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“DV冤罪も…”我が子に会えない父親たちの苦しみ

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普通の生活をしている常識人でも”被害”に遭う

撮影:渋井哲也

西牟田さんが、離婚後に子どもに会えない父親をテーマに執筆しようと思ったのは当事者だったためだ。離婚後、子どもと会えない時期があった。当事者の団体を知人を通じて知り、交流会に出かけ、問題意識を持つようになった。

 「交流会に参加する以前は必死だった。家族の崩壊を食い止めないといけないと思っていたし、こうなったのは自分が悪いからだ、と責めることもあった。精神的に参っていたので、門を叩いた」

子どもに会えない苦しみは自分だけなのか。そう思っていると、同じく苦しんでいる人がいるとわかった。知人の報道ディレクターがFacebookで書き込んでいたからだ。彼の話を取材し、雑誌に掲載しようと思ったが、その矢先、彼は自殺した。理由は単純なものではないだろうが、

 「家族のことが一番の問題だった、と聞いた。それで余計に深刻な問題なんだ」

と思った。

 『わが子に会えない』では、18人の当事者が出てくる。夫婦の関係が崩壊する理由もさまざま。浮気によるもの、妻の精神的な不安定さ、結婚に反対していた義父母による妻子の囲い込み、妻からのDV、宗教が原因となるもの......。インタビュー集のため、どのパターンをどう解決するといった手立ては書かれていない。また、父親が言っていることが事実かどうかわからない。一方的ではあっても、会えない辛さを訴える当事者が目に前にいることはたしかだ。

西牟田さんは現在、子どもとの面会ができている。しかし、会えるようになるまで離婚してから1年3ヶ月がかかった。今年も2回、元妻と子どもと3人で会うことができている。自身も同じ苦しみをしたという意味で、取材や執筆は辛くなったのだろうか。

「僕自身が当事者だが、裁判も調停もしてないので、どのケースにも似ていない。ただ、『僕の見た「大日本帝国」』(KADOKAWA)、『誰も国境を知らない』(朝日新聞出版)などの歴史ノンフィクションでは、右でも左でもなく、中立というのが売りで、途中でエクスキューズを入れていた。しかし、今回は、彼らの声を薄めずに、そのまま書くようにした。そうじゃないと、(突然子どもと会えなくなる)“災害”のようなものに遭っていることが伝わらない」

今回は、子どもに会えない父親側に立った本だが、どんな点に気をつけて書いたのか。

「バックグラウンドがバラバラな、あらゆる男の人が“被害”に遭っていることをわかってもらうために、人となりも紹介した。父親が暴力をしているのでは?と見られがち。しかし、いかに普通の生活をしている常識人であることを踏まえつつ、“連れ去り”被害を書くことにした。そのため、地下鉄サリン事件の被害者のインタビューをまとめた、村上春樹の『アンダーグラウンド』(講談社)や、原発事故被災者の声を丹念に聞き取った、スベトラーナ・アレクシエービッチの『チェルノブイリの祈り』(岩波書店)を意識した。もちろん、嘘をついているかどうかはわからない。しかし、それを含めて伝えようと。今回はイタコになろうと思った」

親子断絶防止法は共同親権の足がかりになるか?

この問題をどう解決すべきだろうか。

 「別れた後の処理が、ベルトコンベアのように機械的になっている。司法が関わると、なおさら大変だ。欧米では、100日面会が相場だ。諸外国のように、共同親権が認められればいい。現状では、『共同親権を実現せよ』と、声高に言っている政治家はいないが、前段階として、親子断絶防止法の制定を願っている」

親子断切防止法案は、子どもには両親の愛情が必要という前提に立ち、夫婦が離婚をしても、頻繁かつ継続的な親子交流ができ、また子どもを同意なく連れ去ることを禁止するものだ。そして、共同親権も導入すべき、と付帯決議で提案もする予定になっている。

「親子断絶防止法は共同親権への足がかりになればいい。もちろん、夫が“連れ去る”というケースも知っている。そのため、別れるのは手順が必要です。現状では義務ではないため、制度化するべき」

ただ、慎重な意見も多く、具体的な政治日程には上がっていない。DVは証拠に基づく、とされているが、証拠を保全する余裕がない場合もある。妻への暴力がある場合は、子どもへの暴力の可能性も高い。これを禁止されると、子どもを守れない。一方で、加害行為がないのに、DV冤罪を主張される場合がある。『わが子に会えない』では逮捕されたケースも掲載されている。議論が成熟はしていない。

もちろん、“連れ去り”をするのは母親だけではない。

 「父親が“連れ去る”というというケースも取材したことがある。ただ、今回、父親に絞ったのは、親権は母親が優先されている現状があり、それを顕在化したかった。それに、自分が男で共感がしやすかったから」

最後に一言。

「結婚したときと子どもが生まれたときでは状況が変化する。結婚は、相手の常識とこちらの常識とのすり合わせ。子どもが生まれればなおさらだ。取り上げた人に対して感情移入はしている。僕の場合は、トラブルにあっても、別れても、復縁の目がなくても、家族だと思っている。ただ、この本を読むと、結婚に希望を見出す人が減るのかもしれない。でも、こういう問題がなくならないといけない」

わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち
西牟田 靖
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