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塾ブームに見る日本人の本質

話題になった小池百合子都知事の「希望の塾」。当初2900人ぐらいのスタートと記憶していたのですが、その後2次募集もあったらしく、一体塾生が何人いるのかさっぱりわかりませんが、大変な人気だったということでした。個人的に思うのは入塾料男5万円、女4万円の行方ですが、仮に塾生3000人、平均4万5千円としても総額1億3500万円の資金がいったん集まります。振込先は「都民ファーストの会」ですから、コストも相当かかっていると思いますが、この辺りはさすが、百合子サマなのでしょう。

その「希望の塾」、私の知る限り、あと1回で塾が終わります。その塾生達、「この後どうなるのだろう」というのがもっぱらの話題とか。個人的には何らかの形で繋げて行くべきだろうと思います。それこそ、都議候補を探すより希望の塾の後継者を探す方が先決ではなかったかと思います。

さて、日本の私塾ブームは長く続きます。先日も東京である私塾に参加させて頂きました。受講生は真剣なまなざしで講師の話に聞き入ります。教室からはノートに書き込む音だけが響き渡ります。「平日の午後、30-40歳前後のこの人たちはいったい何者?」と思ったのですが、自営業者や中小企業が研修のような使い方をしているなど様々でした。この受講料は通常一回数万円のようですので小池塾ほど安くはありません。

バンクーバーにも日本人向けのいくつかの塾が存在しているようです。稲盛和夫氏の盛和塾もそのひとつですが、話を聞く限り、皆、よく勉強し、議論し、和を作っているようです。勉強とは敵対関係を作りにくいですし、異業種の人たちが集まる点において実に面白いと思っています。私が所属するビジネス系NPOでも今年度から「塾」をやることにしていますが、その意味は人の話を黙って聞くより双方向の議論を進め、考え、発信する力をつける、という発想です。

日本における塾は古くは平安時代からあったとされますが、花盛りとなったのは江戸時代でしょう。その寺小屋ですが、磯田道史氏の「江戸の備忘録」によると「江戸時代の寺小屋の絵図をみると、寺小屋の子供の机は先生の方を向いて並んでいない。てんでバラバラに自習している。江戸の教育はマンツーマン教育に近い。先生は子供が手を動かして字を書くのを見てやり、子供が口を動かして本を音読するのを一人ずつ順番に聞いた。江戸の学びは子供が能動的に自分の手と口を動かして成り立つ『手口の学び』であった」とあります。これぞ今いうところの「個別指導」であります。

では子供たちが先生の方に向って勉強するようになったのはいつから始まったのか、といえば同書によると明治以降でそれが座学の始まりで「目と耳の学び」になったとあります。筆者は「知識の注入」と評し、「想像的人間が育ちにくくなった」と記しています。

明治以降の日本の躍進は江戸時代までの日本人の学びに対する姿勢が作り上げたものだとすれば、画一的教育でベクトルを一つの方向にもっていった近年教育には功罪様々な意見が飛び交うでしょう。大人になってもう一度学びたいと思う人があちらこちらにいるその意味は自分の考え方をもう少し深堀したいと思う人がたくさんいるということです。

私のまわりには「勉強が大好き」という人が結構います。「学ぶ歓び」なのでしょう。私も時間があれば塾に行ってみたいと思いますが、どちらかといえば講義をする方が多いので書を読み続けて自己研磨し続けています。

ではなぜ、多くの大人たちがもう一度勉強したいと思ったか、ですが、私は社会の歪みを感じているのではないかと思います。例えばゆとり世代が大人になってみた世界はゆとりがない社会です。世の中ってこれでいいのだろうか、と考え直す機会はいくらでもあります。

高齢者が主流となる時代に30-40代の世代は何をしたらよいのか
世界がグローバルとナショナリズムの端境期にある中、日本はどうあればよいのか
近隣諸国と難しい関係になった日本が目指す外交とは
人口が減りゆくある日本で財政赤字が膨らみ続けて自分たちが高齢者なったら日本はどうなるのか
なぜ、若者は結婚せず、子供を作らないないのか、その対策はないのか
機械化、AI化が進み、我々の「職の安全」は確保されるのか

ネタなどいくらでもあります。塾では大体このような大所高所の普段の生活とは密着性のない「政治家や官僚や学者が考えること」を話題にするケースも多いようです。塾とは学ぶべきテーマを通じて考える癖をつけ、創造力を高めることでしょう。吉田松陰の松下村塾では兵学を主体に学んだようですが、最終的には士規七則(武士のあり方)を教えていたとされます。

現代の塾ブームの背景とは日本人が古来から持ち続けている「学ぶ姿勢」が顕著に表れた結果だとすれば実に喜ばしいことではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。

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