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【書評】ソープランドでボーイをしていました/玉井次郎

ソープランドでボーイをしていました

ソープランドでボーイをしていました
作者: 玉井次郎
出版社/メーカー: 彩図社
発売日: 2014/12/18
メディア: Kindle版
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「吉原」という地名はもうないんだそうですが、現に「吉原めいた場所」は存在するわけで。私のような小心者は一度もいったことないですが、少なからぬ男性諸君はお世話になっているのでしょう。

本書は、そんな吉原の高級ソープのボーイを務めることになった著者によるルポタージュ。東日本大震災という天災の不運と、自業自得も相まって、1ヶ月30万円近くの借金返済に追われることとなった著者。家族ともども路頭に迷いかけていたところ、偶然東スポの紙面で見つけた高給の求人が吉原のソープランドでした。

本書は未経験の著者がソープランドの門を叩き、ボーイとして約1年間務めた記録です。

最初に驚くのはボーイの年齢層。著者が50歳で、通常の職場なら「新人」として入るのはかなり肩身の狭い思いをするはず。でもソープランドはどうやら勝手がちがうようで、一癖も二癖もある同僚たちは50代、60代がざらです。そしてさらに著者のあとに59歳の新人が入ってきたっていうんだから驚きです。

一応、月に30万円〜稼げるらしいですが、それでも、そうした高齢者しかこないということなのかもしれません。福利厚生はお世辞にもいいとはいえないようです。

 営業中は、「パンパンパン」とリズミカルに布団を叩くような音、それに合わせて「あっあっあっ」という女の子達の声が廊下まで響き渡る。

 何だか、どこか外国の収容所で女囚達が拉致、監禁され、各部屋で拷問を受けているような雰囲気でもある。女囚達が出しているのは、悲鳴やうめき声。

 2階には、個室が7部屋もあるからそれは凄いもんだ。

「あ〜、う〜!」

「あっあっあっ、イク〜!!」

 満室時などは、あちこちの部屋から女の子達の声が響き、廊下中にこだまする。

「外国の収容所」の「女囚」を思い浮かべるのは著者独特の性癖のような気がしないでもないですが、それはともかく、性が公然と売り買いされる現場独特の空気感が伝わってきます。

これはぼくの勉強不足だったのですが、一番おもしろいのはソープランドの「建前」です。売春が禁止された日本でなぜ吉原が成立するのかというと、そこには歴然とした「建前」があるんです。

 女の子が店から風呂つきの部屋を借り、従業員として部屋を管理する。そこに男が入浴しに来る。そしてたまたま自由恋愛が発生し、男と女の関係になる……というのがソープランドの建前だ。

いいですか? たまたま自由恋愛が発生するんです。どうですかこれ。17歳のJKと同棲して何もなかったと言い張るよりよっぽどムリがありますよ。でも、その「建前」があるからこそ成立するんです。

1年に一度、保健所の立ち入り検査があり、その「建前」が履行されているか官憲が目を光らせてくるそう。

けれど、検査する側だって本当はソープランドが何をするところかは知っている。要するに店側と官憲側が、その「建前」を共有した共犯関係でなりたっているのですね。これはなんとも面白い。

「口開け」とか「義理風呂」とか、たぶんこの先死ぬまで使わないムダ知識も学べて最高です。

想像していたような暴力団などのバイオレンスな怖さはあまりないですが、一方で、肉体労働がむちゃくちゃキツいようです。「俺も吉原で働きたい!」となるような要素はひとつもありませんでしたが、ただ自分の足を踏み入れたことがない世界を知るという意味ではなかなかおもしろい一冊です。

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