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「消費税の増税分を社会保障費に」なんていうのは机上の空論。日本では"決算"が評価されないからその空論がまかり通ってしまう―「賢人論。」第32回(中編)上念司氏

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40歳を過ぎ、ふだんから健康でいることを心がけている上念司氏は、運動もリハビリも、楽しんで取り組むことが大事だと語った。また、2007年に財政が破綻したことをきっかけに地域住民の健康への意識が高まったという夕張市を例にあげてもらった。中編では引き続き、予防医療への意識をもつことの重要性と適正な医療費の使われ方について、経済評論家としての視点を伺っていく。医療に関する予算の配分については、“政治への期待”も込められていた。

取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/鈴木智博

予防医療にシフトするにはむしろ医療が破綻したほういい

みんなの介護 前編「“マジメじゃなきゃだめ”みたいな空気感を一掃しないと介護や医療でのリハビリを長続きさせることはできない」では、夕張市のように予防医療に切り替えていくことが大事だと伺いました。

上念 極端な話ですが、医療が破綻したほうが、むしろ予防医療にシフトできると思います。医療が破綻してしまうと処置すらできなくなってしまうので。予防医療って、例えばピロリ菌の検査をするとか。保険適用を受けなくとも、5000円くらいしかしませんからね。私もこのあいだ夫婦で受けましたけれど、一人5000円しませんでしたから、圧倒的に安いわけです。

みんなの介護 病気になってから医者にかかるのではなく、スクリーニング検査をしておくということですね?

上念 そうです。予防医療に力を入れていく。自分の体がどういう状態か、というのを把握するためにも、日常から運動をしていれば、“ちょっと今日は体の動きが良くないんだな”っていうのがわかる。そういう感覚を持つのが大事ですよね。

加えて、先端医療という意味では今、イノベーションがものすごいことになっています。例えば、リモコンの赤外線。あれで癌が消えるんですよね。最新の研究ではそういうことがわかっています。ある酵素と結びつくものを飲むと、それが癌細胞と結びついて消える仕組みらしいんです。8割から9割くらいの癌に適用できて、機械も300万円程度で購入できる。

予防医療をしっかりやって、浮いたお金で、こういった癌治療に画期的な進化をもたらすかもしれないと言われている研究や先端医療を徹底的にやるのがいいんですが、中途半端なことをやっていてはダメなんです。政策が安定しないとかね。

みんなの介護 政策と言いますと?

上念 政策が総花的になってしまって、メリハリのある医療費の配分になっていない、というふうに思います。予防医療以外は先端研究ということにすれば、いくらでも減らすことができるはず。

みんなの介護 最近の研究では、予防医療による医療費削減効果には限界があることが指摘されていますが、過度な予防医療とはいかずとも、健康への意識が高いほうがいいことに違いはないですよね。



医療費を切り詰めるのではなく“未来へ投資する”という発想をもつべき

上念 好き勝手たばこを吸って体をおかしくしておいて、“俺をタダで面倒を見てくれ”っていうのは虫が良すぎる話だと思います。そういうのがまかり通ってしまうというのは、良くないですよ。

そもそも、江戸時代や明治時代は、親の面倒は子どもがみたんですが、子どもがどれくらい面倒をみていたかというと、親が住むところと、食べ物だけ。あとは勝手にしろ、というスタンスで、親も“ありがたい”という感じだった。それが、子どもが親の面倒をみれなくなって他人様に面倒をみてもらうことになると、老人のほうもつけあがってきて、“これもくれ、あれもくれ”という話になってしまったんですよ。

みんなの介護 “世話になるのが恥ずかしい”と言う高齢者も多いと聞きます。

上念 他人様の世話にならない、という日本人の美しい価値観を持っている人だったら、“国が面倒を見て当たり前”みたいなことは言えないと思うんですけれどね。

年金で言えば、金持ちなのにもらっている人がいるでしょ。私が強く推奨したいのは、年金とか医療費を返上した人には天皇陛下から勲章をあげるべきということ。すごくたくさんの人が返上したがると思う。だって、“年金はいらない”と思っている金持ちはいるはずだから。企業を経営している人なんかは、“定年”という概念がないし70、80歳まで経営者をやるでしょ。会社を経営しているほうが“若い”し、その人の医療費もかからない。

医療費を切り詰める、という形ではなくて、未来への投資になるようなやり方でやるべきです。逆に、医療機関とかが既得権を持ってしまっているんですよね。

みんなの介護 海外の国では混合診療がさかんに導入されていたりするのでしょうか?

上念 混合診療の先進国と言われているオーストラリアでは、事実上、公的皆保険が適用できる部分と自由診療が並列されています。日本では歯科治療以外ではそこまで普及していません。

みんなの介護 事故とか、確率の低い病気にかかってどうしようもないという人に対してはやるべきですけれど。

上念 まずは、自分の健康は自分で気をつけるというのがベースにあって、その上で、自分で足りない分は他人に頼るというのがいいんじゃないですか。

とはいえ、極めて可能性が低い病気にかかったりだとか、運が悪く事故に遭ったりだとかすることはあるので、そういうときこそ国が援助をするべき。万が一働けなくなってしまったときは公費で面倒を見てくれることを前提に、みんなが働けると思う。すべてにおいて「自己責任」という言葉では片づけられないのでね。

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