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『東京ラブストーリーAfter25years』で考えた、「男女間の友情は成立するのか問題」

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「男女間の友情は成立するのか問題」

これは思春期の茶飲み話における、永遠に不滅のテーマである。この議論は特に楽しく、時に激しく面倒臭いものである。普遍的なことを論じていそうで、実は自分語りをしたいだけだったりする。客観的な話を装った主観的でしかない話になり。

この話をふっかけてくる人は、自分の打ち明け話をしたいだけだったりもする。実は同級生や同じ職場の◯◯君のことを好きかもしれないとか、友達のはずなのに行為に及んでしまい、でも交際するかどうかは決め兼ねている、みたいな話が展開される。『きまぐれオレンジ☆ロード』(まつもと泉 集英社)における「LIKE OR LOVE」という問い、それに対する「like! 限りなくloveに近い…」的な面倒臭い、甘酸っぱい話にもなる。

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たいてい、そんなものに正解は存在せず。この問いのために女子高校生は、ミスタードーナッツのおかわりし放題コーヒーを何度も飲み、女子大生はトールサイズのスターバックスラテで3時間粘り、女性社員はカシスオレンジを何度もおかわりする。そんな時に女子会プランについてくる申し訳程度のガトーショコラは、少しだけ心を癒やしてくれる。

東京ラブストーリーAfter25years (ビッグコミックススペシャル)東京ラブストーリーAfter25years (ビッグコミックススペシャル) [コミック]
柴門 ふみ
小学館
2017-01-12




この「男女間の友情は成立するのか問題」について、答ではないが、爽やかなヒントを与えてくれるのが、『東京ラブストーリーAfter25years』である。一世を風靡した『東京ラブストーリー』の続編だ。同ドラマが、月9で放送されていた頃は「月曜の夜は、街から女性が消えた」という伝説もあったそうだ。いや、漫画もベストセラーだと言っていいのだけど、どちらかというとこのように皆はドラマの方で認知していることだろう。鈴木保奈美演じる赤名リカが何度も織田裕二演じる永尾完治を「カンチ」と呼ぶ様子、さらには「ねえ、セックスしよう」というセリフも話題になった。

主題歌の小田和正による「ラブ・ストーリーは突然に」(なお、たまに東京ラブストーリーとか、東京ラブストーリーの曲と呼ぶ人がいるが、正式なタイトルはこれだ)も大ヒットし、シングルCDの売上は270万枚を突破した。やや余談だが、速水健朗氏の『タイアップの歌謡史』(洋泉社)によると、この曲はドラマでも何度も流れるテーマ曲であり、担当した小田和正には何度も制作サイドからの要望が伝えられたという。小田和正にとって初の本格タイアップであり、彼は戸惑う。同曲の「何から伝えればいいのか 分からないまま時は流れて」は当時の小田の苦悩だったのではないかという説もある。

『東京ラブストーリー』の25年後を描いたのが、『東京ラブストーリーAfter25years』である。昨年、『週刊ビッグコミックスピリッツ』に読み切り作品として掲載され、その後、『女性セブン』に連載されたものが完結し、まとめられて単行本として発売された。私はいてもたってもいられず、発売日に入手した。

もともとの『東京ラブストーリー』のキャッチコピーは「東京では誰もがラブストーリーの主人公になる」だった。もっとも、それはキラキラしてそうで、ドロドロしたものでもあり。それに対し、本作品では主要人物のほとんどが都心に住んでいない。

永尾完治と赤名リカは50歳となっている。それぞれの子供が実は交際しており、結婚すると言い出したことから二人は再会を果たす。永尾完治は紆余曲折を経て地方で民間登用の教頭先生をしている。赤名リカはやはり地方で農場を営んでいる。完治の妻、さとみ(旧姓関口 ドラマでは有森也実が演じていた)はリサイクルショップを経営している。江口洋介が演じていた三上健一は地方で医者をしている。妻尚子とは流産を機会に関係が変わり、尚子が若い医者との交際を始めたため、離婚の手続きをしている。それぞれ、試行錯誤、紆余曲折を繰り返しつつ、人生を歩んできた。登場人物の人生が、味わい深い。

あまりネタバレするとあれだが、登場人物同士での際どい展開はある。ただ、不倫や行為には至らない。読者は「濡れ場のない怒り」を感じるかもしれない。ただ、これこそが著者柴門ふみが描きたかった「恋が終わっても、人は愛によって支えられて生きている。」ということなのだろう。男女間の友情というものは、むしろ思春期ではなく、人生の折り返し地点以降に存在するのではないか、と。何かこう、高校時代、大学時代の仲間の結婚式の2次会や同窓会でかつてのカップルだった人がすれ違い、笑顔で会話するような、そんな光景と重なるものがあった。

『東京ラブストーリー』は「バブルを象徴する作品」として捉えられており、実際連載は88年から、ドラマはバブル末期の91年1月から放映されたわけだが、その後と、これからの日本における男女の生き方を考えさせられる漫画だった。切なく、そして暖かい気分になることができた。

ドラマや漫画をリアルタイムで楽しんでいた40~50代もそうだが、むしろ若い人に読んで頂きたい。いま、思わず熱く語ってしまう「男女間の友情問題」は、大きくなったらきっと解決する、と。そして、それは美しいものなのだ、と。

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