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志賀原発差し止め判決のポイント

先週、志賀原発2号機運転差し止め判決を書いた井戸裁判官との対談をしました。
準備にあたって、当然判決文は全部検討し、その他の判決も検討し、その他原発関係の専門書も、原子力推進側の専門書も含めて検討しました。

対談の責任を果たすためにかなりがんばりましたが、企画が終わるとどんどん頭から抜けていくので、せめて、井戸さんら3人の裁判官が書かれた金沢地裁平成18年3月24日付判決のポイントを、私の理解の範囲でまとめておきます。

大事なのは、判決文の60ページあたりと、170ページあたり以降です。

1.原告の権利
 差し止め請求を認める原告側の権利侵害としては、環境権は理由とならないが、人格権侵害が根拠となる(※人格権は、憲法13条に基づくものであり、民法上も定めがある)。

2 立証責任
 人格権侵害の具体的危険があること、つまり、許容限度を超える放射線を被ばくする具体的危険が相当程度あることを原告がまず立証する。
 この立証が成功した後、逆に被告北陸電力側が、具体的危険がないことを反証する。  
 (※これは、一見浜岡原発訴訟などの判決よりも原告に負担を課しているようであるが、最終的な立証責任を国側に転換した点で、この判決の結論を導く重要な柱となっている)。

3 地震が起こるなどの事態ない場合に、原発の多重防護が機能せずに過酷事故が起こる具体的危険性を原告は立証できていない(※これで判決文の3分の2は終わる)。

4 しかし、地震の検討に入り、被告側の耐震設計は、i 直下地震の想定が小規模に過ぎる、ii 考慮すべき邑知潟断層帯による地震を考慮していない、iii 原発敷地での地震動を想定する手法に妥当性がない等の問題点があるとした。そして、被告の想定を超えた地震動によって被告が構築した原発の「多重防護」が有効に機能せず、過酷事故が起こり、原告らが上記被ばくをする具体的可能性があることを原告は相当程度立証した。
 これに対し、被告北陸電力は、当時の指針に適合して建設した、ということばかりに終始し、具体的危険がないことの立証ができていない、とし、原告に軍配をあげます。

5 受忍限度の件
 そして、受忍限度を超えて違法であるかについては、本件原子炉の運転が差し止められても少なくとも短期的には被告の電力供給にとって特段の支障になるとは認め難く、他方で、被告の想定を超える地震に起因する事故によって許容限度を超える放射性物質が放出された場合、周辺住民の生命、身体、健康に与える悪影響は極めて深刻であるとし、人格権侵害の具体的危険は受忍限度を超えていると判断しました。

6 原告適格
 いったん過酷事故が生じた場合には、その影響は広範囲に及ぶと認定。チェルノブイリ事故の際でも8000キロ遠方にも放射性物質が飛散しており、また、食物の流通などで汚染が拡大する危険性がある、とし、熊本の原告についても、許容限度である年間1ミリシーベルトをはるかに超える被ばくの恐れがあるとし、全ての原告らにおいて、上記具体的危険が認められるとして原告適格を広く認めました。

 原発の危険が現実のものとなった今読めば説得的ですが、まだ事故が起こる前に、よくこれだけ踏み込んだ判決を書かれたものだと本当に感心します。

 東電福島原発の事故が現実に起こり、この判決が指摘していた点が全て現実のものとなったことに、驚きと共に、この判決を謙虚に受け止める必要があると痛感します。

 まずは、判決文を入手され、学習の素材とされると良いと思います。かなり深まります。

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