- 2017年01月24日 05:00
再注目すべきポーランドの重要度 - 岡崎研究所
12月21日付のニューヨーク・タイムズ紙の社説は、ポーランドの「法と正義の党」政権は、裁判所やメディアに対する統制を強め、ポーランドを専制政治に導いていると警告しています。その要旨は以下の通りです。
ポーランドの憲法裁判所長官は、任期満了による辞任に先立ち、与党の「法と正義の党」は、裁判所やプレスその他の組織によるチェック機能を全面的に弱らせ、ポーランドを専制政治に導いていると警告した。
かつて共産主義から民主主義への移行の優等生だったポーランドは、大きく後退しようとしている。2015年の総選挙で議会の過半数を獲得した民族主義的で右翼の「法と正義の党」は、「改革」と称してメディア、検事、NGOに対する行政府の権力を強化し、憲法裁判所の独立を弱めた。何十万という国民が反対の街頭デモを行い、政治危機が訪れた。当初から、裁判所は、「法と正義の党」とその指導者カチンスキーの主たる標的だった。彼は裁判所を「ポーランドのすべての悪の砦」と呼んだ。法の支配と基本的人権に対するこのような蔑視は、ポーランド国内のみならず、欧州委員会、欧州評議会などの批判を招いた。
1980年代のポーランドの反共運動の英雄であったワレサが言うように、独裁主義はポーランドにとどまらず欧州、米国と、広く民主主義に対する重大な脅威である。いずれの場合も大衆主義の指導者たちは、彼らの主張は「国民」の意思を表すとの口実の下に、反対する個人、組織、法律を全く無視する。このような考えが20世紀の恐ろしい独裁政治を生んだのであり、今日それは他人ごとではなくなってきている。
ポーランド国内では、政権の政策に反対する大規模なデモが発生しています。また欧州委員会のTimmermans第一副委員長は、「法と正義の党」の動きは「ポーランドにおける法の支配への重大な挑戦」であると厳しく非難しています。
西側の尺度で測るのは適当ではない
確かに「法と正義の党」政権の動きは懸念されますが、ポーランドはかつて共産主義から民主主義への移行の優等生だったとはいえ、民主主義の経験はそんなに長くありません。民主主義の旗印を高く掲げるニューヨーク・タイムズ紙から見れば、ポーランド政治の危機と映るのは当然でしょうが、西側の尺度で測るのは必ずしも適当とは思われません。
ポーランドの重要性は、地政学的なものです。「法と正義の党」が従来の移民政策に批判的であることが指摘されますが、従来の移民政策に批判的なのはポーランドに限りません。また、ポーランド人自身、EUの多くの国に移住している人が多く、本気で移民政策を変更しようとするとは考えられません。
ポーランドは輸出の75%を、輸入の60%をEUに頼っていて、EUのメンバーであることはポーランドに大きな利益をもたらしています。またポーランドは歴史的にロシアに対する警戒心が強いうえに、最近のプーチンの動きに神経をとがらせています。NATOのメンバーであることはポーランドの安全保障の根幹です。一昨年7月NATOはワルシャワで開催された首脳会議で、軍事的圧力を強めるロシアに対する抑止力の強化策として、2017年よりバルト3国とポーランドに4000人規模の多国籍部隊を展開することを決定し、ポーランドはこれを歓迎しました。
ポーランドは、内政面で懸念すべき動きはあるものの、EUとNATOのメンバーであることに死活的利益を見出していることは明らかであり、ポーランド情勢はこの重要性を踏まえて判断すべきです。
出 典:New York Times ‘Poland’s Tragic Turn’ (December 21, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/12/21/opinion/polands-tragic-turn.html
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