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相馬市長書き下ろしエッセー「NPOはらがま朝市」

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この記事は相馬市長立谷秀清メールマガジン 011/08/18号 No.257より転載です。

福島県相馬市長
立谷 秀清

2011年8月30日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私の生まれ育った原釜は古来より漁村である。私の子供のころは砂浜に並んだ手漕ぎ船で漁に出ていたが、昭和30年代中頃から機械船が普及し、沿岸漁業の規模も港も周辺産業も、徐々に拡大していった。平成22年度の松川浦漁港の漁獲高は50億円弱。さらに仲買業者、品種によっては加工業者とビジネスが広がっていた。

約300隻あった沿岸漁業の漁船の半数以上が失われるという大津波だったが、4割の漁師たちは地震と同時に自分の船まで一目散に走り、津波が襲ってくる外洋に向かってエンジンを駆った。巨大な津波でも、波が砕ける前に乗り越えさえすれば、沖で無事に待機できる。しかし、砕けた波に巻かれたら漁船も粉々にされてしまう。事実、ちょっとした時間差で大津波にのまれた漁船もあった。

沖で一夜を明かした漁船たちは、帰るにも港の岸壁が損傷し容易に着岸できなかったが、沖で水も食料も尽きれば危険な帰港をせざるを得なかった。やっとの思いで陸地に立った彼らが、変わり果てた原釜の光景を見て何を想ったかは想像するに余りがある。しかし、自分の家ばかりでなく、家族や親せきを失った彼らに、容赦なく襲いかかったのが漁船や漁具の返済ローンである。「1日も早く漁に出たい。そうしないと借金で首をくくることになる」、実直なある漁師から1 日も早い漁港仮復旧を訴えられた。また、ある漁師は孫たちを避難させるために、自分の船を沖に出すことをあきらめて車で逃げた。のちに追いかけてくるだろうローン地獄より孫たちの安全を選んだのだ。

船を守った漁師たちが、漁に出るためには津波で流された網やその他の漁労具を新たに買わなければならない。船を失った場合は、生活のために中古なり新造船なり、数千万円の投資が必要である。ほとんどの場合借金が払い終わっていないので、新たな出費は二重ローンとなる。我われ相馬市災害対策本部は急ぎに急いで、やっとの思いで漁港を仮復旧させたが、原発の風評被害のせいで断腸の思いで漁を見合わせている。しかし、この忌まわしい問題が解決しても、漁業再開には二重ローンの問題が立ちはだかる。

周辺産業に対する被害も深刻だ。特に仲買業者は扱う魚がないのだから、せっかく我われが冷凍倉庫を整備しても、漁の再開と風評被害の終息を待たないと仕事にならない。仲買業者のうち、資金力と広域的な取引のネットワークを持つ業者のなかには、既に日本海側で事業を始めたケースもある。私個人としてはその生命力に心からエールを送りたいと思っているが、たいていの事業者は地元での事業再興を待ち望んでいる。そして彼らにも、今までの設備投資の返済が追ってくるのだ。

相馬市災害対策本部としては、復興をガレキの撤去や恒久住宅の提供のみとは考えず、被災者の新たな人生設計と定義してきたので、これは対策本部の課題そのものなのだ。国会で審議中の二重ローン救済法案が待たれる所以である。

何とか急いでもらいたい。

5月のある日、それでも魚介類を市民へ届けて相馬市を元気づけたいと相談に来た、地元に残っている仲買業者たちに、輪島市のような朝市を企画したらどうかと勧めてみた。もともと勘の良い人たちだから、NPOとして継続的に食材を提供することや、いずれは原釜に市民の台所となるマーケットを作っていこうとか、新しいアイディアがどんどん出てきた。そして彼らは直ぐに行動に移した。

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