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トランプ時代のアメリカ、草の根の声~6郡の支持者や批判者、新大統領に何を思う~

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トランプ大統領の就任式の模様がテレビに映るペンシルベニア州モネッセンのバー(1月20日) Photo: Stephanie Strasburg for The Wall Street Journal

 ドナルド・トランプ米大統領の支持者は景気回復から取り残された地域に住んでいる人が多い。経済成長と雇用を米国に取り戻すというトランプ氏の公約に心を動かされたのだ。

 彼らは西部の牧場主であり、エネルギー資源が豊富な州の炭鉱作業員であり、ラストベルト(さびついた工業地帯)の鉄鋼作業員である。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はこうした支持者に加え、支持政党を変えた有権者やトランプ氏に反対する人からも話を聞いた。なぜトランプ氏を支持するのかしないのか、大統領にどんなことを期待しているのか。

ペンシルベニア州ウェストモアランド郡

 【モネッセン】1890年代にマノンガヒラ川の湾曲部に沿って築かれた町、モネッセン。鉄鋼生産と鉄鋼加工会社がけん引して発展した。世界最大級の鉄鋼業の町になったこともある。だが1980年代に鉄鋼産業に逆風が吹き始めると、モネッセンをはじめ周辺の町が傾き始めた。最大の雇用主だったウィーリング・ピッツバーグ・スチールが溶鉱炉を閉鎖したのは1986年のことだった。

 同社と関連業者から8000人の雇用が消えた。ピッツバーグ周辺全体では80年代に10万人余りの雇用が失われた。

 元鉄鋼作業員のエモリー・テレンスキーさん(66)は、雇用に焦点を絞ったトランプ氏の歯に衣着せぬ物言いに動かされ、支持を決めた。トランプ氏が不要だと考える環境関連の規制が廃止されれば、製造業などに雇用が戻ってくると信じている。この地域の民主党政治家が鉄鋼業にも他の産業にも雇用を取り戻せないことに長年不満だったと話した。


元鉄鋼作業員のエモリー・テレンスキーさん Photo: Stephanie Strasburg for The Wall Street Journal

 テレンスキーさんは発足したばかりのトランプ政権に満足していると話す。「やると言ったことはすべてやっている。敵対勢力を怒らせているのはこれだ。彼は後退していない」

 さらに、メキシコとの国境に壁を築くとの公約を押し進めていることを喜び、こう話した。「壁のレンガ代として50ドルを送ってもいい」

 一方、市の条例執行官のマービン・デービスさん(65)はトランプ大統領に不安を感じていると話す。経済面では公約を果たせず、諸外国との無用な軍事衝突に米国を巻き込みかねないことを恐れていると言う。

マービン・デービスさん(手前) Photo: Kris Maher/The Wall Street Journal

 大統領選では民主党候補のヒラリー・クリントン氏に投票したデービスさんだが、トランプ氏には成功のチャンスを与えたいとし、国民に対してもっと多様性に寛容な態度で発言することを期待しているとも話す。

 同じくクリントン氏を支持した妻のメアリーさん(64)は「(トランプ氏が)自分以外の人のために何かをやっているとは思えない」と話した。

アリゾナ州マリコパ郡

 【フェニックス】メキシコに国境を接するアリゾナ州では移民問題を巡る議論が白熱し、マリコパ郡での大統領選は接戦だった。人口410万人の同郡にはヒスパニック系の流入が急激に増えている。

 麻薬や密入国に関する報道や、ヒスパニック系の人々の受け入れに伴う負担費用への懸念を背景に、2000年代半ばから移民の取り締まり強化が支持されてきた。

ファン・バスケスさん Photo: Patrick T. Fallon for The Wall Street Journal

 大学生のファン・バスケスさん(19)は家族の中で唯一の米国生まれだ。母親は20年前、バスケスさんより年長の子供5人を連れて不法入国した。一家はフェニックス中心部にある移動式住宅用の広場に落ち着いた。

