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絵の上手さと漫画の上手さ

最近、絵のことを褒められる機会が度々あるが、妙に複雑な感覚が襲ってきて、あまり嬉しいと思わない。 

「東大一直線」でデビューしたとき、「日本一絵がヘタな漫画家」とか「インクのシミ」とか言われたが、一方で「この絵がいい」とか「ピカソみたいでいい」とか言う人もいた。 

人は絵がリアルに近づけば上手いと言う傾向がある。
デッサンが出来たものすごい画力の漫画家は最近多い。
いや、画力のある、上手い漫画家ばかりになってきて、漫画誌は衰退に向かっている。 

最近の漫画誌は「女子読者」に支えられている。
女子は「きれい」な絵が好きなのだ。
これが漫画家にとっては恐ろしい罠だと思う。 

昔の「少年ジャンプ」は一流漫画を小学館や講談社に独占されて、新人を大胆に起用したため、絵のヘタな漫画家ばっかりだった。
だが、その絵のヘタさ加減の中に、強烈な個性があったから、子供たちは、そこに反応したのである。 

わしは漫画の絵の上手さは、画力の達者さとは、違うんではないかと思っている。
画力の達者さでは、プロの画家にはかなわない。 

岡本太郎が言っていたが、「きれい」と「美しい」は違うというのが、わしの感覚に一番近い。 

こういう話を一般人にしてもしょうがない。
「笑えた」「興奮した」「面白かった」「このキャラが好き」というような漠然とした読者の感想が一番うれしい。 

絵が上手いと言われるようになったら要注意。
いかにデフォルメするか?
いかに勢いで描くか?
いかに毒を注入するか?
そう心がけていなければ、堕落してしまうと自覚していなければならない。

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