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- 2017年02月02日 19:49
大前研一「エルメスだけ、フェラガモだけの町。イタリアに学ぶ強い地方の作り方」
2/2イタリアに点在する多彩な地方都市
GDP、失業率ともに差が開く南北格差問題
図-8の左側は、イタリアの地域を特徴ごとに色分けしたものです。大まかには北部・中部・南部の3つに分かれ、北部はさらに東・西に、南部は半島南部・島嶼部に分けられます。
前述の通り北部は、ハンガリー、オーストリア、ドイツなどの影響で工業化が進みました。北西部はミラノ、トリノなど、北東部はヴェネツィアといった街が特に有名です。
そしてトスカーナ州などがある中部には、フィレンツェ、ローマのほかにも、特徴的な産業を持つ小さな地方都市が数多くあります。
対して、ナポリなどがある南部は農業、観光業、軽工業が中心ですが、北部との格差が非常に大きいという問題を抱えています。
同図の右側をご覧ください。イタリアの地域別の1人当たりGDPは、北部では4万ドルを超えており、中部でも約3万6,000ドル。ところが南部・島嶼部は2万ドルを少し超える程度です。とはいえ、農村が多いので、いわゆるスラムのようにはならないのですが、それにしてもずいぶんと差があります。
また、失業率もイタリア全体では10.7%であるのに対し、南部・島嶼部は17.2%と高くなっています。北東部は6.7%と、欧州全体と比べてもかなり低いのですが、南部ではここまで上がってしまいます。このような南北格差が、イタリアにはあるのです。
地方都市は自前の産業で自立している
地域色が強いイタリアは、各都市に細分化してもそれぞれに特色があります。図-9はイタリアの各都市の特徴を示したものです。ご覧いただくとわかりますが、自前の産業を持っている都市がたくさんあります。
ベッルーノの眼鏡、ウディネの家具、モンテベッルーナの靴…人口規模がさほど大きくない都市も多く、産業としては1つに特化しています。
サルディーニャ島は御影石の製品にコルク製品、パルマはプロシュットなどの食品、モデナには世界中のファーストカーが集まっています。
こうした町がおよそ1,500あり、その1,500それぞれが、このようなニッチ商品で世界に冠たるポジションを得ているのです。

これらの都市のすごさは、自分たちでブランドを持って売っているだけでなく、例えばエルメスのバッグの金具だけを作る、フェラガモの靴のスリングだけを作るというように、「狭くて深い」部分に従事し、高級ブランドの信頼を得ることで、それらを非常に高い価格で売っていることです。
エルメスのスカーフと聞くとフランス産だと思う方もいらっしゃるでしょうが、実はミラノから北に1時間ほど行ったイタリアのコモで作られています。
また、「どこの会社の何」ではなく、「パルマのプロシュット」といった具合に、都市全体のブランドとして世界的に認知されているものも数多くあります。
このような都市の産業の特徴として、中小零細企業が多いという点も挙げられます。イタリアでは従業員が15人を超えると税金が上がるので、15人以上の規模になる場合は誰かに独立してもらい、新たに15人未満の会社を作るというケースが多いからです。そして、それらの小さな企業が都市の中でクラスターを形成していきます。(次回へ続く)
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大前研一ビジネスジャーナル No.11(日本の地方は世界を見よ! イタリア&世界に学ぶ地方創生)
大前研一
株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長/ビジネス・ブレークスルー大学学長1943年福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号、マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、常務会メンバー、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。以後も世界の大企業、国家レベルのアドバイザーとして活躍するかたわら、グローバルな視点と大胆な発想による活発な提言を続けている。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長及びビジネス・ブレークスルー大学大学院学長(2005年4月に本邦初の遠隔教育法によるMBAプログラムとして開講)。2010年4月にはビジネス・ブレークスルー大学が開校、学長に就任。日本の将来を担う人材の育成に力を注いでいる。



