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法科大学院制度の存続は絶対か

法曹の養成に関するフォーラム第4回議事録が公開されています。
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さて、ここでの議論は相変わらず、司法修習生に対する給費制の「見直し」の問題です。

法曹養成制度全体、そして法曹、特に弁護士人口の前にこの議論をすること自体が、制度設計の議論のあり方としては誤りであり、この回でも、萩原委員は、指摘しています。

「しかし,そもそもこの貸与制を基本とした上でというのは,どういう意味なのかという疑問があります。そういう意味では,冒頭のとき,第1回目から始まっております,要するに給費制か貸与制かという議論は,この全体の議論に先立って今月末ぐらいをめどに取りまとめるという方向性は依然として変わらないのでしょうか。」

「そういう意味で言うと,恐らくこの弁護士会の御認識が今の座長のおっしゃっている事柄とやや食い違っているのではないかと感じています。最終的な弁護士会の御意見でも,全体の議論をしながら最終的な結論を出してほしいとあります。」

しかし、当の日弁連の委員からは、この点について、はっきりと指摘する発言はありません

そこを見透かして発言しているのが井上正仁委員ですが、

「例えば,今の新しい法曹養成制度を全部撤廃して元に戻す,人数も元に戻すから,給費制も元どおりだと,こういうことならまだ分からなくもないのですけれども,このフォーラムも司法制度改革審議会の意見書の趣旨を踏まえて検討を行うということになっていますので,そこまでのことをフォーラムは求められているのではないと理解していますし,弁護士会の方もそこまで恐ろしいことをお考えなのではなくて,」

と述べていますが、法科大学院制度を維持し、それを「中核」とするのであれば、制度全体の議論と言ってみたところで、給費制か貸与制の問題など何の関連性もないではないか、という趣旨のものです。

しかし、何故、法科大学院制度が「中核」になりうるのかという根本的な疑問があり、法科大学院制度ができる前までは明らかに司法修習制度が法曹養成の「中核」でした。

全体のあり方を議論するならば、法曹養成の中核を司法修習制度として、それに対する給費というのは制度設計としてあり得る選択肢であり、まさに制度全体の議論と言えるでしょう。

ところで、やはり一番の見所は、

川上昭彦日弁連オブザーバーが

「フォーラム事務局が実施した奨学金調査では,過半数の回答者が奨学金を受給していないとの結果は出ましたが,これは法科大学院の高額な学費と生活費を奨学金なしで賄える階層が新法曹の過半数に達しているということを意味します。既に経済的に貧しい階層は,法律家になれないという懸念が現実のものとなりつつあるのです。」

と発言したことに対し、井上正仁委員が

「今のお話の中で,法科大学院生に奨学金を受けていない人が相当割合いるということをもって,貧しい人,資力のない人は法科大学院に来れていない状況にあると断定されたのですけれども,そう断定される根拠は何ですか。」

「その理解している根拠は何ですかということをお尋ねしているのですが。それはその数字をそういうふうに解釈されただけのことなのか,それともほかに根拠があるのでしょうか。」

という追求し、川上昭彦日弁連オブザーバーは、一旦、確認のために持ち帰りたいという趣旨で発言すると、さららに井上正仁委員は、

「それはちょっと無責任ではないですか。今,読み上げておっしゃったのは,原稿があってそれをもとに発言されていると思うのですが,その原稿を作成されたときに,それなりの根拠をもってそのように書かれ,ここは公の場であり,日弁連を代表されてそういう発言をされたわけですから,やはりそれなりの根拠を示していただかないといけないのではないでしょうか。」

と述べています。

奨学金を受給しない学生が半数いるということをどのように評価するのかという問題です。

できれば誰もが借金など負いたくはない、しかし、現実に生活費等を捻出しなければ生活もできないし、家族がいれば家族を養わなければならない。法科大学院に入学してくる方々は、相応の年齢なのであり、本来であれば社会の中では経済的に自立しているはず、という前提があります。

奨学金を受給しないということは、他から生活費を捻出し得ているということであり、それが配偶者以外からということであれば、それは世間的には「裕福な家庭」というのです。

もとよりこれは評価の問題です。根拠というのであれば、法科大学院在学中の学生の家庭の資産調査が必要でしょう。

しかし、その点でいえば、そのような調査などないのですから、根拠資料がないという点でいえば、川上昭彦氏だけでなく、井上正仁氏も同様の「評価」の議論をしているということに過ぎません。

とはいえ、それに対して、真っ向から反論もできない川上昭彦氏、しかも、本当にそれが問題であるならば、法科大学院制度こそが法曹になる道を絶っている諸悪の根源ですから、これについて一言も言えないようでは、もともと勝てる議論ではなかったと言えます。

いずれにせよ、井上正仁氏ら法科大学院関係者は、この制度を守ることだけを自己目的化しているということです。

井上正仁委員の発言の中には、

「このフォーラムも司法制度改革審議会の意見書の趣旨を踏まえて検討を行うということになっていますので」

というように最初から法科大学院制度の存続させるか廃止するかという抜本的な議論は一切しないという前提があり、このフォーラムは法科大学院制度の問題点を洗い出す能力も意思もないことを示したものと言えます。

フォーラムの議論では、司法試験の合格率さえ上がれば、要は、法科大学院卒業者の7〜8割合格させるだけで法科大学院の志望者は増えると信じて疑わない人たちですから、法科大学院制度の危機を打開するための方策を見出すことは絶対にあり得ません。

参考
元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記 法曹養成論議の気になるシーン

ニガクリタケは偶に生えます〜クリタケとそっくりでも噛んで苦いのがニガクリタケです。すぐに吐きだして下さい。
 法曹養成フォーラム第4回議事録〜その1〜

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