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「南スーダン制裁決議」に見るアメリカ外交の敗北 - 鈴木一人

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トランプの影に追われたアメリカ

 任期も残り少ないオバマ政権で、国連大使としてその手腕を期待されていたサマンサ・パワーは、かつてピュリッツァー賞を受賞した『集団人間破壊の時代:平和維持活動の現実と市民の役割』という著書もある人物である。国連や平和維持活動をより積極的に活用し、世界中で起きている紛争を止めることが何よりも彼女を突き動かす原動力となっている。もちろん、彼女はイデオロギーに凝り固まった人物ではなく、柔軟で各国の事情も考慮できる外交官ではあるが、しかし、彼女の中にある信念は純粋で、かつ強い。

 そんな中、南スーダンの状況を見て、内戦状況が悪化し、口先だけで和平を語りながら銃を手放さない政府軍、反政府派の双方に不信感を持ち、話し合いでの和平には期待しないという判断をしたのも無理からぬことである。彼女はこうした口先だけの和平を飽きるほど目にし、それがいかに空虚なものか、肌身にしみている。

 しかし、南スーダンのPKOに要員を派遣している日本(兵員350)中国(兵員340、合計357)など兵員や軍事顧問団、文民警察を派遣している安保理理事国にとってみると、脆弱ながらも和平合意があるということが、これ以上の武力対立を抑止する正統な根拠となっており、武器禁輸や制裁強化といった刺激的な措置は避けたいという意図があった。彼らにとってPKOに派遣している要員をより危険な状態にさらすことは望ましくないと考えるのも自然な成り行きであった。

 ここで注目したいのは、決議に反対する国は1つもなかった、という点である。棄権に回った中国やロシアも、南スーダンでの和平を望む姿勢は変わらず、武器の流入が望ましいことではないことは同意している。しかし、この時期に、両方の当事者を対象とした制裁を強化することは望ましくなく、もう少し時間をかけて様子を見ることを求めていた。その点で、この時期に決議を通そうとしたアメリカの議論に十分な説得力がなかったことが窺える。

 しかし、サマンサ・パワー国連大使にとって、今でなければならない理由があった。それはオバマ政権の任期がほぼ終わりに近づき、次のトランプ政権は新たな国連大使として、外交経験が全くないニッキー・ヘイリー・サウスカロライナ州知事を充てることを決めている。そうなるとパワー大使と同じ熱意と深さで南スーダンの内戦状況を理解し、紛争を止めることを期待することはできない。その意味でも、ここで決議を通さなければ、という焦りがあったのではないかと思われる。

 この見立てが正しいかどうかはサマンサ・パワーの回顧録が出るまではわからないが、2016年の大統領選の結果、安保理理事国の総意を得ることなく、無謀な決議案の提出を余儀なくされ、結果として拒否権を回避することはできても、最低限必要な9票を得ることができなかったことは、アメリカ外交の失敗と言わざるを得ないだろう。オバマ政権の、そしてサマンサ・パワー国連大使の求めた「正義」は、国際政治の現実の前に説得力を持たず、トランプ次期大統領の影に振り回され、緊密な同盟国である日本からも賛成票を得られないという一敗地に塗れる結果となったのである。

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