうした「応援切符」は一時的に鉄道を支える収入にはなっても、それは交通網そのものの要不要を決定できるものではないはずだ。くま鉄の特別応援切符中止問題に対する一部のオタクの過剰反応は、そうした地元の決定を飛び越え、さもオタクがその要不要を決定できるかのような傲慢さを露呈してしまっていたと、僕は見ている。

すなわち「オタクが行けば、関心を持てば業界が潤う」という偏見は、その対として「オタクを拒否すれば業界は滅びるぞ!」という呪いや脅迫を包有しているのである。

だから僕は、けものフレンズで動物園に関心を持つ人が増えることはいいことであるとしか考えていない。それで何か特別な悪いことが起きるとも、特別ないいことが起きるとも考えていない。

趣味と社会の距離というのは、そのくらいの関係性が一番幸福であると僕は考えている。オタク的関心だからといって無下に拒否されるのは当然嫌だが、一方でオタクが産業を盛り上げるとか、救世主になるかのように期待されるのも嫌である。趣味はそうした産業側の理屈に縛られないからこそ「たーのしー!」と言えるのである。

*1:けものフレンズプロジェクト|公式サイト
*2:けものフレンズ(Google トレンド)
*3:【ネクソン決算説明会①】TVアニメ『けものフレンズ』が人気だがアプリ版のサービス再開の可能性を否定、新作も予定なし(Social Game Info)
*4:上野動物園入場者数記録(上野動物園の達人)
*5:入園者数の状況(平成27年4月~平成28年3月)(公益財団法人東京動物園協会)
*6:表現の自由を訴えるよりは、まっとうな説明が先(BLOGOS 赤木智弘)

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