- 2017年01月18日 17:35
誤報大賞「毎日新聞 憲法のある風景」
2/2■ワースト3「ダム底 高濃度セシウム」
毎日新聞が9月25日、福島周辺のダムの底にセシウムが流れ、溜まっていると報じた。以前からセシウムが溜まっていたのは事実だが、それをさもスクープのように報じた。記事の中には複数の誤報があった。10月4日、訂正記事が出たが非常に小さく、よく読まないと見逃してしまいそうなほどであった。翌2日後、詳しく訂正記事が出た。記事の中で濃縮と書かれていたが、蓄積と濃縮は全く違うものである。と楊井氏は指摘した。この記事は毎日新聞の地方部によって書かれた記事で、しっかりと上からのチェックを受けていなかった。
■ワースト2「参院選 改憲勢力 3分の2」
以前この番組でも取り上げたこの問題。今年の7月に行われた参院選で、各社メディアは、「今回の参院選の結果、「改憲勢力」が初めて衆参とも3分の2を超え、改憲発議が可能になった」と報じた。「改憲勢力」という言葉でくくっているが、改憲への立場はそれぞれ異なっていると楊井氏は指摘。
さらに、3分の2を超えたのは今回の参院選が初めてではない。3年前、2013年の参院選の結果、自民党、公明党、維新の会、みんなの党は改憲勢力と言われていて、既に参議院の3分の2に達していた。今年の参院選では、自民党、公明党、維新の党、こころの党の4党、それに無所属の数名を足して162議席を獲得した。楊井氏は「3年前もすでに達している話。だから今年が初めてではない。」と誤報を指摘した。
社民党、共産党以外、広い意味での改憲勢力といえば既に9割を越している。「調べた限り、2001年ぐらい、15年ぐらい前からずっと9割を越している。ただ、皆がバラバラで話し合いをしようとしない。常に党派争いをしている。だから、いつまで経っても何も具体化していないだけのことで、その状況は3年前でも6年前であろうが今年であろうが同じこと。状況は変わらない。だから今年の7月に3分の2獲ったとみんな大騒ぎしたけれども、何も進んでないということは、別に三年前と変わらないということ。」と楊井氏は主張した。
朝日、読売は11月に訂正を出しているが、テレビは訂正していない。「改憲勢力とは、何をもってどこを改憲勢力というのか、メディアがその都度、勝手に、ここまでが改憲勢力で、あとは保憲勢力というように、恣意的にやっているだけであって、客観的に見ればそんなに変わっていない。」と楊井氏は述べた。続けて、「なぜ、具体的に進んでいないのかと、物事の本質に立ち返らないと意味がない。今後、毎度、改憲勢力が3分の2以下と騒ぐ可能性はありうる。」と懸念を示した。
■ワースト1「毎日新聞 憲法のある風景」
毎日新聞の連載の中での誤報。以前この番組でも取り上げたこの記事は、年始に出された。「信じる私 拒まないで」というタイトルで出された記事は、イスラム教に改宗した女性二人のインタビュー記事である。イスラム教に改宗したことによって、受けた差別や辛い経験のライフストーリーを記している。この記事には、事実誤認や事実無根のものまで含まれているという。「信じる私 拒まないで」という趣旨のタイトルは、1人の女性のコメントが引用されている。しかし女性はこのコメントを言っておらず、このような主張は、思ってもいないことだという。彼女たちは、イスラム教に改宗したことにより辛い思いをしているわけではないそうだ。女性のうち1人は事前に記事を見て、“記事を出さないで”、とまで言っているのにもかかわらず、世間に記事が出てしまった。
安倍編集長は「これもねつ造ですね。」と誤報というよりはねつ造だと述べた。楊井氏も「そういう意味では、先ほどの新貧乏物語と非常に構造的に似通っている問題。何が似ているかというと、1つはまず連載記事で、社会部の目玉キャンペーンでやっているということ。それと、もう一つが、この記事を担当した記者が地方からの応援記者であるということ。先ほどの、東京新聞の新貧乏物語も実は若手の応援記者が書いている。ストーリーをきちんと作るために、色々(ストーリーを)盛ってしまっているというパターンが非常に似通っている。」とワースト4の中日新聞との類似性を指摘した。
また楊井氏は「キャンペーンの連載記事だけれども、ストーリを盛らないことを日頃からきちんと言って、無理にストーリーをでっち上げないように、そういう雰囲気を作らなくてはいけないと思うけれど、それができてなかったのでしょうね。」と社内の普段からの指導が大切であると主張した。この記事は第三者による有識者委員会で審査となったが、同会議は取材された2人の女性に取材をすることはなかった。さらに明確な訂正も出されず、日本報道検証機構の検証をベースに審査結果を出した。
■伝統メディアか新興メディアか
先日問題になった、ネットメディアのWELQ。この問題を指摘したのは、BuzzFeed というネットメディアだ。新興メディアが伝統メディアよりも先に問題を指摘していた。テレビはこうした状況にもかかわらず、ネットメディアを一括りにし、「ネットにはこういう問題がある、という論調」を展開した。楊井氏は、「ネットメディアという表現は良くないと思っていて、なぜなら、マスメディアもネット使っている。(ネットを)使っていないメディアはない。」と述べた。
さらに「伝統メディアもきちんと(新興メディア)を公平に評価しなければいけない。きちんと(WELQなどの)問題点を暴き出している新興メディアもあるということを全く言及していない。」と批判した。安倍編集長は「新聞、テレビなどの中の人たちは、あまり新興メディアを見ていない。」と述べ、「伝統メディアだろうが新興メディアだろうが、ねつ造もあるし誤報もあるということを我々は理解しなければならない。」と読み手の意識も大切だと述べた。
楊井氏は「メディアの質というのは、伝統メディアであろうが、新興メディアであろうが、公平にチェックされる時代に入りつつある。伝統メディアだから大目に見られるということもない。ネットだから許されるという話でもない。」と述べた。
■ファクトッチェク
ファクトチェックとは、事実に関する公的言説を偏りなく公平に検証し、さらに根拠を明確に示して、真偽の判定結果を発表する活動である。グーグルはファクトチェックタグを導入、Facebookもファクトチェック機能を導入している。
具体的には、誤報の疑いがある記事を、ファクトチェック団体が指摘する記事を添付して、読者に注意喚起するということをグーグルがやろうとしている。Facebookは、読者が記事を怪しいと感じたら、通報できるという機能である。
アメリカのデューク大学で、世界のファクトチェック機関を調査しているが、日本で登録されているのは、日本報道検証機構のみである。日本もファクトチェック機関がより増えることを期待したい。最後に安倍編集長は「報道の中身を絶えず自分も検証するということがすごく大事。」と締めくくった。
(この記事は、ニコ生【Japan In-depthチャンネル】2016年12月21日放送の要約です)
トップ画像:ⓒJapan In-depth 編集部
【訂正 2017年1月20日】本記事掲載時(2017年1月17日)、タイトルを誤報大賞 「安倍首相、初の真珠湾訪問」としましたが、正しくは誤報大賞 「毎日新聞 憲法のある風景」でした。誤ってワースト5を見出しに取ったもので、ワースト1の「毎日新聞 憲法のある風景」を取るべきでした。お詫びして訂正いたします。(Japan In-depth編集部)
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