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「トランプ大統領に中国と戦う余力はない」櫻井よしこ氏語る

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2017年1月21日、内外ニュース主催の櫻井よしこ氏(ジャーナリスト・公益財団法人 国家基本問題研究所理事長)講演会が都内ホテルで開かれ、トランプ大統領就任が世界に及ぼす影響について語った。【田野幸伸(編集部)】

BLOGOS編集部

EUがバラバラになっていく

ヨーロッパではイギリスのメイ首相が、EUからの強硬な離脱というものを打ち出しました。EUと同じ市場ではなく、単一市場でいいんだと。これにより、株価がウンと下がったこともありましたけれども、この事から分かるように、イギリスの強硬路線というのは、必ずしも良い方向に結果を導くものではないであろうという風に思います。

トランプさんはイギリスのメディアの取材に答えていいましたね。「メイ首相のやっていることは、とてもいいことなんだ。EUなんていうのは、時代遅れの組織で、あんなところに留まっている必要がないんだ」と。

そして質問に対して、「そんなことを言えばEUがバラバラになるんじゃないか?」と言ったら、なんと言いましたか。「そんなことは、俺の知ったこっちゃない」と言ったんですね。自分の知ったこっちゃない。バラバラになっても構わない。こんなことを歴代のいかなる大統領が言いうるのか。そういう人物が私達の前にいます。

実際に今年、ヨーロッパで起きることは、EUが分離していく方向。強い遠心力が働く方向に動くと言わざるを得ませんね。フランスの大統領選挙が行われます。国民戦線のマリーヌ・ル・ペンさん。彼女が大統領になる可能性があるかどうかは、まだ分かりませんが、恐らく今、2番手ぐらいに付けているわけですね。

彼女の勢力がかなり拡大されるだろうということは予想出来ますね。彼女の抱えていることは「脱EU」「反難民・反移民」であります。もっともっと我々はフランス人らしく生きたい。フランス語を大事にしたい。フランスの文化・文明・価値観を大事にしたい。

あのEU本部があるのはベルギーのブリュッセル。EUの官僚たちの言うことによって、フランスの国内政治をこうしろああしろなどと言われたくない。これが彼女の言っていること。

これはイギリスが言ったことと全く同じです。イギリス人がイギリスの政治をやるんだ。なんでEU本部の司令に従わなきゃいけないんだ。もう難民はゴメンだ。我々だけでやると言ったのがイギリスでありますが、フランスでも同じようなことが起きる可能性があります。

ドイツも同じです。ドイツのための選択肢。これも女性党首でありますけども、ここが勢力を伸ばして、メルケルさんが再選されるかどうかも含めて分からないだろうと私は思っています。

その他のヨーロッパの国々を見ていると、みんな雨後の筍のように、右翼政党、右翼勢力が力を伸ばしていて、彼らがみんな言っているのは「もうEUはいい」ってことですよね。そうすると、EUがバラバラになっていく。

その延長線上で、NATOはどうなるのかということですね。NATOもEUも旧ソビエトに関する脅威から生まれた。第一次世界大戦のようなひどいことにならないように、みんなで一緒に協力しようという思想を背景に、ロシア、ソビエトの脅威を念頭において作られた政治経済の枠組みがEUだった。軍事の枠組みがNATOだった。

この2つ共に、遠心力が今働いているわけですね。一番喜ぶのは、プーチン大統領であります。EU=ヨーロッパ諸国の分散していく様というのは、アメリカのヨーロッパに対する影響力の弱体化そのものだろうと私は思います。

EUとヨーロッパとアメリカを繋いでいた、一番強い絆はイギリスだったわけですよね。イギリスは第一次世界大戦以降、常にどんな戦争でもたった1つの例外を除いて、アメリカと一緒に戦った国です。

たった1つの例外というのは、ベトナム戦争。ここにイギリスは入りませんでしたけれども、その他の戦争はことごとくイギリスはアメリカの助っ人をした。一緒に戦った。

この忠実なる同盟国が弱体化して、ヨーロッパの大流になっていって、さらにスコットランドなどが独立するようなことになれば、国土の3分の1を失い、北海油田も失う。

国内で唯一、空母を収容する事のできる軍港も失い、弱体化していくわけですよね。当然、アメリカの影響力もそこで小さくなっていくと言う風に思われます。

でも、トランプさんは「それでも良い」と言っているわけですよね。じゃあトランプさんが、中東に重きを置いた動きをすると、中東、そしてヨーロッパが色々な意味で影響を受けます。

BLOGOS編集部

彼は2番目に重要度の高いものとして上げているのが、イスラム国。テロリスト勢力との戦いでありますね。そしてその次に、中国などが来ているわけですね。

彼の閣僚の言っている事を見ても、この順位は中東をロシアと置き換えると大体変わらない。ティラーソン(国務長官)にしても、マティス(国防長官)にしても、一番の脅威はロシアだと言っていますね。

そしてテロリスト勢力が来る。中国が来るという風に言っています。私はそのような順番で行くと、いかなる大国といえども、二正面作戦はなかなか出来ないわけですね。

トランプさんは、まず中東にかまけていくでしょう。そして、イスラム国などとの対決にかまけていくでしょう。それだけでも、手一杯過ぎるぐらい手一杯になるんじゃないかと。中東が混乱した時の困難性というのは、みなさん十分に予想できると思います。

その他に、中国と渡り合う余力があるのかと言えば、ないんだろうと思わざるをえないですよね。ただ、中国に対しては強硬派が閣内に揃っていることは確かですよね。

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