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【読書感想】ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か

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 著者は「ポピュリズムの3つの問題点」を挙げています。

 第一に、ポピュリズムは、「人民」の意思を重視する一方、権力分立、抑制を均衡といった立憲主義の原則を軽視する傾向がある。立憲主義において重要な手続きや制度は、人民の意志の実現を阻害するものとして批判される。特にそこで問題となるのは、多数派原則を重視するあまり、弱者やマイノリティの権利が無視されることである。

 第二に、ポピュリズムには敵と味方を峻別する発想が強いことから、政治的な対立や紛争が急進化する危険がある。ポピュリズム対アンチ・ポピュリズムといった新たな亀裂が生まれたり、絶えざる政治闘争のなかで、妥協や合意が困難となるおそれがある。

 第三に、ポピュリズムは人民の意思の発露、特に投票によって一挙に決することを重視するあまり、政党や議会といった団体・制度や、司法機関などの非政治的期間の権限を制約し、「良き統治」を妨げる危険がある。

 このようにポピュリズムは、人々の参加と包摂を促す一方、権限の集中を図ることで、制度や手続きを軽視し、少数派に抑圧的に作用する可能性がある。ポピュリズムとデモクラシーの関係は、両義的といわざるをえない。

 ポピュリズムそのものが悪というよりは、ポピュリズムによって決められることは、極端なものになりやすく、少数派を抑圧することが多い、というのが「問題点」なんですね。

 世界の多くの国では「民主主義」が信奉されているけれど、堅実的には「選良(エリート)」たちが、バランスをとって政治を動かしている。

 現代は、そのエリート層たちが、自分たちの利益のためにのみ動いているのではないか、と多くの人が感じているのです。

 著者は「野党としてのポピュリズム政党の存在は、排除されてきた社会集団の参加を促し、かつ既成政党に緊張感を与えることで、デモクラシーの質を高める方向に作用する、というミュデとカルトワッセルの説も紹介しています。

 たしかに、「そういう面」はあるのだと思います。

 「ポピュリズム」政党には、ナチズムの復活を企図しているような「極右」のイメージもあるのですが、現在はそういう「暴力行為を正当化するような極右政党」は淘汰されているそうです。

 現代のポピュリズムは、「リベラル」や「デモクラシー」といった現代デモクラシーの基本的な価値を承認し、むしろそれを援用して排除の論理を正当化する、という論法をとる。すなわち、政教分離や男女平等、個人の自立といった「リベラル」な価値に基づき、「政教一致を主張するイスラム」「男女平等を認めないイスラム」「個人の自由を認めないイスラム」を批判する。そしてエリート支配への批判、民衆の直接参加といった「デモクラシー」の論理に基づき、国投票や住民投票に訴え、既成政治の打破を訴えるのである。

 そうだとすれば、現代デモクラシーが依拠してきた、「リベラル」かつ「デモクラシー」の論理をもってポピュリズムに対抗することは、実はきわめて困難な作業ではないか。「リベラル」や「デモクラシー」の論理を突きつめれば突きつめるほど、「政教分離」「男女平等」に基づき反イスラムを訴えるポピュリズム、「真のデモクラシー」を訴えて国民投票・住民投票で少数派排除やEU脱退を決しようとするポピュリズムの主張を、正統化することになるからである。

 「宗教による差別」は許されないというのが「守るべき理念」のはずです。

 しかしながら、「では、その宗教を信奉する人たちが、信仰に基づき、女性の服装を制限したり、斬首刑を行ったりすることを認めるのか?」と問われた場合、どう答えるべきなのか。

 「それは人権に反するから、やめてくれ」と言いたくても、相手にもそれを正しいこととしている「宗教上の理由」がある。

 「イスラム教を信じていても構わないから、政教一致をやめて、男女を平等にしてくれ」と言われても、「じゃあやめます」というわけには、いきませんよね……

 こういうふうに、「理論武装」されてしまうと、その考えは間違っている、と否定するのは難しいはずです。

 「ポピュリズム」をバカにして、まともに向き合おうとしない人たちこそ、もう一度、「なぜ、今こんなに世界中で『ポピュリズム政党』が支持を集めているのか?」と考えてみたほうが良いと思うのです。

 これは、もしかしたら、「民主主義の原点への回帰」なのかもしれません。

 しかし、そうであるならば、「より純粋な民主主義」というのは、人類を幸福にはしないのかもしれない、と考えずにはいられません。

 「ポピュリズムなんて、説明されなくても知ってるよ」という人にこそ、一度読んでみていただきたい新書です。

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