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覚せい剤流通の変化|世界ATSアセスメント2

9月13日、国連薬物犯罪事務所(UNODC)は、世界のATS状況に関する重要な報告書『2011年版世界ATSアセスメント2011 Global ATS Assessment』を発表しました。

報道発表のタイトルは、「ATS:世界で2番目に乱用されているタイプの薬物」というもの。世界でもっとも広く乱用されているのは大麻ですが、これに次ぐ第2位の薬物としてATSが急速に浮上しており、世界の不法薬物の流通にも変化が生じていると、この報告書は警鐘を鳴らしています。

ATSとは、アンフェタミン型興奮剤(Amphetamine-type stimulants)のことで、わが国で乱用される覚せい剤(メタンフェタミン)やアンフェタミン、MDMA類などをさす用語ですが、ここでは、現在世界で問題になっているケタミンや脱法ドラッグとして広まったメフェドロンなども含めた、中枢神経刺激作用のある合成薬物全般を視野に入れて、世界の動向を分析しています。

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↑2011年版世界ATSアセスメント

ATS市場の構造変化



かつてATS市場には、2004年ころをピークとする拡大期がありました。この拡大を支えたのは、アメリカ合衆国を中心とした北米地域でのメタンフェタミン乱用の急増です。メタンフェタミン押収量が急増し、小規模な密造所の摘発が続きました。その後、世界のメタンフェタミン押収量は減少していましたが、 2008年頃から再び増加に向かい始めています。

この数年、ATS市場に起きている変化として、まずあげられるのが、密造及び国際取引の規模が大きくなり、国際的な薬物犯罪組織の本格的な関与がうかがわれることです。

かつて、個人的な小規模密造が大多数を占めていたものが、密造所の規模が次第に大掛かりなものになってきたことと同時に、ヘロインやコカインの場合と同様に、原料となる前駆物質の調達から製造、製品の流通までのすべての段階を掌握する、国際的な薬物犯罪組織の関与がうかがわれるようになっています。

こうした変化を敏感に反映しているのが、わが国における密輸摘発の状況です。もともと、覚せい剤(メタンフェタミン)消費の中心は東南アジアや中国、日本など東アジア地域で、この地域内で生産された薬物が、地域内で消費されてきました。わが国に流入する覚せい剤のほとんどは、東南アジアや中国などから密輸されたものだったのです。ところが、つい近年、この状況が大きく変化し始めています。まず、2007年ころから、カナダやメキシコからの覚せい剤密輸が急増しました。次いで、2009年ころから突然現れたのが南アフリカや西アフリカ諸国からの密輸です。同じ頃、中東諸国からの密輸も目に付き始めました。

従来、メタンフェタミン市場とほとんど関係ないと思われていた地域で、メタンフェタミンが密造され、日本の空港に向けて、続々と送り込まれてきています。しかも、その背後に見え隠れするのは、世界をまたいで暗躍する国際的な薬物犯罪組織です。これまでコカインやヘロインの世界市場を取り仕切ってきた組織が、その手法を使って、メタンフェタミン市場に乗り出してきた様子なのです。

これまで、東南アジア・極東を舞台に展開してきた覚せい剤密輸をめぐる攻防戦が、一気に地球規模に拡大したようです。この変化を迎えて、私たちの意識も、地球規模に組み替えておかなくてはなりません。

日本と韓国の覚せい剤市場



下の表は、2008年版の世界ATSアセスメントに掲載された、地域ごとのアンフェタミン、メタンフェタミンの価格です。表の下半分がメタンフェタミンの価格で、右側の末端小売価格の欄をご覧ください(左から、単純末端価格、純度、純度補正後の末端価格です)。東アジア(East Asia)と表示されているのが日本と韓国ですが、他の地域と比べ、メタンフェタミンの純度が高く、また末端小売価格が飛びぬけて高いことがわかります。

この高価格が、世界のメタンフェタミン市場を動かし、アフリカや南米からも覚せい剤が運びこまれる原動力になっているのです。

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↑『2008年版世界ATSアセスメント』112ページより

引き続き、2011年版世界ATSアセスメントを読みながら、日本に運びこまれる覚せい剤の産地や流通について考えていきます。

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