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釜山の少女像設置、日本の厳しい世論を知らない韓国 日韓合意について改めて考える - 澤田克己

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合意は日韓双方の歩み寄り

 日韓両国の外相が2015年12月28日にソウルの韓国外務省で発表した合意内容は次のようなものである。

 すべての前提となる認識は、▽当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本政府は責任を痛感している▽安倍首相は、日本国内閣総理大臣として心からおわびと反省の気持ちを表明する——というものだ。

 さらに両国の約束として、▽韓国政府が元慰安婦を支援するための財団を設立する▽日本政府が財団に10億円を拠出する▽国連など国際社会において相互非難をしない▽合意がきちんと履行されることを前提に、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する——ことが明示された。

 日本は、慰安所の管理・運営に旧日本軍が関与していたことは認めている。そして、日韓両国間の請求権問題は1965年の国交正常化時に締結された請求権協定で法的には解決済みだが、女性の性的尊厳にかかわる慰安婦問題には「道義的責任」を免れないという立場を取ってきた。これに対して韓国側は、「日本政府や軍などの国家権力が関与した反人道的な不法行為」である慰安婦問題は協定で解決されたとはいえないと主張し、日本政府に「法的責任」を認めるよう要求してきた。

 日韓合意で「日本政府は責任を痛感している」という表現になったのは、両国が一歩ずつ歩み寄った結果だ。日本にとっては、どうしても日本の立場が弱くなる国際社会での非難合戦を止められるというメリットも大きかった。

当事者の7割が「合意に基づく事業」を受け入れ

 日韓合意に基づいて韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」は、元慰安婦の名誉と尊厳を回復し、心の傷を癒やす事業を行うとされた。具体的には、合意時点で生存していた元慰安婦46人に対して1億ウォン(約970万円)ずつ、死亡していた元慰安婦199人については遺族に2000万ウォン(約193万円)ずつの支給を進めている。

 生存者は、7割を超える34人が受け取りの意思を表明した。昨年中に30人前後への支給が終わった。今年は、遺族への支給が行われることになっている。

 合意に反対する人々は「日本の謝罪は心からのものではないし、当事者の意思を無視した」と批判している。韓国では「カネを受け取ったハルモニ(元慰安婦)はだまされたのだ」という主張まであるようだが、ここまで多くの対象者がだまされたと断じるのは無理がある。

 一方で安倍首相に対しては、合意発表時に自らの口で謝罪の言葉を公にしなかったことや、おわびの手紙を書かないのかと国会で質問された際に「毛頭考えていない」という強い表現で否定したことへの批判がある。岸田外相が読み上げた「日本国内閣総理大臣としてのおわびと反省」を首相自らがテレビカメラの前で口にしていれば、韓国世論に対してだけでなく、米国をはじめとする国際社会への力強い発信になっていただろう。手紙についても前例を踏襲するかどうかという話なので、少なくともそれほど強い表現で拒絶する必要があったかは疑問だ。橋本龍太郎氏から小泉純一郎氏までの自民党の首相4人は、アジア女性基金を通じて元慰安婦たちに「おわびの手紙」を送っている。今回も、想定されたのは同じレベルの手紙だった。

「当事者の納得する措置」を求めていた韓国

 なるべく多くの元慰安婦が存命のうちに問題解決を図りたいというのが日韓合意の出発点だったはずだ。いまや韓国では全否定の対象ではあるものの、朴大統領が「当事者の納得する措置が誠意ある措置だ」と繰り返していた時に異論をはさんだ運動団体や韓国メディアはなかった。それなのに、生存者の7割超が合意に基づく事業を受け入れたことを全く評価せず、ほとんど報道もしないというのは、どうしたことだろうか。

 こうした事実をきちんと踏まえた上で、なお残る問題点について指摘するのが筋ではないか。日韓合意に否定的な韓国の有力政治家も同じことだ。当事者の多くが受け入れたことへの評価を明確にしないまま、再協議や破棄を主張するのは無理がある。

 日韓合意は、1990年代初めに慰安婦問題が外交問題となってから初めての政府間合意だ。日本による一方的な措置だった河野談話発表やアジア女性基金が国際社会に広く知られることなく終わったのと違い、日韓合意は国際社会に広く発信され、米国や欧州諸国、国連など多くのアクターから歓迎された。それだけに両国とも現実には破棄など簡単ではないし、そんなことをしても得るものはない。破棄しようとしたり、蒸し返したりしようとすれば、かえって外交的なマイナス点を重ねるだけになりかねないだろう。

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