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トランプ時代のアメリカ、草の根の声~6郡の支持者や批判者、新大統領に何を思う~

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ワイオミング州キャンベル郡 

 【ジレット】米西部でワイオミング州キャンベル郡ほどトランプ政権の政策に運命が左右される場所はほとんどない。同州は全米で産出される石炭の約40%を担っており、キャンベル郡は鉱物が豊富なパウダー川盆地の中心に位置する。人口3万2600人のブルーカラー労働者の町ジレットは「米国のエネルギー首都」を自称する。トランプ氏がここで勝利した一因は、オバマ前政権が推進した環境規制の強化に有権者の怒りが募ったためだ。

ワイオミング州ジレットの住民たちはこの町を「米国のエネルギー首都」と呼ぶ Photo: Kristina Barker for The Wall Street Journal

 ワイオミング大学のエネルギー経済・公共政策研究所で所長を務めるロバード・ゴッビー氏によると、同州では2万人余りの雇用が直接・間接的に炭鉱産業に依存している。

 だが2016年に同州の2大炭鉱会社、ピーボディ・エナジーとアーチ・コールが連邦破産法の適用を申請した。両社とも人員を15%削減。総計500人近くの雇用が失われた。

 石炭の生産は最近、少しだけ上向いてきた。ピーボディは臨時作業員を雇っている。トランプ氏の勝利はジレットに新たな希望を吹き込んだ。

 最近、まきで焼くピザの店を始めたレイチェル・カレンバーグさん(35)と同性婚相手のアリアン・ジミソンさん(38)は、大統領選でリバタリアン党のゲーリー・ジョンソン氏に投票した。トランプ政権になればマイノリティーがどう扱われるのか心配だったし、クリントン王朝の再来は面白くなかったからだ。

レイチェル・カレンバーグさん(左)と同性婚相手のアリアン・ジミソンさん Photo: KRISTINA BARKER FOR THE WALL STREET JOURNAL

 この同性婚カップルはトランプ政権の下で市民権がどう解釈されるのか懸念していると話す。性的指向を公言しているレズビアンやゲイ、トランスジェンダーの住民がほとんどいないキャンベル郡のような土地ではなおさらだ。

 「私に見えるのは、彼の支持者がつけあがり大量の憎しみとたわごとをばらまいている姿だ」とジミソンさん。「気がめいるし、怖い」

 炭鉱の重機作業員として16年働いているスコット・カンディーさん(48)はビールをすすりながら、昨年がいかに厳しい年だったかを語った。「これまでで最悪だった。もう当てにできる仕事ではなくなった。ほとんど2、3日ごとに従業員が解雇された」

スコット・カンディーさん Photo: Dan Frosch/The Wall Street Journal

 環境規制に関してカンディーさんは、トランプ氏なら「達成できないほど高い基準は設けないだろう」と述べた。

ノースカロライナ州リッチモンド郡

 【ロッキンガム】ノースカロライナ州リッチモンド郡はかつて、全米で最も豊かな郡の一つだった。数十の繊維工場が立ち並び、鉄道会社が進出していたおかげで仕事はいくらでもあった。

 しかし1970年代から徐々に衰え始めた繊維産業は1993年の北米自由貿易協定(NAFTA)で衰退が加速。現在、州内で最も貧しい地域の一つだ。国勢調査局によれば、貧困層は人口の28%で、全米平均の2倍に当たる。

 住民の多くはNAFTAを理由にビル・クリントン元政権を非難する。民主党で登録している有権者は共和党の3倍だが、昨年の大統領選で妻ヒラリー氏にチャンスはなかったと住民は話す。同郡有権者の55%はトランプ氏に投票した。忘れられた場所に製造業の雇用を取り戻すという同氏の公約を受け入れたのだ。

 2人の幼児を抱えるシングルマザーのキャシー・オドムさん(22)は投票に行かなかった。「ヒラリーはうそをつくし、トランプは話し方を知らない」からだ。だが今、頼みの綱である社会保障というセーフティーネットをトランプ政権が廃止するかもしれないと恐れている。

2人の幼児を抱えるシングルマザーのキャシー・オドムさん Photo: Valerie Bauerlein/The Wall Street Journal

 オドムさんは、昼間は看護師の勉強を続けながら、夜は時給16ドル(約1800円)の看守の仕事を始めた。

 地元で銃器店を営むロバート・リーさん(62)は2008年の金融危機前の水準に比べ、商売が70%落ち込んでいると見積もる。一方、健康保険の保険料は3倍になった。

ロバート・リーさん Photo: Valerie Bauerlein/The Wall Street Journal

 トランプ氏についてリーさんは「彼は政治家ではない。雇用を生み出してきた」と話し、大統領が約束通りに仕事を米国に取り戻すことに期待をにじませた。

 リーさんの銃器店は小さな町の理髪店のように人が集まる場所として機能している。リーさんとこの店に集まる人の多くはトランプ氏に投票したという。大きな変化を起こすには従来とは完全に異なる人物が必要だと思ったからだ。

フロリダ州パインラス郡

 【ラーゴ】フロリダ州パインラス郡はインターステート(州間高速道路)4号線で結ばれた人口の多い回廊地帯の西の端に位置する。全州規模の当選者や大統領選での同州の結果を左右することが多いのはこの地域だ。

 退役軍人や高齢の退職者、ハイテクから旅行に至るまで幅広いセクターの労働者が暮らしている。大統領選の夜、従来民主党を支持していたこの郡が共和党に傾いたのは驚きだった。

 クリントン氏はセントピータースバーグの都市部では支持を集めたものの、郊外や海岸沿いの地域は高齢の白人が多く、その多くはトランプ氏を支持した中西部や南部の州からの移住者たちだ。

 ファイナンシャル・アドバイザーのカーティス・チャンバースさん(54)は長年、無党派だったが、ブルーカラー労働者の不安に対処しようとしているトランプ氏の姿勢に動かされたと話す。トランプ氏に投票するために予備選前に共和党に登録したというチャンバースさんは「経済的なポピュリズムやナショナリズムが私の心に響いた」と語る。

ファイナンシャル・アドバイザーのカーティス・チャンバースさん Photo: EVE EDELHEIT FOR THE WALL STREET JOURNAL

 米国の競争力を高めるための税制改革を含め、トランプ氏が公約のすべてを果たすことを期待すると言う。「私たちはついに、政治家ではなくビジネスマンの大統領を持つに至った」とし、さらにこう続けた。「私はかなり楽観視している」

 セントピータースバーグに住み公共交通機関の人事部で働くトリッシュ・コリンズさん(40)はクリントン氏を支持した。選挙後、数人の友人たちと一緒に「全てはセントピータースバーグのために」というグループを発足させた。社会的・政治的な活動をしたい人同士を結びつけるためだ。コリンズさんは、イスラム教徒をはじめとする難民・移民を標的にするトランプ氏の政策と、欧州の従来の同盟諸国を見下しつつロシアにすり寄る姿勢を懸念していると話した。

トリッシュ・コリンズさん Photo: Arian Campo-Flores/The Wall Street Journal

 大統領の就任後に話を聞くと、トランプ氏が大統領令を連発していることや、顧問団の小さなグループの中で権力を固めているように見えることに失望感をあらわにした。「独裁政治に向けて列車が猛スピードで進んでいるような感じがする」

By WSJ STAFF

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