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トランプのアジア戦略はいかに? - 岡崎研究所

 ワシントン・ポスト紙コラムニストのジョシュ・ロジンが、1月8日付同紙に、「トランプはオバマのアジアへの軸足移動を現実のものにしうる」との論説を寄せ、トランプのアジア政策の今後を論じています。要旨、次の通り。

トランプの外交についての議論は、テロとロシアとの関係に焦点を合わせている。トランプはアジア専門家を上級ポストに指名していない。米国の太平洋の同盟国は、アジアがホワイトハウスの優先順位のどこに来るのか、懸念している。

 しかし、政権移行チームは自分自身のアジアへの軸足移動を準備している。この政策は過去の共和党政策をベースにし、かつアジアでの米国のプレゼンスを強化するとのオバマ政権の願望を現実にするものである。トランプ政権は中国についてタカ派であり、地域同盟の強化や台湾に関心を持つ。北朝鮮との関与に否定的で、太平洋での米海軍は強化するという。

 アジアが第一の関心事項になる兆候がある。国務長官候補のティラーソンは上院議員との会合で中国への懸念を提起、特に南シナ海での軍事化と拡張に対抗する必要を明確にした。スティーブン・バノン上級顧問は太平洋艦隊の元海軍将校としてアジア戦略に関心があり、オバマのアジアへの軸足移動が国防費不足でうまく行かなかったとしている。

 大使については、トランプはアジアでの任命をどこよりも早くしている。トランプはインド大使に、インド専門家、アシュリー・テリスを任命しようとしている。中国大使としてアイオワの知事、ブランスタッドを指名したことを中国専門家は歓迎している。日本側はハガティ大使を大きく歓迎しているわけではないが、世界の指導者の内、安倍総理を選挙後最初にトランプが迎えたことで、適切に敬意を払われたと感じている。国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長にはマット・ポッティンガー(中国で数年ジャーナリストをした)が就くとされている。NSCは小さくなる予定で、国務省と国防省のアジア担当次官補はより重要になるが、これにはシュライバー元国務次官補代理、ホワイトハウスのアジア部長をしたビクター・チャなど、ブッシュ政権の高官が検討されている。

 トランプ政権は最初の数カ月、アジアに注意を払わなければならないだろう。国家貿易会議の議長にナヴァロを任命したが、中国との経済面での衝突は早く来る。中国も米の新大統領を試してきた歴史がある。トランプは北朝鮮の核・ミサイル計画を止めると約束している。金正恩政権への支援をしている会社への追加制裁も検討中というが、これも中国との緊張につながる。

 オバマのアジアへの軸足移動は期待が高かったが、実施不足であった。トランプ政権は逆である。トランプ・チームがその計画を実施し、不必要な危機を避けることができれば、トランプはオバマが始めたアジアへの軸足移動を完成させるかもしれない。

出典:Josh Rogin,‘Trump could make Obama’s pivot to Asia a reality’(Washington Post, January 8, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/trump-could-make-obamas-pivot-to-asia-a-reality/2017/01/08/a2f8313a-d441-11e6-945a-76f69a399dd5_story.html

 トランプ政権のアジア政策の方向性は、全体的には明らかになっていません。しかし、この論説が指摘するように、対中強硬策を主張する者が外交に影響を与える要職に就く予定です。米中関係は、政治・軍事では台湾問題と南シナ海問題で、経済では為替操作や不公正貿易問題で悪化する可能性が高いでしょう。その結果、外交上、アジアの重要性は上がることになるでしょう。

民主主義的価値を推進することに関心なし

 トランプは民主主義的価値を推進するなどには関心がなく、「取引」とそこからの利益を重視する傾向があるのではないかと思われます。したがって、共通の価値観に基づく強固な同盟は望み得ないところもありますが、対中対抗が政策の軸になる限り、日米関係は米国にとっても重要になります。アジアへの軸足移動がオバマの時よりもさらに充実してくるとのロジンの見通しはそれなりに根拠があると思われます。

 中国側も米中関係の悪化を食い止めるために努力はすると思われますので、米中間で関係のマネージメントが案外うまく行くなど、複雑な様相を見せる可能性もないとは言えません。

しかし、習近平は秋の党大会を控え、米国には毅然とした対応をしたとの形が必要で、対米宥和策を行える状況にはないように思われます。台湾のみならず、南シナ海も尖閣も核心的利益と規定するなど、外交の柔軟性を失わせる対応が習近平政権では目立ちます。対米関係をうまくマネージできるかどうか、やはり疑問です。

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