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「贅沢品から必需品へ」という現実味

 日弁連の機関誌「自由と正義」9月号に、11月11日に横浜で開催予定の第17回弁護士業務改革シンポジウムのご案内が掲載されています。2年に一度、弁護士業務の現状や将来をテーマに、そのあり方を考え、提言する場として開催されてきたものです。

 ただ、関係者の方には、大変申し訳ないのですが、毎回このシンポジウムの内容には、会員の中から厳しい評価も聞かれます。分科会のテーマ設定を含めて、もっと現実に即して役立つものにしてほしい、といった声です。逆にいえば、弁護士業務改革のテーマ設定はそれだけ難しいということでもあり、また、それは、そもそも弁護士のうちどういう層の人に役立つものとするか、ということで変わってくるということなのだろうと思います。

 今回は11の分科会が設定されています。主催者側が、「従来にもまして多くの会員の多様なニーズに沿ったものになっている」と自負するテーマは、

1.小規模法律事務所におけるマーケティング戦略

2.地方自治体の自立と弁護士の役割

3.事務職員の育成と弁護士業務の活性化

4.企業等不祥事における第三者委員会ガイドラインの今後の課題

5.さらなるITの活用

6.今こそ「夢」実現!

7.弁護士保険の範囲の拡大に向けて〜

8.中小企業の身近で頼れるサポーターとなるために

9.今の働き方に不安はありませんか?弁護士のワークライフバランス

10.高齢社会におけるホームロイヤーの役割

11.民事裁判の活性化。

 各テーマにサブタイトルが付いていますが、ここでは省略しました。6はメインタイトルだけでは何のことか分かりませんが、サブタイトルの「より深く、より広く若手弁護士の活躍の場はここにも」というのを見れば、なんとなく想像はつくと思います。

 この内容に興味を持たれる方もいると思いますし、主催者側が非常に力を入れているのは伝わってきます。だから、これから開催するものに水を差す意図は全くないのですが、このテーマ設定によそよそしいものを感じている会員もいるようです(「弁護士よる『二次被害』という視点」) 。

 ある弁護士のブロクでは、6は参加費5000円も徴収して、いま明るい未来の見えなくなった若手弁護士に聞かせるような話なのか、法科大学院で借金まみれにされて就職難に陥った彼らの需要に本当に合致しているのか、という疑問を呈し、日弁連が大金をかけて開催するならば次の3点の分科会を開催してほしい、と提案しています。
 
 「弁護士非行による二次被害を軽減するために〜弁護士賠償責任保険で補填されない被害者への法的援助・賠償基金の創設などによる今後の救済のあり方〜」
 「強制徴収される弁護士会費の額のあり方と使途の合理性〜外国や他士業などとの対照による〜」
 「即独・ノキ弁の業務実態〜無垢の学生がLSに多額の学費を支払うに値する現状なのか〜」(「福岡若手弁護士のblog」)

 これについても、「俺には関係ない」という弁護士もいらっしゃるかとは思いますが、これらは「改革」のより根源的な問題に立ち入らざるを得なくなるテーマであることは確かです。

 さて、この今回のシンポの案内記事のなかで、一番気になったのは、11分科会の紹介記事の前に掲載されている、シンポ運営委員会委員長が寄せた一文のなかの次のような下りです。

 「弁護士業務はどうか。競争は激化し、弁護士の平均所得も低下したという。弁護士にとって厳しい状況であるが、他面では、市民にとって、弁護士は贅沢品ではなくなってきたと言える」
 「弁護士業務も、もはや一つ二つの切り口からは捉えきれない、多様な様相を見せてきた。弁護士業務は、弁護士人口の増加を背景に、新たな段階に達しつつある。贅沢品としての弁護士から、もっと手軽に利用できる必需品としての弁護士の変貌である」

 弁護士がかつて「贅沢品」だったという言い方を、弁護士からはあまり聞いた覚えがありません。本当に弁護士は「贅沢品」だったのでしょうか。ただ、少なくとも、ここでどういう描き方をしようとしているのかは分かります。つまり、一部の人だけが、特別な感覚で利用していた存在を、市民が手軽に利用できる「必需品」のような存在に、弁護士は変わらなければいけないのだ、と。さらに、弁護士人口の増加がそれに道を開きつつあるのだ、と。

 「改革」路線のなかで、えんえんといわれてきた増員によって、「身近な司法」を目指す、それを市民が望んでいる、という弁護士会主導層の発想です。しかし、競争の激化のなかで、弁護士は市民にとっての必需品になってきたのでしょうか。弁護士業務は、その大増員に見合う「多様な様相」を見せてきたのでしょうか。そして、ここに描かれていることは、本当に市民が望んだことなのでしょうか。

 それとも「贅沢品」からの脱皮は、低額化の競争として、弁護士は腹をくくるということでしょうか。低額化の競争なき「必需品」へ、というメッセージととられた場合、それはそれで異論を生むような感じもします。

 ここに相変わらずの「改革」思想が描き込まれていることが、現状から根本的なその思想のあり方を省みない姿勢のようにとれてしまうとき、前記ブログ氏が掲げていたテーマと、このシンポジウムの間の大きな隔たりを感じてしまいます。

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