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水野和夫 海洋国家の時代が終わる

トランポノミクスは失敗する

 トランプの経済政策は「トランポノミクス」と呼ばれ、レーガン大統領のレーガノミクスと比較されることがあります。しかし、もしレーガノミクスに実効性があれば、アメリカ経済が現在のような状況に陥ることはなかったはずです。その意味では、トランプはかつて失敗した政策を再び実行しようとしていると言えます。

 ここでは、弊誌2月号に掲載した、法政大学教授の水野和夫氏のインタビューを紹介したいと思います。全文は弊誌2月号をご覧ください。

ケイアンドケイプレス 2017-01-21

トランプとレーガンの類似性

── トランプ大統領の誕生は新時代の到来のように受け止められています。しかし、現在トランプ氏が打ち出している政策を見ると、財政出動や金融規制の緩和など、アベノミクスとそれほど変わらないという印象を受けます。

水野 そうですね。先進国ではすでに実物投資が行き渡っているため、工場やオフィスビルなどに投資しても利潤を得ることができません。民間が投資しないから、政府が代わりに財政出動するということなのでしょう。

 金融規制の緩和も決して目新しいものではありません。アメリカはベトナム戦争に負けて「地理的・物的空間(実物経済)」の拡大が困難になった際、新たに「電子・金融空間」を創出しました。「電子・金融空間」とは、ITと金融自由化が結合して作られた空間のことです。これにより、資本は瞬時に国境を越え、キャピタル・ゲインを稼ぎ出すことができるようになりました。

 また、各国の証券取引所は株式の高速取引化を進めており、1億分の1秒単位、10億分の1秒単位を競って取引ができるシステムを作り上げています。さらに技術革新が進めば、1京(1兆の1万倍)分の1秒単位の高速取引も行われるようになると思います。

 しかし、これは逆に言えば、それほど高速で取引を行わなければ、「電子・金融空間」でも利潤を上げられなくなっているということです。また、このような高速取引はバブルを発生させるだけで、雇用には全く結びつきません。

── トランプ氏はTPPを離脱して「公正な二国間協定」を進めると述べています。これもまた、かつての日米貿易摩擦時代を彷彿とさせるもので、決して新しい政策ではありません。

水野 トランプ氏は中国製品に高関税をかけると言ったり、中国の為替操作を批判したりしていますが、同じような対応を日本にも行う可能性があります。円安が行き過ぎているということで、日本に対して円買い介入するように求めてくるかもしれません。

 そういう点では、トランプ氏にはレーガン大統領に似ているところがあります。かつてレーガン大統領は「強いアメリカ」を再建するとしてレーガノミクスを打ち出しました。しかし、アメリカはその後も凋落の一途を辿り、現在に至っています。90年代になると、「強いアメリカ」どころか、米議員が日本車のボンネットをハンマーで叩くなどの事件が起きましたが、アメリカは弱くなると、「二国間」に持ち込んできます。

 もしレーガンが強いアメリカを実現していれば、トランプ氏が登場することもなかったはずです。それゆえ、トランプ氏がいかなる政策を行おうとも、それがレーガノミクスと同じ性質のものである限り、結果は目に見えています。

── トランプ氏も「歴史の危機」に対応できていないということですか。

水野 「歴史の危機」に直面し、どうすればよいかわからないため、アベノミクスと同じようにあらゆる政策を総動員しているということだと思います。政府にやれることは何でもやるつもりなのでしょう。

海の国の時代の終焉

── トランプ大統領の誕生に先立ち、イギリスもEU離脱を決定しました。これはイギリス国民でさえ予想していなかったことだと思います。

水野 イギリスのEU離脱は、海の国が陸の国を支配できなくなっていることを象徴するものです。もともと海の国は、海の上には人が住んでいないので、自由を原則としてきました。それに対して、陸の国は、陸には多くの人が住んでいますから、「これをやってはいけない」、「あれをやってはいけない」という規則を明文化することで秩序を維持してきました。

 これは海の国からすれば受け入れられないことです。そのため、彼らは陸の国の内部にまで手を突っ込み、陸の国を牽制することで自由を確保してきました。その代表がイギリスとアメリカです。

 しかし、イギリスは東欧からの移民などによって国民の職が奪われ、もはや陸の国を牽制する余裕がなくなっています。それが今回のEU離脱の一つのきっかけになっています。……

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