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左翼も右翼も仏生まれ しぶとい欧州の左翼 その1

林信吾(作家・ジャーナリスト)

2017年の正月も明けた。

新年特集にはすでに寄稿させていただいたが、本シリーズを新たにスタートさせることができるのは、ありがたいことである。

あらためまして、本年もよろしくお願い申し上げます。

さて。

2017年は、トランプ政権の誕生をもって始まり、色々な意味で混乱が予測されるわけだが、1月8日のTBS系『サンデーモーニング』新年特番において、米大統領選挙に話が及び、姜尚中氏が、「民主党は(ヒラリー・クリントンではなく)サンダース候補を立てて大統領選挙を闘うべきだったのではないか」と発言したことが、非常に印象深かった。

世に言うトランプ旋風の陰に隠れてしまった感はあるものの、 バーニー(=バーナード)・サンダースという政治家も、民主党大統領候補の指名争いにおいて、クリントン候補と最後まで接戦を繰り広げていた。なんと言っても彼は、社会民主主義者を自認している。

初のアフリカ系大統領の次は、初の女性大統領、というのが民主党の描いた「勝利の方程式」であったことは疑う余地がないが、サンダース候補でも、米国史上初めて、左翼の大統領が登場する可能性があったわけだ。

姜氏の発言は、トランプ大統領を誕生させたのは、米国内で格差が広がり、中間層が教育も社会保障も奪われて没落して行く世相への苛立ちだったわけであるから、ウォール街(米国の金融・証券業界の象徴)との蜜月ぶりが露骨なクリントン候補よりも、分かりやすい福祉政策を唱えるサンダース候補の方が、支持を得られたかも知れない、という主旨であろう。

もちろん、トランプ大統領の誕生を予測した人はほとんどいなかったわけだから、結果論に過ぎないと言えばそれまでなのだが、総括としては傾聴に値すると思った。しかし、読者の中には、次のような疑義を呈される向きもあるかも知れない。

「民主党が左翼を担いで、トランプに勝つ可能性があったのか?」

もっともな疑問であるが、私の答えは「然り」である。オバマ政権が推進した保険制度改革(世に言うオバマケア)を左翼もどきの政策だと非難してきたトランプ支持者に対しては、左翼的政策のなにが悪い、と挑戦状を叩きつけるくらいの気概があってもよかったのではないだろうか。

まず、本シリーズの常道として、まずは用語の定義をはっきりさせ、読者の皆様にも予備知識を頭に入れていただきたい。日本では今もって左翼と共産主義者を混同している向きが多いが、これはマチガイ。いや、マチガイは言い過ぎかもしれないが、20世紀初頭に共産主義が侮りがたい勢力と認知されるようになってから、世紀末に冷戦が終結するまでの特殊事情なのである。

そもそも左翼・右翼の語源は、フランス革命期の1789年に招集された国民議会において、議長席から見て左側に、王権をアンシャン・レジーム(旧体制・時代遅れ)と見なしてその打破を目指す急進派が陣取り、右側には王党派を中心とする、当時の体制を守ろうと考える人たちが陣取ったことに由来する。

保守と右翼がしばしば混同される事情も、これでお分かりであろう。

この当時、身分制度だけではなく、経済的な格差も一掃せねば真に平等な社会は作れない、とする社会主義思想は、すでに登場していた。

カール・マルクスが『共産党宣言』を世に問うたのは、半世紀あまり後、1848年のことであるが、再度「そもそも論」から語らせていただくと、いわゆるマルクス主義とは、ドイツの無神論哲学、フランスの社会主義思想、英国の経済学を融合させて練り上げられたものだと言われる。

とどのつまり、マルクス主義は左翼の「鬼っ子」と言うべき存在だったのだが、前述のように20世紀にもっとも大きな影響をもたらした思想であったがゆえに、左翼とマルクス主義者が同一視されるまでになったと考えてよい。

フランス革命期に話を戻すと、もっとも急進的な社会主義者の一派は、敵対する王党派を地に染めよ、との意味を込めて真っ赤な旗を掲げた。左翼と言えば赤旗というイメージ、そこに由来する「アカ」という日本語の悪口も、起源はここに求められるのだ。

ご承知のようにフランス革命は、マルクス主義も含めてヨーロッパの思想界に大きな影響を与えてきた。そしてヨーロッパの左翼は、冷戦が終結し、新自由主義と排外主義が天下を取ったかに見える現在の世界においても、まだまだ命脈を保っている。なぜそうなのか、今後どうなって行くのかを考えてみたい。

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