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男性保育士外しという差別

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個人として男性保育士が嫌だというのは好みの問題だから、それが内心にとどまっている限り、個人の自由だ。そこでも、男女は平等であり、保育士のプロフェッショナリズムに対する敬意はあってしかるべきだし、もしそうであれば、嫌だと思うこと自体に倫理的な葛藤を抱くのが自然だと思うが、それを他人に押し付けようとは思わない。個人的にはそういう性差別はちょっと引いてしまうが、その人が内心で、自身の好みを優先しても文句をいう筋合いはない。

何か行動に移すとしても、個人の選択の自由として社会的に許容される部分はある。保護者が自分の判断で男性保育士がいない園を選ぶのは誰も批判できまい。実際そういう人もいるだろう。だが、たとえば地元の園に男性保育士がいるからといって、行政に「男性保育士を雇うな」と要求したりすれば、これは差別をせよと公的に言っているのに等しい行為だ。そうした要望に対処している自治体も中にはあるのかもしれないが、もしあるなら重大な人権問題だ。

問題のない「シロ」と問題である「クロ」の間に、広大なグレーの領域がある。「男性保育士を着替えをさせるな」などと園に声高に要求したりするのはクロに近いグレーだろうが、事情を話してていねいに頼んでみるのであれば、よりシロに近くなるだろう。園の側も、要望があるなら、余裕のある限り対処してあげるべきだろうし実際多くの場合はしてくれるのではないか。ただそうもいかないときはあるだろうから、そういうときは彼らのプロフェッショナリズムに任せるしかない。それが嫌なら違う園を選ぶしかない。

産婦人科医については、近年、女性医師を求める声が患者側から多くあるらしい。まあ患者側の気持ちとしては自然だろうが、女性医師の人数がまだ足りないから、あるいは最初から特に気にせず、男性医師を選ぶ人もたくさんいるはずだ。程度はちがうだろうが、保育士も足りていない自治体が多い。少なくとも千葉市はそうなのだろう。つまり、保育士全体が足りない中、男性保育士は貴重な戦力なのであって、彼らをよりよく活用することは、女性の社会参加を推進する上でプラスになる面もある。

このように、グレーの領域で、それが社会的に許されるかどうかは、さまざまな要因によって変化する。いちがいにいえる話ではないはずだ。

それが「シロかクロか」になってしまうのは、「差別だ」を許せない絶対悪で、自分には縁のない行為としてとらえてしまうからだ。自分は差別なんて絶対にしない、だから自分がやっているのは差別ではなく正しい権利主張。でも相手がやってるのは差別。悪いこと。だから罵倒してもいい。裏返せば同じ問題なのに、善と悪とに切り分けてしまうわけだ。

実際にはちがう。差別はどこからがそうでどこまでがそうでないのかがはっきりしない、境界があいまいなもので、かつ、どこかにいる悪い奴がやるとは限らず、むしろ自分や身近な人たちが日常生活の中で自然に抱く感情であり、つい言ってしまったりやってしまったりすることだ。しかし私たちは通常、そうとわかっていれば、それらを全部そのまま外部に出すことをよしとしない。それはよくない、と自分自身がわかっているからだ。クロい部分は内心に封印し、グレーの部分は少し薄くしてから外に出す。

しかし、自分がまったく悪くないと思ってしまうと、そのタガがはずれる。自分のクロい部分をさらけ出して声高に主張してしまうことになる。自分たちが「正義」だと信じる人々がそれゆえに妄言や蛮行に走るさまを、私たちは今、世界中で目の当たりにしている。お坊さんなら「鬼」と呼ぶかもしれない、こうしたものこそが、私たちが最も警戒すべきことで、この議論が「鬼」に支配されるを見たくない、というのがこの文章を書いている動機だ。私たちは誰でも、差別を行ってしまう可能性がある。してしまったら、謝るなり改めるなりすればよい。そのようにゆるく考えないと、自分を守るために「鬼」が跋扈するのを許してしまうことになる。

念のため再度強調しておくが、女性の意見を踏みにじれといっているのではない。誰かを糾弾するためのものでもない。むしろその逆で、善悪二元論に陥ると、私たちは敵味方に分かれて互いに「鬼」となり、馬糞を投げ合うことになる、それはぜひやめてくれということだ。男女問わず、保育士をめぐる状況は、今のところ、決していいものとはいえない。男性保育士についても、もっと多様な意見があると思う。冷静に、敬意をもって議論することで、よりよい社会の実現をめざす。それこそが「男女共同参画社会」というものだろう。

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