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「視座」を複数持つ、ということ

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キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)

 献本頂きました。ありがとうございます。

 さて、実は2月中には読了していて、本書では述べられていない「キュレーション」がいかに「マネタイズ」という点について考察してみたいと思っていたのだけれど、東日本大震災を受けて私のtwitterへの認識が変化した部分もあり、本書で書かれている部分でより有用な箇所と、ここは少し留保が必要だと思える箇所があったりするので、そのあたりを中心に再読してみた。

 本書の主旨は、オビにもあるように、一次情報を発信することそのものよりも、その情報が持つ価値を付与できる存在=「キュレーター」が重要性を増していて、これは画期的なパラダイムの変換だ、ということ。

要するに、新聞とかメディア、あるいは雑誌やCDといったパッケージによって意味付けられていたコンテンツがばらばらになって、人それぞれによって思い思いに再構成される時代になった。

そんな中、自分にとって意味のある情報を「キュレーション」するひとを見つけることが大事だし、自分も誰かにとってはそういう存在になるかもしれない。そういった空間がネット上で出来つつある(これを著者は「ビオトープと呼んでいる)。著者の主張は、2011年のネット情報社会を切り取る上で的確で、それは震災前/震災後で変化はないように思える。

 個人的に、第三章で触れられている「視座」という概念は、震災後に重要性が増したのではないか、と考える。

 本書でも語られるが、人によって世界観や価値観は違うから、必ず情報にゆらぎが生まれる。Parsleyの出す情報にはParsleyのバイアスがかかるから、決して100%客観的にはなれない。そういった前提のもと、多くの、それも出来れば良質な「視座」を見つけることが出来るひととそうではないひとには、ものごとの判断に変化が生じるのではないか。
 
 また、今回の震災では、フォロアー数の多いひとたちの「姿勢」を見る上でも、一種のリトマス試験紙になったのではないか、と思う。私がニコニコニュース記事にした福田萌女史のように、公的情報をまとめたリストを作成して(参照)読者をなるべく公的な情報にアクセス出来るようにするようなひともいれば、いたずらに不安を煽るツイートや公式リツイートを流すメディア人もいる。

 私としては、この「視座」と「姿勢」の二つのバランスで今後フォローしている人を「判断」していかなければいけないのかな、と感じていたりしている。

 そして、本書の主張で留保しないといけないのかな、と感じるのは「情報のタコツボ化」は避けられる、それは文化が多様化するから、といった箇所。

 東日本大震災では、twitterやSNSは交通情報や停電情報、道路の被害状況など、ユーザーにとって身近な情報を得るためには有用だったという。一方でニュースや事故といった、これまでマスメディアが担ってきた情報に関して、正しい情報は公的な機関が出したもので、ユーザー発の情報が大きなインパクトを残す結果とはならなかった。
 
 そればかりか、数々のデマ・パニックを誘発することになってしまったのだ。
 ちなみに前のエントリーで川崎市の福島粗大ゴミ受け入れ問題に関して、パニックを起こしている(と僕が判断した)twitterのユーザーを50人程確認してみると、フォロー数は多くて数百人程度で、ほとんどの人は20〜50人程度だった。
 
 実際、最近では多くのマスメディア・ネットメディアがtwitterとの連携機能を実装しているが、総じてフォロー数/フォロアー数とも少ない。それが刹那的なツイートにも繋がるし、コンテンツにぶら下がる、本来のtwitterのタイムラインとは別のコンテキストが出来る要因にもなっている。

 このようなひと達が、「視座」を複数持つ意味や、自身が「タコツボ」に陥っていることを自覚出来るのかどうか。正直分からないなぁ。

 まぁ、著者のことだから、「そんなのノイズだから放っておけばいいんですよ」とおっしゃると思うけれど(苦笑)。
 ただ、「一万人の馬鹿は歴史的な力である」ともいう。今回のtwitterなどでの騒動が、日本の再構築ではなく、断裂の方向に行かなければいいのだけど、と若干心配にも感じていたりするのだ。

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