 バスケスさんは大統領選の間、住宅を1軒ずつ訪問し有権者登録をして回った。新規登録者の大半が民主党候補のヒラリー・クリントン氏に投票してくれればと期待した。大統領となったトランプ氏に期待するのは、「米国を母国にした人が市民権を得られる道を作る」ことだ。

 バスケスさんの4人の兄姉は、子供の頃に入国した不法移民の強制送還を免除する政府のプログラム「DACA」の恩恵を受けた。DACAはバラク・オバマ前政権が2012年に導入した。このおかげで、28歳の姉は13年にアリゾナ州立大学を卒業後、米経済誌フォーチュンが発表する売上高上位500社に入る企業に就職した。

 この地域で最初に作られた高齢者(退職者)向けコミュニティーの一つ、サンシティーで暮らすパティ・トンプソンさん(68)は、イスラム圏7カ国出身者らの入国を一時的に禁じた大統領令に感心しないと話す。

パティ・トンプソンさん(左) Photo: Thompson Family

 「その中身と、米国の安全に対する彼の懸念には同意するが、あまりに早計で関係当局が把握していなかった。やり方がずさんだった」と述べ、こう続けた。「適正な書類がある人を追い出すのは間違っているし、悲しい」

 同郡サプライズで妻と1歳半の息子と暮らす大学の事務職員クリストファー・ヘリングさん(32)は自称「政策面の共和党支持者」。トランプ氏の大統領就任前には、国境の壁は移民問題の解決にはならないと話していた。就任後、再び話を聞くと、「テロを輸出する可能性をもった7カ国からの入国を一時的に停止したのは良識的な措置」だと語った。

ネバダ州ランダー郡

 【バトルマウンテン】ネバダ州北部の牧場主は圧倒的にトランプ氏を支持した。放牧権の急激な縮小など、環境問題への懸念を背景に各種規制を定めている政府機関と折り合いをつける際に、トランプ氏が手助けしてくれることを彼らは期待している。

 牧場が広がる米西部各地での当局との緊張関係が世間の耳目を広く集めたのは2014年のこと。同州の牧場経営者クリバン・バンディーさんが放牧権を巡り、土地管理局(BLM)を相手に武器を持って抗議活動を展開した。昨年は息子のアモンさん率いる集団が地主の権利を主張し、オレゴン州の野生動物保護公園内で41日間におよぶ抗議活動をした。

 共和党のマーク・アモデイ下院議員(ネバダ州)は連邦政府の政策、とくに民主党政権の規制が、炭鉱を含め昔からの土地利用者に打撃を与えていると指摘する。

ネバダ州ランダー郡の牧場 Photo: Alamy

 牧場経営の健康状態は周辺地域にも影響を及ぼす。コネティカット州と同じ面積の土地に6000人が暮らすランダー郡の失業率は最新データの昨年11月で5.5%だった。これは2010年の約半分だが、景気後退前の低水準(2.8%)を大きく上回っている。

 トランプ氏に投票した衣料店の管理職リンダ・ミルズさん(52)は、オバマ政権の医療保険制度改革法(オバマケア)の廃止を望んでいる。自分の保険が「何の費用もカバーしない」からだ。糖尿病を患っており、年間で最大4500ドル(約50万円)の免責金額はあまりにも高額だと話した。

リンダ・ミルズさん Photo: Jim Carlton/The Wall Street Journal

 夫で郡政委員のダグさん(53)は、家族経営の薬局の利益が上がるよう法人税の引き下げを期待すると話した。ただ、貿易に対するトランプ氏の強硬な姿勢は心配だと話す。「素晴らしい結果になるかもしれないが、ひどい結果になる可能性もある」

 兄弟で花火の店を経営するアール・カソーラさん(60)は大統領の就任前、仮にトランプ氏が公約を守らず、あまりに独裁的になれば、大統領の弾劾を支持すると話した。とはいえ先行きを楽観視し、「何か大きな事の始まりだと思う。左派の人々は自分たちに対立する人々の感情がどれだけ強いのか分からないのだ」と語っていた。

 その後もう一度話を聞くと、カソーラさんはこう話した。「トランプ氏は私の希望と期待を上回ることをやっていると言っていいと思う」

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